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127『火星の春もたけなわ』
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銀河太平記
127『火星の春もたけなわ』ミク
え……え……心子内親王殿下!?
胡蝶さんの目配せで現れたのは、西之島から本土にお移りになったとも、地球そのものから脱出を図られる途中でシャトルが爆発して亡くなられたとも噂されている、日本国の皇嗣殿下!
映像やホログラムでしか見たことはないんだけど、どこか今上陛下と同じ気品を感じさせる。
今上陛下とは、修学旅行でお目にかかっているので、印象に間違いはない。
「みな、騒がぬように」
いつの間にか真後ろにまわった胡蝶さんが静かに、でも、キッパリと注意する。
「お察しの通り、心子内親王殿下であられる。必要以上に緊張することは無いけど、あまり騒がないようにね」
上様がご注意になるのは、テルが子どもみたいにピョンピョンしだしたからだろう。頭脳は大人以上なのに感情表現は見かけのまま。
「心子です。意外で複雑な事情でお世話になることになりました、よろしくお願いいたします」
「「「「は、はい!」」」」
「あ、畏まらないでください(^_^;)。こちらでは、将軍の個人的な居候なんですから」
「一応、外部には秘密ということでいくつもりだから、承知しておいてくれたまえ」
「「「「はい」」」」
「人前で『内親王さま』とか『殿下』と呼ぶのは禁止だからね」
「では、なんとお呼びしたらいいんでしょう?」
「心子は呼びにくいでしょうから、ココ……ではどうでしょうか?」
「そんな、呼び捨てなんて!」
思わず首をプルプル振ってしまう。
「じゃ、ココちゃん。西ノ島じゃ、そう呼ばれてましたから」
うう…………(;'∀')
「はい、みなさん、ごいっしょに(^▽^)」
コ、コ……ココさん(≧0≦)!
「アハハ……まあ……そういうことでよろしくお願いいたします。みなさんのお名前も伺っていいですか?」
「はい、緒方未来。幕府大学医学部二回生です……ほら、つぎ!」
「穴山 彦。幕府大学国際政治学科二回生です。お見知りおきのほどを」
「大石 一(いち)。国立大学二回生であります。あ、いちは漢数字の一ですが、みんなからはダッシュと呼ばれておりますので、そうお呼びください!」
「ダッシュ……ですか?」
「一は、ダッシュにも見えますので、子どもの頃から、そう呼ばれております」
「頭で考えるより、体の方が先に出ちゃうバカなんで、そう呼んでます」
「ひょっとして、ミクさんがお付けになった?」
「あはは、幼なじみですから(^_^;)」
「まあ、素敵ですね。こちらは、妹さんですか?」
「ち、違うのでしゅよ! 平賀 照、幕府大学工学部二回生なのでしゅ! これでも、パルス動力専攻なのよさ! いや、でしゅ(#'∀'#)」
「ま、ごめんなさい!」
「いいのいいの! 通過儀礼みたいなもんでしゅから(#'0'#)」
「六回も飛び級して、高校に入ってからは、ずっとわたしたちと一緒なんです」
「そう、みなさん、良いお仲間のようですね。わたしも、仲間に入れていただけたら、とても嬉しいです」
「は、はい!」
「「「もちろん!」」」
「殿下には、わたしの研究のお手伝いをしていただくつもりでです。みんな、よろしくね」
「「「「はい!」」」」
「お待たせいたしました~」
公園の入り口の方から、小柄な少女が手を振りながら走って来る。
女のわたしが見ても、めちゃくちゃ可愛くて、ダッシュもヒコも目がハートになって、テルは同類を見つけたような笑顔になる。
その子は、わたしたちの前まで来ると、折り目正しく礼をして、こう名乗った。
「ココちゃんのお世話係で、サンパチと申す者でござる。よろしくお見知りおき下され」
可愛いのに、言葉も雰囲気もおさむらい、それも、なんだかオッサンぽい……
火星の春は、いよいよたけなわになろうとしている。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
127『火星の春もたけなわ』ミク
え……え……心子内親王殿下!?
