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第29話 どこかで出会ってる
しおりを挟むその時のお礼を言いつつ、六花は自分達がお互い名前を知らない事に気がついた。
「わ、私、二年生の徳田六花。姉妹の中では一番末っ子なの」
「僕は二年の悠仁。ユニって呼ばれてる」
「ユニ?」
「一本角だからさ」
六花は微笑んだ。
「ユニコーンなのね。あ、私達の区別ってつくかな?」
「うん、なんか六花ちゃんだけわかる」
なんでわかるのだろう?
六花は首を傾げた。
「なんか一人だけ雰囲気が違う気がする」
「そ、そうかな? ——あ、でもユニ君にわかるように、私のカチューシャの色を白にする!」
ユニは目を丸くする。
ユニの角の色も白だった。
「いつもお揃いなんじゃないの?」
しかし六花は元気よく宣言する。
「ううん、いいの。ユニ君に間違えて欲しくない……から」
途中で気恥ずかしくなった六花は小声になる。そんな六花を見て、ユニは明るく笑った。
片手にお茶のペットボトルを持ちながら、篠宮は初めて顔を見るβクラスの生徒の前に来た。
「やあ」
篠宮の正面に、黒髪の男子、小柄な双子、そして銀髪の男子がいた。この四人は初顔だ。
「今度赴任してきた篠宮です。よろしくね」
主に双子の片割れの女子の方に声をかける。男子はオマケだ。
ところが返事をしてきたのは黒髪の男子生徒だった。呆れたように、篠宮にこう言った。
「何言ってんだよ。一度顔を合わせてるじゃねえか」
「ええっ? どこで?」
篠宮はここに来てまだ数日しか経っていないし、旧校舎に入ったのも二度しかない。
黒髪の男子生徒は自分を親指で指して言った。
「俺だよ、俺」
その手が見る間に獣の手に変わる。黒い獣の手だ。
「あっ! あの狼君?」
すうっと手を元の人間の手に戻すと、彼はニィッと笑った。
「ドイツ生まれのウォルフだ。そっちの銀髪が白狼のシュトルム。俺の兄貴な」
篠宮がそちらを見ると、銀髪に白皙の頬、青い瞳の生徒が目で挨拶してきた。こちらは弟ほど人懐こくないようだ。
「そういや兄弟喧嘩してたって言ってた……。あれ? 君たちは人間の姿になれるの?」
「デフォルトは狼だ。αのお嬢さん達がビビるからこの格好をさせられてる」
確かにこの姿なら怖くない。見た目も整った凛々しい顔だ。篠宮的には狼の姿の方が、女子の気を引かなくて良いと思うが。
「それじゃ、君らは?」
篠宮は狼兄弟に挟まれて座る双子に声をかけた。
つづく
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