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カイゼル・ハディソン視点
悪魔の初恋(仮)
しおりを挟むカイゼル・ハディソンは、たまたま参加した舞踏会で一人のご令嬢に釘付けになっていた。
ホーリィ・ルーベル
彼女はふわふわのミルクティ色の髪を緩く巻いて、ひまわりの様な黄色いドレスに身を包んだ可愛らしいご令嬢だった。
なんだかその姿は五年ほど前に亡くなった、当時溺愛していた愛犬を彷彿とさせるようで、これこそ運命の出会いだと思ったのだ。
従者に尋ねると、彼女が未だ婚約者を持っていない伯爵令嬢だと教えられた。
何度も声をかけてみようとはしたが、どうしても体は言うことを聞かない。
昔からそうなのだ。
人と関わるのが苦手で、声をかけられてもまともな返事を返すことのできない私が、誰かに声をかけようなど到底できるわけがなかった。
「ホーリィ嬢には二つ上に姉君がいらっしゃるそうですよ」
悶々とした日々を過ごしていると、そんなことを執事が教えてくれた。
「姉?」
「なんでも社交界の毒華と称されるそれはもう恐ろしい女性だと、専らの噂です」
なんだか他人事とは思えない話にクスリと笑ってしまった。
噂は時にあてにならないものだと私は身をもって知っている。
「毒華か、仰々しい名だな。そんなご令嬢なら悪魔とも親しくしてくれるだろうか」
「珍しいですね、カイゼル様がホーリィ嬢以外に興味を示されるなんて」
「彼女の姉ならば、いろいろと相談に乗ってくれるかもしれない。それに、私と似たような境遇の人ならもしかすると友人になれるかもしれないからな」
こんな見た目と性格のせいで今まで友人なんてできたことがなかった。
もしかすると彼女となら共にその苦労を分かち合える存在になれるかもしれない。
「噂が真実だったらどうするんです?」
「その時はその時だ。ホーリィ嬢の好きなタイプでも聞き出せたら御の字だろう」
「そうですか。では、そのハンナ嬢に手紙でも出してみますか?」
「彼女はハンナ嬢というのか。そうだな、直接ここに招待しよう」
執事に紙とペンを用意させ、彼女へこの屋敷への招待状を書いた。
童心に帰ったように胸が踊る。
二十四にもなる男が情けない。
ホーリィ嬢の二つ上といったら、ハンナ嬢は今年で二十歳になる頃だろう。
結婚適齢期も後半に差し掛かる頃。
この歳まで婚約者の一人もいない私となんだか重なるようでしんみりとした気持ちになった。
女性ならば男の私よりも大変だろうな。
了承の返事が届いたの数日後のこと。
少し余裕をもって期日を設定したこともあり、それからはそわそわとして彼女が訪問してくる日を待った。
「カイゼル様、落ち着いてください。そして仕事を進めてください」
執事からそんな注意を受けたことも一度や二度ではない。
____そして待ちに待った今日
彼女は落ち着いた青いドレスで、公爵家に現れたのだった。
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