胡蝶さんの目配せで現れたのは、西之島から本土にお移りになったとも、地球そのものから脱出を図られる途中でシャトルが爆発して亡くなられたとも噂されている、日本国の皇嗣殿下!
映像やホログラムでしか見たことはないんだけど、どこか今上陛下と同じ気品を感じさせる。
今上陛下とは、修学旅行でお目にかかっているので、印象に間違いはない。
「みな、騒がぬように」
いつの間にか真後ろにまわった胡蝶さんが静かに、でも、キッパリと注意する。
「お察しの通り、心子内親王殿下であられる。必要以上に緊張することは無いけど、あまり騒がないようにね」
上様がご注意になるのは、テルが子どもみたいにピョンピョンしだしたからだろう。頭脳は大人以上なのに感情表現は見かけのまま。
「心子です。意外で複雑な事情でお世話になることになりました、よろしくお願いいたします」
「「「「は、はい!」」」」
「あ、畏まらないでください(^_^;)。こちらでは、将軍の個人的な居候なんですから」
「一応、外部には秘密ということでいくつもりだから、承知しておいてくれたまえ」
「「「「はい」」」」
「人前で『内親王さま』とか『殿下』と呼ぶのは禁止だからね」
「では、なんとお呼びしたらいいんでしょう?」
「心子は呼びにくいでしょうから、ココ……ではどうでしょうか?」
「そんな、呼び捨てなんて!」
思わず首をプルプル振ってしまう。
「じゃ、ココちゃん。西ノ島じゃ、そう呼ばれてましたから」
うう…………(;'∀')
「はい、みなさん、ごいっしょに(^▽^)」
コ、コ……ココさん(≧0≦)!
「アハハ……まあ……そういうことでよろしくお願いいたします。みなさんのお名前も伺っていいですか?」
「はい、緒方未来。幕府大学医学部二回生です……ほら、つぎ!」
「穴山 彦。幕府大学国際政治学科二回生です。お見知りおきのほどを」
「大石 一(いち)。国立大学二回生であります。あ、いちは漢数字の一ですが、みんなからはダッシュと呼ばれておりますので、そうお呼びください!」
「ダッシュ……ですか?」
「一は、ダッシュにも見えますので、子どもの頃から、そう呼ばれております」
「頭で考えるより、体の方が先に出ちゃうバカなんで、そう呼んでます」
「ひょっとして、ミクさんがお付けになった?」
「あはは、幼なじみですから(^_^;)」
「まあ、素敵ですね。こちらは、妹さんですか?」
「ち、違うのでしゅよ! 平賀 照、幕府大学工学部二回生なのでしゅ! これでも、パルス動力専攻なのよさ! いや、でしゅ(#'∀'#)」
「ま、ごめんなさい!」
「いいのいいの! 通過儀礼みたいなもんでしゅから(#'0'#)」
「六回も飛び級して、高校に入ってからは、ずっとわたしたちと一緒なんです」
「そう、みなさん、良いお仲間のようですね。わたしも、仲間に入れていただけたら、とても嬉しいです」
「は、はい!」
「「「もちろん!」」」
「殿下には、わたしの研究のお手伝いをしていただくつもりでです。みんな、よろしくね」
「「「「はい!」」」」
「お待たせいたしました~」
公園の入り口の方から、小柄な少女が手を振りながら走って来る。
女のわたしが見ても、めちゃくちゃ可愛くて、ダッシュもヒコも目がハートになって、テルは同類を見つけたような笑顔になる。
その子は、わたしたちの前まで来ると、折り目正しく礼をして、こう名乗った。
「ココちゃんのお世話係で、サンパチと申す者でござる。よろしくお見知りおき下され」
可愛いのに、言葉も雰囲気もおさむらい、それも、なんだかオッサンぽい……
火星の春は、いよいよたけなわになろうとしている。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
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