ゲート・キーパー〜秘密の実験場で俺は亜人達の教師になる事にした〜赴任先にいたのは美人教師と亜人の生徒達⁈俺はまったり学園生活を送ります

青樹春夜

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第2話 その男、会長の息子につき

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 篠宮ツカサがその学校に赴任して来たのは桜の花の季節だった。

 教師が着任するのは大抵春だからおかしくは無い。ただ、この学校は山あいのやや開けた土地にあったから、桜の花が咲くのは少し遅く、四月の終わりから五月にかけてになる。だから彼の赴任は通常のものではなかった。

 急な話であった。

 だから新人の教員が来たと聞いたサクラは上司である鴫原校長に食ってかかった。

「そんな話、聞いていません! 断固受け入れがたい!」

 校長は温厚な紳士である。イギリス風ジェントルメンだ。だから整えた口髭の端をピンと跳ね上げながら、年若く美しい教師のサクラがこえを荒げても動じない。

「ま、ね。サクラ君がそういきどおるのもよくわかりますよ。なんたって今までこの学校に赴任して来た者などからね。今更新しい教員が着任するなど、怪しさ満載。君が警戒するのも無理はありません」

 穏やかに、勤めて穏やかに校長は話を進める。

 ——どちらにせよ、我々には断る権利など無いのだ。

「校長先生、わかっているなら追い返しても良いですね?」

「サクラ君、落ち着きなさい」

「落ち着けるかー!」

 やれやれ、一体何があったのか。

 校長はちら、と新任の教師に目を向けた。

 見た目は悪くないが、ヘラヘラとした態度とニヤケ顔がかなりの減点だ。よく言えば愛想が良いが、サクラはそうは取らなかったのだろう。校長は溜息を隠す様に続けた。

「サクラ君、彼の姓は『篠宮』ですよ」

「篠宮……」

 一言呟ひとことつぶやくと、彼女も篠宮の方を振り返る。

 紳士と美女に見つめられて、篠宮は一度、顔に力を入れてキリッとした真面目な顔をする。

 しかし長くもたずに、またヘラヘラ顔に戻ってしまう。

 その間抜けづらになんの感想も抱かず、サクラは校長に向き直る。

「篠宮というと、あの大企業の?」

「ま、ね」

 そこまで言えば、彼女も分かるはずだった。それでも念を押す為に付け足してやる。

「Shinomiyaグループはこの町のスポンサーって事は知っていますよね? サクラ君」

「ええ、他にも出資した企業体はありますが、その筆頭がShinomiyaだという事は分かっています。しかし彼がその一員だと?」

「篠宮君、君は——?」

 校長がサクラの肩越しに青年に問いかける。サクラの後ろ姿に見惚れていた彼は、急に現実に引き戻され、慌てて答える。

「えっとぉ、親父が会長やってまーす」

 がたがたがたっ。

 サクラと校長が盛大にコケる。

「か、会長の息子!?」

「篠宮君、嘘はいけません。会長の御子息が四流私立大学卒でこんな僻地へきちに来るわけがない」

 校長は彼の資料をペラペラとめくりながら、結構ひどいことを言う。

 それを気にする風もなく、当の本人は頭をかきながらすまなそうに頭を下げる。

「いやぁ、なんていうか……俺、どうにも勉強が好きになれなくてですね」

「嫌いなら嫌いと言え」

 サクラは容赦ない。

「あはは……学生時代は自分でなんとか試験とか凌いで来たんですけど、グループ企業に入れって言われて、嫌だって言ったら、こうなっちゃって」

「うぬぬ、甘やかされおって」

 校長はギリギリと歯軋りをするサクラを押しとどめると、質問を重ねた。

「そうは言っても、Shinomiyaほどの企業なら、それこそ一流大でも一流企業でも、好きな様に潜り込めるでしょう?」

「あはは……俺、親父が大嫌いで、言われた事の反対ばかりする様にしちゃって」

 彼が言うには親に言われた学校に行くよりはと自分でなんとかすべり込んだ学校に進み、おまけで付いてきた様な教員免許を武器にここへたどり着いたとの事だった。

 校長は苦笑いをしながらも、大企業の親の七光を利用し切れていないこの青年をわずかばかりだが見直した。

「ま、他の御兄弟でもいれば、グループは安泰でしょうからな」

「いやぁ、俺ひとりっこなんです」

 がたがたがたっ。

 再び校長とサクラがコケた。

「まさか、お前が跡取りだなんて言わないだろうな?」

 嫌な予感を抱きつつ、サクラが聞く。

「あはは……いやだなぁ、俺はその気はないんですけどね。親父は意外とそうではないみたいで、お飾りでもいいから跡を継げって言うんですよね~」

「ですよね~じゃないッ!」

 つまりはこの町の——この学校の存続にコイツが影響するってことではないか。コイツのご機嫌次第ではこの予算が削られる事だってあり得るのだ。

「……ぐぬぬ……!」

「サクラ君の気持ちはわかるけどね、ま、我々には断る権利はないんだよ」

 サクラはキッとなって校長を睨む。

 どうせ私達には権利なんかない。

 ともかくも黙り込んだサクラを横目に見て、校長は改めて篠宮と挨拶を交わす。

「よろしくね、篠宮君」

「よろしくお願いします!」

 校長は英国紳士らしくキメた三揃えのスーツを軽くほこりを払う仕草しぐさをしながら、サクラに背を向けたまま指示した。

「それじゃ、サクラ君、あとは頼んだよ」

「こぉおちょおおおお!」





 つづく
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