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第三十二話:正体
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「え? あぁ、言ってなかったっけ。ディーネは……」
アレンが何かを言いかけた時、穴の奥から大地を震わせるほどの何者かの咆哮が響きわたった。
思わずエリーは両手で耳を塞ぐ。
「今のはもしかして……」
「あぁ、サラマンダーだな。もう近いぞ、気を引き締めろ」
エリーは息を飲み、黙って頷く。横穴を進んでいくと数分程で小さな村がすっぽり収まるほどの広い空間にでた。
そしてエリー達の目前には全身を真っ赤に染めた巨大な龍が聳え立っていた。
「久しぶりだな、サラマンダー。また会えて嬉しいよ」
アレンはまるで友達に挨拶するような軽いノリで声をかけた。
「何が久しぶりだ。たったの三、四年ほどだろう。で、今回は何のようだ」
とても低く全身を震わせるほどの声だ。もしもエリー一人だったらまとも話すことすら叶わなかっただろう。
「そりゃ精霊のあんたらにとっては三、四年はたっただろうけどさ。今回はちょっと頼みがあってきた」
「ほう、頼みとは。言ってみろ」
頼みと聞き、サラマンダーはにやりと口元を緩める。
「一枚でいいからあんたの鱗を譲って貰いたい」
「断る!」
アレンの頼みに悩む素振りも見せずに即答した。
「俺がお前の頼みを聞く訳がないだろう。それより今日、ディーネは来てないのか」
ディーネなら横にいたはずとエリーは辺りを見渡すが姿が見えない。
「お前に会いたくないんだろうな……」
憐れむような目でサラマンダーを見る。
「ふざけるな! ディーネが頼むなら可能性はあるぞ。さっさと呼べ」
はいはいと言いながら、アレンは「ディーネ」と名前を呼ぶ。するとアレンの目の前に青く光り輝く人の形が現われ、やがて光が収まるとそこにディーネが立っていた。
「え?」
突然の出来事にエリーは言葉を失う。
「ディーネ、いくらあいつに会いたくないからって勝手にいなくなるなよ」
「ごめんなさーい」
気持ちのこもっていない軽い謝罪をしながらディーネは頭を下げた。
ディーネの姿を見るなり、サラマンダーは盛りの付いた犬のように鼻息を荒くしながら、長い首を伸ばしてディーネに近づいてきた。その鼻息でディーネの長い髪が舞うほどだ。
「ちょっとサラマンダー! そんな姿じゃまともに話せないわよ!」
ディーネが一括すると、すまんと言いながらサラマンダーは離れ、それと同時に先ほどのディーネと同じく赤い光に包まれ、どんどんと小さくなっていく。
「これでいいか」
そこに現れたのは、百八十センチ程の長身で燃えるような真っ赤な髪をした三十~四十歳ほどに見える男性が立っていた。
「そうね。これでやっと話ができそうだわ」
エリーは目を丸くした。目の前にいた巨大な龍が突然人に変わったのだ。それにディーネも突然いなくなったと思ったら、アレンが呼ぶと光と共に現れた。
「ちょっとアレン。どうなっているのよ」
「どうなっているって……四大精霊ともなれば姿形を変えることなんて容易だよ。っていうかディーネを見ていたら分かるだろ?」
当たり前のように語るアレンだが、それを聞いたエリーは戸惑う。
「ディーネを見ていたらって?」
「アレン、エリーさんにはまだ話していないですよ」
「そうだったっけ? ディーネは四大精霊ウンディーネだよ」
「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!?」
思わずエリーはディーネと顔を合わせる。ディーネはテヘッっと照れた顔を見せる。エリーは混乱した。ディーネが四大精霊? 確かにディーネの強さは常軌を逸していた。それが四大精霊の力となれば納得だ。魔王ならともかく魔人如きが敵うわけもない。
それよりももし本当だとしたら何故そのような高位の存在が田舎町の雑貨屋の店員などしているのか、何故人間の下で行動を共にしているのか。様々な疑問が頭を巡る。
