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58『ジーナの庭・3』
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真夏ダイアリー
58『ジーナの庭・3』
姿が見えるやいなや、わたしはジーナさんの胸に飛び込んだ。
「わたし、とんでもないことしちゃった!……ジェシカを原爆ごとテレポさせてしまった。なんの関係もないジェシカを!」
ジーナさんは、わたしをしっかり抱きしめて、しばらくじっとしていた。頬に暖かいものを感じた。ジーナさんが泣いている……ジーナさんも泣いている。
「ごめんなさいね、辛い選択をさせて……」
「どうにかならないんですか……!?」
「テレポした直後、真夏がテレポさせたネバダ砂漠に着く前に、時空の狭間で原子爆弾が爆発した……ジェシカは、時空の狭間で蒸発してしまったわ」
「……そんな」
そのとき、庭の向こうから、省吾がヨボヨボのおじいさんを車椅子に乗せてやってきた。
「省吾……あんた!」
わたしは省吾につかみかかり、庭を転げ回った。
「すまん、すまん、こ、この通りだ!」
省吾は、地面に頭をすりつけるようにして謝った。
「ばか、ばか、ばか……!」
わたしは、泣きながら、省吾の背中を叩いた。
「その人は、省吾のお父さん。省吾は、その車椅子の方よ」
「え………」
車椅子には、ドンヨリと虚ろに濁った目をした百歳ぐらいの老人が虚脱して収まっていた……。
「これが……省吾……?」
「無理なタイムリープを重ねたんで、老化が止まらないの。影響を受けて、お父さんまで老け込んでしまって……」
「すまん、真夏さん。この通りだ……省吾は、あと二十分もすれば死んでしまう。どうか勘弁してやってくれ」
「死ぬんですか……」
「限界を超えたタイムリープ。そして……持ってはいけない憎しみを抱いことで、症状が加速してしまったの」
わたしは、ダグラスの中で正体を明かしたときの省吾の驚きと憎しみを思い出した。空港にテレポしたあとは、トニーの良心と省吾の憎しみがせめぎ合っていた。
あれでこんなことに……。
「わたし、もう一度ダグラスの中に戻ります。レーザーで鎖を焼き切って、省吾がショックを受けているすきに、省吾とトニーを分離させ、それぞれテレポさせます」
「たった、三秒よ。三秒のうちに二人を分離させ、原爆と省吾とトニーを別々にテレポ……無理よ」
「でも、それしか無いから……!」
「真夏さん、もういい。失敗すれば、君も死ぬし……君の大事な人にも影響が出るんだ……このわたしのように」
一瞬、お母さんの顔が浮かんだ。
「……大丈夫。このラピスラズリのサイコロがあります」
「それは……」
ジーナさんとお父さんの声が同時にした。その瞬間、わたしの手を離れたサイコロは空中で回転し、閃光を放った!
シュビーーーーーーーーーーーーン!
気づくと、ダグラスの中だった。
窓の下には粉雪のように音もなくビラが地上に舞い落ちている。
「同じ内容をラジオの電波でも流している。できるだけ、人の命は損なわないようにしている」
「爆弾はダミー……本体は、そのトランクの中でしょう?」
機体が一瞬揺れた。トニーにはショックであった。
「ミリー、どうして、そんなことを……」
「わたしは真夏。IDリングはミリーの頭に付けてきたわ」
「真夏……!」
「さあ、そろそろ、戻りましょうか。後ろにグラマンが貼り付いているわ」
わたしは、ラピスラズリのサイコロを投げた。
一の面からレーザーが出て鎖を焼き切り、くるくる回る六面体には、驚くトニーの顔――分離!――そう念じると、他の面に省吾の顔、原爆のトランク、わたしの顔が次々に写った。わたしは、その一つ一つにテレポの行き先を念じた。
そして、勢いで、最後の一面が見えた。なぜだかジェシカの顔が写った。
しまった!
