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第26話 たくさんの料理
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お花見当日——。
「おっ花っ見、おっ花っ見、楽しいな♪」
せっせと荷物を運ぶ篠宮は、確実に浮かれていた。
例えば、ちょっと砕けた雰囲気で、にこやかに笑いかけてくれるサクラさんとか。
例えば、酔って(?)しなだれかかってくるレディちゃんとか。
例えば、先を争って料理を「あーん」してくれる六姉妹とか。
例えば——。
と、とめどない妄想のおかげで、いつの間にか準備は着々と進んでいた。
「おお、すっかり準備が整っているじゃないかね」
「校長先生、お花見を許可していただいて、ありがとうございます!」
篠宮は、重箱を手に現れた鴫原校長にビシッと礼をする。英国紳士風に笑いながら、校長は重箱を彼に手渡した。
「ほっほっほ、今までこんな事をしようなんて、思いもしなかったのでね。ウチのも張り切ってしまって、こんな物を持たされましたよ」
篠宮がブルーシートの上で重箱の蓋を取ると、ぱあっと光があふれた。
「こ、これは唐揚げにスコッチエッグ!なんと色鮮やかな! それに二段目には海老フライ! それにサラダまで!」
「なんだか、タブレットで調べながら作っておりましたよ。皆の口に合えばいいのですが」
「口の方を合わせますよ!」
篠宮の心底嬉しそうな笑顔に、校長も微笑む。
この若者は感情を素直に表すタイプだと見た。この笑顔だけでも、妻に土産話が出来たというものだ。
「こちらの料理はどなたが?」
校長はシートの上に並ぶ大皿を見た。煮物や春巻き、エビチリなどが盛られている。
「俺が借りてる『緑風荘』のオヤジさん夫婦が作ってくれたんです。久々の宴会料理だ、なんて言ってましたけど」
「久々の」と聞いて、校長は目を細めた。
そうか、彼らも喜んで作ってくれたのだな。
篠宮は知らない。
この町の人々が、密かにこの学校の生徒を気にかけていることを。
「待たせたな」
「あっ、サクラさん♪」
「すごいな、こんなにたくさん。飲み物まで任せてしまったな」
「たくさんありますよー! スーパーの店員さんがおまけしてくれたんです」
「どうやって運んだのだ?」
「『緑風荘』のオヤジさんが車を出してくれたんです。サクラさん、頼んでいた物は?」
「紙皿と紙コップ、それから割り箸で良いのか?」
「助かりまぁす!」
そこへ徳田六姉妹もやって来た。みんな手には白い紙箱を持っている。一花が篠宮にそれを渡す。
「私たちはお菓子を作って来ました。クッキーとか、スコーンとか、パウンドケーキですけど」
「うわぁ、嬉しいな! ありがとう。好きなとこに座ってよ」
不意に大勢の足音が聞こえて来た。篠宮が振り返ると、旧校舎からβクラスの面々が出て来たところだった。
つづく
「おっ花っ見、おっ花っ見、楽しいな♪」
せっせと荷物を運ぶ篠宮は、確実に浮かれていた。
例えば、ちょっと砕けた雰囲気で、にこやかに笑いかけてくれるサクラさんとか。
例えば、酔って(?)しなだれかかってくるレディちゃんとか。
例えば、先を争って料理を「あーん」してくれる六姉妹とか。
例えば——。
と、とめどない妄想のおかげで、いつの間にか準備は着々と進んでいた。
「おお、すっかり準備が整っているじゃないかね」
「校長先生、お花見を許可していただいて、ありがとうございます!」
篠宮は、重箱を手に現れた鴫原校長にビシッと礼をする。英国紳士風に笑いながら、校長は重箱を彼に手渡した。
「ほっほっほ、今までこんな事をしようなんて、思いもしなかったのでね。ウチのも張り切ってしまって、こんな物を持たされましたよ」
篠宮がブルーシートの上で重箱の蓋を取ると、ぱあっと光があふれた。
「こ、これは唐揚げにスコッチエッグ!なんと色鮮やかな! それに二段目には海老フライ! それにサラダまで!」
「なんだか、タブレットで調べながら作っておりましたよ。皆の口に合えばいいのですが」
「口の方を合わせますよ!」
篠宮の心底嬉しそうな笑顔に、校長も微笑む。
この若者は感情を素直に表すタイプだと見た。この笑顔だけでも、妻に土産話が出来たというものだ。
「こちらの料理はどなたが?」
校長はシートの上に並ぶ大皿を見た。煮物や春巻き、エビチリなどが盛られている。
「俺が借りてる『緑風荘』のオヤジさん夫婦が作ってくれたんです。久々の宴会料理だ、なんて言ってましたけど」
「久々の」と聞いて、校長は目を細めた。
そうか、彼らも喜んで作ってくれたのだな。
篠宮は知らない。
この町の人々が、密かにこの学校の生徒を気にかけていることを。
「待たせたな」
「あっ、サクラさん♪」
「すごいな、こんなにたくさん。飲み物まで任せてしまったな」
「たくさんありますよー! スーパーの店員さんがおまけしてくれたんです」
「どうやって運んだのだ?」
「『緑風荘』のオヤジさんが車を出してくれたんです。サクラさん、頼んでいた物は?」
「紙皿と紙コップ、それから割り箸で良いのか?」
「助かりまぁす!」
そこへ徳田六姉妹もやって来た。みんな手には白い紙箱を持っている。一花が篠宮にそれを渡す。
「私たちはお菓子を作って来ました。クッキーとか、スコーンとか、パウンドケーキですけど」
「うわぁ、嬉しいな! ありがとう。好きなとこに座ってよ」
不意に大勢の足音が聞こえて来た。篠宮が振り返ると、旧校舎からβクラスの面々が出て来たところだった。
つづく
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