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225『朱元尚大佐・3』
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銀河太平記
225『朱元尚大佐・3』朱元尚
フォルムだけだが選鉱機の概要が分かった。
フォルムが分かれば、内部の動力や制御機器の大きさや配置の見当がつく。まったくのゼロよりはスペックの推測がしやすく、コピーを作る手間と時間の二割ぐらいは省けるだろう。
母国に送るパルス鉱石などはどうでもいい、都合よく台風が接近してきたので、それをネタに西之島の先端技術を盗むのが目的なんだからな。
選鉱機そのものもパルス関連の周辺技術に過ぎないが、こういうことの積み重ねが出世の糸口になる。いつまでも、ホトケノザにいるつもりはない。予備役の身分とはいえ資源開発公司の管理職の端くれになったんだ、目指すは公司の社長かCEO……いや、それも手段だ。俺の欲は日本海溝よりも深く、志は泰山よりも大きく須弥山よりも高いのだからな。
「大佐、お怪我はありませんでしたか?」
胡中尉といっしょに地上に引き上げられた時、氷室社長は坑口まで来ていて、心から心配そうに訊ねてくれる。
社交辞令に過ぎないのだろうが、こういう機敏さは敵ながら見事だ。
「いや、お騒がせしました。中尉が注意してくれた時に踏みとどまればよかったのですが、新しいものにはつい前のめりになってしまって、もうしわけありません」
「医務室で少し休まれませんか、あちこち打っておられるようですし、一応の検査もなさった方が……」
「大丈夫、ハンベの簡易検査で異常ありません」
ハンベの仮想インタフェイスを拡大して見せると、眉を寄せながらも笑顔を見せる氷室社長。
「なるほど(^_^;)」
「それに、胡盛徳大佐の慰霊碑にはお参りしたいですから」
「そうですか、では、こちらからも人を付けましょう。ええと……」
「わたしが行きます、社長」
「ああ、メグミさん」
坑口に集まっている関係者の中から、ドクターともメカニックともつかない女性が手を上げる。
「彼女はラボのチーフですが、戦時中は緊急にドクターもやっていましたので適任です。じゃあ、よろしくお願いします、戻られましたら歓迎会というほどではありませんが、昼食会をやりますので、食堂の方へお越しください」
「そうでしたね、一時間で戻れるだろうか中尉?」
「間に合うとは思いますが、90分ということで、お岩さん、いいかしら?」
「ああ、9秒後でも90分後でも間に合わせてあげるよ。でもまあ、ご馳走を前に待たしとくと暴動が起きかねないから、連絡してもらうと嬉しいかな」
「はい、承知しました。では、参りましょうか、大佐」
「ああ、頼む」
選鉱機の概要も確認し、島の様子もある程度は掴めた、あとはオマケだ。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
225『朱元尚大佐・3』朱元尚
フォルムだけだが選鉱機の概要が分かった。
フォルムが分かれば、内部の動力や制御機器の大きさや配置の見当がつく。まったくのゼロよりはスペックの推測がしやすく、コピーを作る手間と時間の二割ぐらいは省けるだろう。
母国に送るパルス鉱石などはどうでもいい、都合よく台風が接近してきたので、それをネタに西之島の先端技術を盗むのが目的なんだからな。
選鉱機そのものもパルス関連の周辺技術に過ぎないが、こういうことの積み重ねが出世の糸口になる。いつまでも、ホトケノザにいるつもりはない。予備役の身分とはいえ資源開発公司の管理職の端くれになったんだ、目指すは公司の社長かCEO……いや、それも手段だ。俺の欲は日本海溝よりも深く、志は泰山よりも大きく須弥山よりも高いのだからな。
「大佐、お怪我はありませんでしたか?」
胡中尉といっしょに地上に引き上げられた時、氷室社長は坑口まで来ていて、心から心配そうに訊ねてくれる。
社交辞令に過ぎないのだろうが、こういう機敏さは敵ながら見事だ。
「いや、お騒がせしました。中尉が注意してくれた時に踏みとどまればよかったのですが、新しいものにはつい前のめりになってしまって、もうしわけありません」
「医務室で少し休まれませんか、あちこち打っておられるようですし、一応の検査もなさった方が……」
「大丈夫、ハンベの簡易検査で異常ありません」
ハンベの仮想インタフェイスを拡大して見せると、眉を寄せながらも笑顔を見せる氷室社長。
「なるほど(^_^;)」
「それに、胡盛徳大佐の慰霊碑にはお参りしたいですから」
「そうですか、では、こちらからも人を付けましょう。ええと……」
「わたしが行きます、社長」
「ああ、メグミさん」
坑口に集まっている関係者の中から、ドクターともメカニックともつかない女性が手を上げる。
「彼女はラボのチーフですが、戦時中は緊急にドクターもやっていましたので適任です。じゃあ、よろしくお願いします、戻られましたら歓迎会というほどではありませんが、昼食会をやりますので、食堂の方へお越しください」
「そうでしたね、一時間で戻れるだろうか中尉?」
「間に合うとは思いますが、90分ということで、お岩さん、いいかしら?」
「ああ、9秒後でも90分後でも間に合わせてあげるよ。でもまあ、ご馳走を前に待たしとくと暴動が起きかねないから、連絡してもらうと嬉しいかな」
「はい、承知しました。では、参りましょうか、大佐」
「ああ、頼む」
選鉱機の概要も確認し、島の様子もある程度は掴めた、あとはオマケだ。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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