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251『ペシペシと頬を叩く劉宏』
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銀河太平記
251『ペシペシと頬を叩く劉宏』 劉宏元帥
青銅の騎士は超小型の核エネルギーエンジンを動力とし、チタン合金の装甲で全身を覆ったロボット騎兵だ。
二十三世紀の今日、兵器に限らず、世界の動力はパルスエンジンが標準なのだが、ロシアは艦船や大型の航空機以外は核融合エンジンに頼っている。
小型化などの技術が未発達なのだ。民生品は輸入のパルスエンジンを使っているが、軍用品には使えない。輸入品はどこで外国の軍隊や諜報機関と結びついているか分からず、情報が筒抜けで、いざというところでロシアの支配を離れてコントロールされてしまうかもしれない。また、アンチパルス化された空間ではパルスエンジンは使えない。
我が漢明軍も同様なのだが、燃料はパルスバッテリーを使っている。エンジンではなく動力源なのでアンチパルスの影響を受けることも無く、ロシアのそれよりも出力は二倍から三倍になる。
漢明軍が本気で乗りだせば、互角に戦えるロシア兵は青銅の騎士ぐらいしかいない。
数において十分とは言えない青銅の騎士は、我が軍と渡り合えば、各個撃破される。じっさい、目の前でモンゴル騎兵が身を犠牲にしながらも十騎あまりの青銅の騎士を撃破している。
第二次大戦におけるドイツのタイガー戦車の運命に似ている。1対4までなら怖れる敵のいないタイガーだが、連合軍は5両以上の戦車で対処することでタイガーを仕留めていった。我が軍には、青銅の騎士を5騎以上で対処するだけの兵が準備されている。
他にも厄介な問題がある。
ロシアは、いざとなれば人の命など、たとえ自国民であっても考慮しない国なのだ。第二次大戦でロシア人は三千万も人命を失ったが政権が倒れることは無かった。
ロシアは、いざとなれば無尽蔵と言っていい兵力を繰り出せる。
どのように優れた兵器と優秀な軍隊を持つ国でも、ロシアと事を構えるのは二の足を踏む。
……どうも、こと軍事のことになると、劉宏の思考になってしまって王春華の姿には似つかわしくない言葉になってしまう(-_-;)。
ペシペシ
両手で頬を叩くと、近くの兵たちがクスリと笑う。
テヘペロまではカマさないが、十分にクールダウンできた。
と、肩の力を抜いたら、その努力を踏みにじる者が現れた。
「朱准将が突出していきます!」
副官が叫んで、わたしは馬の上で跳びあがってしまった!
「胡盛媛中尉が追っております」
だめだ、すぐに国境を超えてしまう!
「引き止めろ!」
一声で十分。
旅団長が手を挙げると、スイッチが入ったように前衛のうちの一個分隊が飛び出していく。
しかし遅かった。
分隊があと数十メートルというところで朱元尚は国境を跨いでしまい、次の瞬間には青銅の騎士を先頭に十数騎のロシア兵が二人に向かってきたのだ!
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要語句
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
251『ペシペシと頬を叩く劉宏』 劉宏元帥
青銅の騎士は超小型の核エネルギーエンジンを動力とし、チタン合金の装甲で全身を覆ったロボット騎兵だ。
二十三世紀の今日、兵器に限らず、世界の動力はパルスエンジンが標準なのだが、ロシアは艦船や大型の航空機以外は核融合エンジンに頼っている。
小型化などの技術が未発達なのだ。民生品は輸入のパルスエンジンを使っているが、軍用品には使えない。輸入品はどこで外国の軍隊や諜報機関と結びついているか分からず、情報が筒抜けで、いざというところでロシアの支配を離れてコントロールされてしまうかもしれない。また、アンチパルス化された空間ではパルスエンジンは使えない。
我が漢明軍も同様なのだが、燃料はパルスバッテリーを使っている。エンジンではなく動力源なのでアンチパルスの影響を受けることも無く、ロシアのそれよりも出力は二倍から三倍になる。
漢明軍が本気で乗りだせば、互角に戦えるロシア兵は青銅の騎士ぐらいしかいない。
数において十分とは言えない青銅の騎士は、我が軍と渡り合えば、各個撃破される。じっさい、目の前でモンゴル騎兵が身を犠牲にしながらも十騎あまりの青銅の騎士を撃破している。
第二次大戦におけるドイツのタイガー戦車の運命に似ている。1対4までなら怖れる敵のいないタイガーだが、連合軍は5両以上の戦車で対処することでタイガーを仕留めていった。我が軍には、青銅の騎士を5騎以上で対処するだけの兵が準備されている。
他にも厄介な問題がある。
ロシアは、いざとなれば人の命など、たとえ自国民であっても考慮しない国なのだ。第二次大戦でロシア人は三千万も人命を失ったが政権が倒れることは無かった。
ロシアは、いざとなれば無尽蔵と言っていい兵力を繰り出せる。
どのように優れた兵器と優秀な軍隊を持つ国でも、ロシアと事を構えるのは二の足を踏む。
……どうも、こと軍事のことになると、劉宏の思考になってしまって王春華の姿には似つかわしくない言葉になってしまう(-_-;)。
ペシペシ
両手で頬を叩くと、近くの兵たちがクスリと笑う。
テヘペロまではカマさないが、十分にクールダウンできた。
と、肩の力を抜いたら、その努力を踏みにじる者が現れた。
「朱准将が突出していきます!」
副官が叫んで、わたしは馬の上で跳びあがってしまった!
「胡盛媛中尉が追っております」
だめだ、すぐに国境を超えてしまう!
「引き止めろ!」
一声で十分。
旅団長が手を挙げると、スイッチが入ったように前衛のうちの一個分隊が飛び出していく。
しかし遅かった。
分隊があと数十メートルというところで朱元尚は国境を跨いでしまい、次の瞬間には青銅の騎士を先頭に十数騎のロシア兵が二人に向かってきたのだ!
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要語句
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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