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第5話 弱っているオレ様元彼と遭遇してしまいました
しおりを挟む再び金曜日。
夢乃が鷹田との別れを決意してから約一週間が過ぎた。夢乃はできるだけ鷹田と同じフロアにいないように社内のあちこちを移動して仕事をしていた。雑用があれば引き受けて机に居ないようにし、そしてできるだけ一人にならないように注意していた。
たまに遠巻きに噂している女子社員を見かけたが、気にしないよう自分に言い聞かせる。
——だって鷹田さんはモテるからすぐに彼女ができるよね。きっと他にも私みたいな子がいるに違いないよね。
きっと自分が気が付かなかっただけで、日替わりで彼女がいたのかもしれない。
みんながよく使うエレベーターに乗ると鷹田とはちあわせしそうだから、あれ以来夢乃は階段を利用していた。案外誰にも会わないものだ。運動にもなるし。
——明日は休みだし、何しようかな?
足取りも軽く階段を駆け降りていくと、踊り場に誰か倒れていた。
「大変!」
駆け寄って肩を叩く。
「もしもし、大丈夫ですか?」
応急救護で習った通りに声かけすると、相手は「うう……」と声を出した。
——良かった生きてる。
「……夢……乃……?」
「鷹田さん!?」
倒れていたのは鷹田である。いつもビシッと決めているスーツはヨレヨレで、キチンと整えている髪型もぐしゃぐしゃだ。なんなら顎髭も少し伸びている。
何より——。
——別人みたい!
やつれていつもの地震に満ち溢れたオーラがない。
「こんなとこで何してるんですか!?」
「……うる、さい……」
「きゅ、救急車呼びますから!」
夢乃が慌てた声を上げると、急に鷹田はその手をつかんだ。弱々しいが突然のことに夢乃はかたまる。
「……呼ばなくて、いい……」
「だって、そんな倒れてて!」
「……腹減った、だけだから……」
「は?」
夢乃は鷹田がここまで弱っていることを知らなかった。なので驚きながらも空腹で倒れるなんて、と呆れる。
「もう、ほらつかまって!」
「……?」
「送って行きますから」
夢乃の言葉に鷹田は目を見開いて驚く。今まで無視されていただけに彼女の優しさが身に染みる。
——ああ、俺はなんてことをしてしまったんだ。
それでも素直に謝る気力がわかず、鷹田は無言のままタクシーに押し込まれる。夢乃が行き先を告げると、タクシーは夜の街に滑り出して行った。
つづく
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