そう思った瞬間、わたしは再びジーナの庭に戻る自分を感じた……。
58『ジーナの庭・3』
姿が見えるやいなや、わたしはジーナさんの胸に飛び込んだ。
「わたし、とんでもないことしちゃった!……ジェシカを原爆ごとテレポさせてしまった。なんの関係もないジェシカを!」
ジーナさんは、わたしをしっかり抱きしめて、しばらくじっとしていた。頬に暖かいものを感じた。ジーナさんが泣いている……ジーナさんも泣いている。
「ごめんなさいね、辛い選択をさせて……」
「どうにかならないんですか……!?」
「テレポした直後、真夏がテレポさせたネバダ砂漠に着く前に、時空の狭間で原子爆弾が爆発した……ジェシカは、時空の狭間で蒸発してしまったわ」
「……そんな」
そのとき、庭の向こうから、省吾がヨボヨボのおじいさんを車椅子に乗せてやってきた。
「省吾……あんた!」
わたしは省吾につかみかかり、庭を転げ回った。
「すまん、すまん、こ、この通りだ!」
省吾は、地面に頭をすりつけるようにして謝った。
「ばか、ばか、ばか……!」
わたしは、泣きながら、省吾の背中を叩いた。
「その人は、省吾のお父さん。省吾は、その車椅子の方よ」
「え………」
車椅子には、ドンヨリと虚ろに濁った目をした百歳ぐらいの老人が虚脱して収まっていた……。
「これが……省吾……?」
「無理なタイムリープを重ねたんで、老化が止まらないの。影響を受けて、お父さんまで老け込んでしまって……」
「すまん、真夏さん。この通りだ……省吾は、あと二十分もすれば死んでしまう。どうか勘弁してやってくれ」
「死ぬんですか……」
「限界を超えたタイムリープ。そして……持ってはいけない憎しみを抱いことで、症状が加速してしまったの」
わたしは、ダグラスの中で正体を明かしたときの省吾の驚きと憎しみを思い出した。空港にテレポしたあとは、トニーの良心と省吾の憎しみがせめぎ合っていた。
あれでこんなことに……。
「わたし、もう一度ダグラスの中に戻ります。レーザーで鎖を焼き切って、省吾がショックを受けているすきに、省吾とトニーを分離させ、それぞれテレポさせます」
「たった、三秒よ。三秒のうちに二人を分離させ、原爆と省吾とトニーを別々にテレポ……無理よ」
「でも、それしか無いから……!」
「真夏さん、もういい。失敗すれば、君も死ぬし……君の大事な人にも影響が出るんだ……このわたしのように」
一瞬、お母さんの顔が浮かんだ。
「……大丈夫。このラピスラズリのサイコロがあります」
「それは……」
ジーナさんとお父さんの声が同時にした。その瞬間、わたしの手を離れたサイコロは空中で回転し、閃光を放った!
シュビーーーーーーーーーーーーン!
気づくと、ダグラスの中だった。
窓の下には粉雪のように音もなくビラが地上に舞い落ちている。
「同じ内容をラジオの電波でも流している。できるだけ、人の命は損なわないようにしている」
「爆弾はダミー……本体は、そのトランクの中でしょう?」
機体が一瞬揺れた。トニーにはショックであった。
「ミリー、どうして、そんなことを……」
「わたしは真夏。IDリングはミリーの頭に付けてきたわ」
「真夏……!」
「さあ、そろそろ、戻りましょうか。後ろにグラマンが貼り付いているわ」
わたしは、ラピスラズリのサイコロを投げた。
一の面からレーザーが出て鎖を焼き切り、くるくる回る六面体には、驚くトニーの顔――分離!――そう念じると、他の面に省吾の顔、原爆のトランク、わたしの顔が次々に写った。わたしは、その一つ一つにテレポの行き先を念じた。
そして、勢いで、最後の一面が見えた。なぜだかジェシカの顔が写った。
しまった!
そう思った瞬間、わたしは再びジーナの庭に戻る自分を感じた……。
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