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第50話 最低な彼の最高の反抗
しおりを挟む「イタタ……。あ、このアイスコーヒー美味しいね」
ボロボロになりながらも、篠宮は一花の持って来たアイスコーヒーを堪能していた。
「先生、痛くないの?」
「痛いけど、サクラさんの手に触わられたと思えば——いや、すみませんっ、もう言いません!」
サクラが再びグーパンチの体勢を取ったので、篠宮は慌ててそれ以上の軽口をやめた。
サクラは目を閉じて、冷たいアイスティーを飲んだ。ベルガモットの香りが心地良い。一息ついて、彼女は篠宮に言った。
「花火がしたければ、お前が全て用意しろ」
もう、丸投げである。
「いやいや、俺そんなお金ないですよ!」
「『親父』さんがいるだろう」
サクラは篠宮が父親の威光でなんでも出来るのではないかとさえ思っている。
しかし篠宮はこれにだけは反発した。
「それだけは絶っっっ対に嫌です!」
思いの外、強い否定をされたので、サクラは驚いた。側にいた一花に至っては目を丸くして、胸元のタブレットをギュッと抱きしめた。
篠宮はヘナチョコだが、それでも矜恃がある。父親の影響から逃れるべくもがいている彼は、父親に頼らないように生きていこうと決めたのである。
ただしそれを確固たる思いにしたのは、ごく最近である事を付け足しておこう。
しかも結局父親の手のひらの上にいる事も付記される。
だがそれは彼の世間知らずな甘さから囚われているのであって、彼自身の意思は、父親に甘える事など論外であると決めている。
「……嫌なら別に構わない。夏祭りも無しだ」
サクラはそう言って席を立った。
「待って下さい! 夏祭りはやりたいです!」
篠宮は必死でサクラを引き止める。
夏祭りをすれば浴衣姿のサクラや徳田姉妹が見れる。いつも裸身を晒すレディもシックな浴衣を着て、白井ユキはいつも通りか——。
「何を考えている!?」
「篠宮先生、思考がダダ漏れです!」
「えっ? マジで?」
どうやら妄想が口をついて出たらしい。
篠宮は顔を真っ赤にして怒る二人に平謝りすると、急に真面目な顔になった。
「サクラさん、例のなんでも揃える購買部を紹介してください」
つづく
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