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第6話 なんで私がお世話することになるんです
しおりを挟むある意味勝手知ったる鷹田のマンション。夢乃は彼に肩を貸しながら——ほぼ支えながら——彼の部屋にたどり着いた。
「鍵は?」
夢乃が聞くと鷹田は素直に鍵を出す。開けて中に入ればどこか懐かしい。たった二週間来てないだけなのに。
——でも、なんか変。
物が散らかっていて雑然としている。リビングに入るともっとひどかった。
いろんなものを投げ散らかしたのか片付けする暇がないのか、どことなく殺伐としていた。
「どうしたんですかこれ?」
「……なんでもない……」
弱々しく答えて服が散らかったままのソファに倒れ込む鷹田を見て、
「そういえばお腹減ってるんだっけ」
と夢乃は荷物を置いてキッチンへ向かう。
逆にキッチンは何もなくて綺麗だった。
——ぜんぜん料理してないみたい。
コンロもシンクも汚れひとつない。
さらに手を洗って冷蔵庫をのぞくと、こちらも何も無い。
冷凍庫にはかろうじて夢乃が付き合ってた頃に入れといた冷凍ご飯がある。
——確か胡麻とか、おうどんスープの素とかあったはず。
雑炊ならできそう、と夢乃は支度する。
ご飯を解凍して、その間にスープを作って塩で味を整える。解凍ご飯を入れて少しの間煮込んで胡麻を散らす。
器に盛って運んでいくと、ソファに横になっていた鷹田がゆっくりと起き上がった。
——どうしたのかしら、こんなにやつれて。
明るい部屋の中で見れば、鷹田の憔悴ぶりに改めて気がつく。だいぶ痩せたみたいだし、目の下にも黒い隈ができていた。
——きっと仕事が忙しいのね。
ローテーブルに雑炊を置くと、夢乃は鷹田がよれよれのジャケットを脱ぐのを手伝った。
「食べられそうですか?」
「ん……夢乃の作ったものなら……」
そう言って鷹田はスプーンを手に取って雑炊を口に運びはじめた。
黒井がいたら驚いただろう。何も食べたくないし食べられなかった鷹田が夢乃の手料理なら口にするのだから。
鷹田が雑炊を半分ほど食べたのを見て夢乃は立ち上がる。
「じゃあ、私帰りますね」
夢乃がそう言うと鷹田は慌てて引き止めた。
「ま、待て。まだ居てくれ」
「なんでですか? もう大丈夫でしょ」
「その、実は……あれから食べてないし……夜もろくに眠れないんだ……」
「それ、私のせい?」
「う……そう、じゃない、かもしれないけど……夢乃の作ったものは食べれたし……お前がいれば眠れる、気がする……」
会社では自信たっぷりの鷹田が口ごもるのを見て、不覚にも夢乃はちょっとかわいいと思ってしまった。
つづく
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