しかしその疑問を解決する暇もなく、人の形をしたサラマンダーが話し始めた。
アレンが何かを言いかけた時、穴の奥から大地を震わせるほどの何者かの咆哮が響きわたった。
思わずエリーは両手で耳を塞ぐ。
「今のはもしかして……」
「あぁ、サラマンダーだな。もう近いぞ、気を引き締めろ」
エリーは息を飲み、黙って頷く。横穴を進んでいくと数分程で小さな村がすっぽり収まるほどの広い空間にでた。
そしてエリー達の目前には全身を真っ赤に染めた巨大な龍が聳え立っていた。
「久しぶりだな、サラマンダー。また会えて嬉しいよ」
アレンはまるで友達に挨拶するような軽いノリで声をかけた。
「何が久しぶりだ。たったの三、四年ほどだろう。で、今回は何のようだ」
とても低く全身を震わせるほどの声だ。もしもエリー一人だったらまとも話すことすら叶わなかっただろう。
「そりゃ精霊のあんたらにとっては三、四年はたっただろうけどさ。今回はちょっと頼みがあってきた」
「ほう、頼みとは。言ってみろ」
頼みと聞き、サラマンダーはにやりと口元を緩める。
「一枚でいいからあんたの鱗を譲って貰いたい」
「断る!」
アレンの頼みに悩む素振りも見せずに即答した。
「俺がお前の頼みを聞く訳がないだろう。それより今日、ディーネは来てないのか」
ディーネなら横にいたはずとエリーは辺りを見渡すが姿が見えない。
「お前に会いたくないんだろうな……」
憐れむような目でサラマンダーを見る。
「ふざけるな! ディーネが頼むなら可能性はあるぞ。さっさと呼べ」
はいはいと言いながら、アレンは「ディーネ」と名前を呼ぶ。するとアレンの目の前に青く光り輝く人の形が現われ、やがて光が収まるとそこにディーネが立っていた。
「え?」
突然の出来事にエリーは言葉を失う。
「ディーネ、いくらあいつに会いたくないからって勝手にいなくなるなよ」
「ごめんなさーい」
気持ちのこもっていない軽い謝罪をしながらディーネは頭を下げた。
ディーネの姿を見るなり、サラマンダーは盛りの付いた犬のように鼻息を荒くしながら、長い首を伸ばしてディーネに近づいてきた。その鼻息でディーネの長い髪が舞うほどだ。
「ちょっとサラマンダー! そんな姿じゃまともに話せないわよ!」
ディーネが一括すると、すまんと言いながらサラマンダーは離れ、それと同時に先ほどのディーネと同じく赤い光に包まれ、どんどんと小さくなっていく。
「これでいいか」
そこに現れたのは、百八十センチ程の長身で燃えるような真っ赤な髪をした三十~四十歳ほどに見える男性が立っていた。
「そうね。これでやっと話ができそうだわ」
エリーは目を丸くした。目の前にいた巨大な龍が突然人に変わったのだ。それにディーネも突然いなくなったと思ったら、アレンが呼ぶと光と共に現れた。
「ちょっとアレン。どうなっているのよ」
「どうなっているって……四大精霊ともなれば姿形を変えることなんて容易だよ。っていうかディーネを見ていたら分かるだろ?」
当たり前のように語るアレンだが、それを聞いたエリーは戸惑う。
「ディーネを見ていたらって?」
「アレン、エリーさんにはまだ話していないですよ」
「そうだったっけ? ディーネは四大精霊ウンディーネだよ」
「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!?」
思わずエリーはディーネと顔を合わせる。ディーネはテヘッっと照れた顔を見せる。エリーは混乱した。ディーネが四大精霊? 確かにディーネの強さは常軌を逸していた。それが四大精霊の力となれば納得だ。魔王ならともかく魔人如きが敵うわけもない。
それよりももし本当だとしたら何故そのような高位の存在が田舎町の雑貨屋の店員などしているのか、何故人間の下で行動を共にしているのか。様々な疑問が頭を巡る。
しかしその疑問を解決する暇もなく、人の形をしたサラマンダーが話し始めた。
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