泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
1 / 100

1『ランチを食べ損ねる』

しおりを挟む
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

1・『ランチを食べ損ねる』   



 ノリスケが休みなので一人で食堂を目指す。

 食堂の前で嫌なものに出くわした。
 数学の堂本が女子をいたぶっているのだ。

「担任の指示を聞けないなんて、もう、終わってるぞ」
「『考査一週間前につき生徒入室禁止』の札がかかってました」
「俺の呼び出しの方が優先だ。札の注意書きよりも担任の口から出たことの方が重要なのはあったりまえじゃねーか! それをシカトして食堂直行くってか、いい度胸してるよなー!」
「直行したのは職員室です。ドアに手を掛けたら、南先生に『テスト前だ』って札を示されて……」
「百地の担任は俺だ、南先生じゃないだろ、なんでドア開けて声かけないんだ!」
「お昼食べたら、もっかい来ようって……」
「俺の指導より昼飯が大事なのか!」
「そうじゃないです、そうじゃなくって……」
「いいかげんなんだよ! 百地のこと思って指導してんのに、そんな反抗的な顔されたんじゃやってらんねーだろーが!」
「そんなつもりはありません」
「あるよ、その不足そうな口、まるでΣじゃねーか、その根性直さなきゃ進級なんかできねーぞ! 聞いてんのか!」
「……………」
「どーなんだ!」

 食堂前のそこだけ凍り付いて、腹ペコの生徒たちも避けて入って行く。

 小五の時に見た教育映画を思い出した。ワニが子どものガゼルを襲うんだけど、他のガゼルは、関係ねえって感じで通り過ぎていくとこ。

 ……俺はめずらしく頭に来た。

「ちょっといいっすか」
「なんだお前は!?」

 堂本は怒りのワニのまんま、俺に顔を向けた。

「『入室禁止だけど、声かけて入ればいいから』くらい言っておくべきだと思うんすけど」
「なんなんだお前は!?」

 あ、俺のこと覚えてねーってか?

「一年の時習ってた妻鹿雄一っすよ。俺も成績のことで呼び出されて同じよーなことがあった」
「あーーーω(オメガ)か」

 怒りの上に蔑みの表情を付けてきやがった。

 理屈の通る顔じゃない、食堂に出入りする生徒たちが交通事故の現場をスルーするような感じで行きかう。
 中にはクラスの女子なんかも居てωってところではクスリと口を押えていきやがる。

 早くも俺は後悔し始めている。

「札には教務部長ってあるじゃないっすか、生徒は教務部長の方が重いって感じますよ。これは堂本先生の間違いなんだって、俺の時もそう言いましたよね、先生は『善処する』って言ったように思うんですけど」
「言ったかもしれないけど、常識で判断したら、ちっとは気をきかそうってことになれよ、いつまでも中坊じゃねーんだから」
「問題すりかえないでくださいよ」
「おまえもなー、人にもの言う時は、もうちょっと真面目な顔で言えよ。ニタニタ笑いながらじゃまともに相手なんかしてらんねーよ、だからωなんてあだ名が付いちまうんだぞ」

 チ、ωって、学校じゃあんたが言いだしたんじゃねーか。

「あだ名は関係ないっすよ。とにかく、昼休みの食堂前での説教はヤボでしょ、先生は外にも食べに行けるし、時間空いてりゃ五時間目だって食べられる。生徒は今しかないんだから、とりあえずは止してください。さ、行こう」

 その場の勢いで、俺はΣ(名前が出てこない)の腕をとって食堂に入った。

 後ろで堂本が喚いているがシカトする。

「どうもありがとう」

 蚊の鳴くような声でお礼を言うΣ。涙声なので聞こえないふりをする。


「あー、ランチとかは売り切れってか……マジ、飯前のトラブルはありえねーよなー」
「すみません」
「ハハ、きみが悪いわけじゃねーし。そーだ、麺類でスペシャルがあるんだ、任せてくれる?」
「う、うん……」

 表情は不足そうだけど、気持ちはそうじゃなさそうなのでリードを続ける。こういう場合の女の子をホッタラカシにしてはいけないというのはひい祖父ちゃんの遺言だ。

「おばちゃん、例のやつ。きみ、並んどいてくれる」

 カウンターで声を掛けておいてから食券を買いに行く。
 
 順番がきてトレーに乗っけられたものを見て、Σは目を丸くした。

 こういうときでも彼女の口はΣだ。

 でも、堂本とちがって、不足そうだとは思わない俺ではあった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...