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12『あ、松ネエ!』
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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
12『あ、松ネエ!』
後悔はしねえが困ってしまった。
シグマに「俺に任しとけよ、堂本先生の数学は経験済みだから」なんて言ってしまったけど、俺自身、数学はからっきしだ。
ノリスケと並んでの下校中、なにかアテはないかと聞いてみたくなったが、こいつも勉強は俺とおっつかっつ。二人とも知り合いに優等生はいない。思わずため息をついたら「月曜からテストだもんなー」と大局的には外れていない相槌が帰ってくる。まさかシグマの心配をしているとは言えない。
「くそ」
「ハハ、新作エロゲやりたくって仕方ねえんだろ」
「バ、バカ言ってんじゃねーよ」
「俺もテスト中に督促したりしねーからよ」
ノリスケに罪はないんだけど、無性にムカついてしまう。
なんで、こんなに秘密や心配事を抱え込まなくっちゃいけないんだ!
家に帰ると人の気配が無かった。
廊下を茶の間に向かっていると、ジャーゴボゴボと水の音。
とっさに首を巡らせると、トイレのドアが開いて小菊と至近距離で目が合ってしまう。
「ト、トイレの前に立ってんじゃないわよ!」
「いま帰ったとこだ、いちいちつっかかんなよ」
「ふん!」
「小菊の他には誰もいねーのか?」
「店の方よ、あたしが受験前だから気を使ってくれてんの。あんただけだよ無神経なのは!」
「すまんな、気が利かなくて」
「ハアアアアアアアアアアア」
こんな時間に受験勉強なんかしてるわけないんだけど、いっぱしの受験生みたいに盛大なため息ついて、小菊は茶の間に向かった。
小菊に触発されて尿意を催す。
トイレの便座を開けると、とり残されたトイレットペーパーが水の中でクルクル回っている。節水型トイレもいいけど、こういうとり残しはなんとかなんねーんだろうか。盛大に水を流してから用を足す。
『男のくせに二回も見ず流すんじゃないわよ、せっかく休憩に下りてきてんのに、気分悪いんですけどー』
お前の使用済みが残ってたんだ!
ま、それを言っちゃおしまいなので、台所で水を飲む。他にも飲み物は有るんだけど、俺は、つい水を飲んでしまう。
まあ、東京の水道水は世界有数の飲める水道水なんだけどな。緑が似合う都知事に、ちょっとだけ感謝。
……店の方から微かに笑い声が聞こえる。
うちは祖父ちゃんの代までパブをやっていたので、店がそのまま残っている。店の入り口と住居部分の間は防音構造になっているんだけど微かに音が漏れるんだ。
しかし、小菊の勉強のためだとしたら、ちょっと気を遣いすぎてねーか。だいたい俺んときは……。
ただいまー……。
ドアを開けると、楽し気な家族の語らいがマックスになっていた。
そして、その語らいの中心にいたのは……。
「あら、ゆう君!」
「あ、松ネエ!」
それは、親父の妹の娘。俺には一つ年上の従姉である柊木小松(ひいらぎこまつ)であった。
三年ぶりの従姉は、なんだか、とても眩しかった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校二年
百地美子 (シグマ) 高校一年
妻鹿小菊 中三 オメガの妹
ノリスケ 高校二年 雄一の数少ない友だち
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
12『あ、松ネエ!』
後悔はしねえが困ってしまった。
シグマに「俺に任しとけよ、堂本先生の数学は経験済みだから」なんて言ってしまったけど、俺自身、数学はからっきしだ。
ノリスケと並んでの下校中、なにかアテはないかと聞いてみたくなったが、こいつも勉強は俺とおっつかっつ。二人とも知り合いに優等生はいない。思わずため息をついたら「月曜からテストだもんなー」と大局的には外れていない相槌が帰ってくる。まさかシグマの心配をしているとは言えない。
「くそ」
「ハハ、新作エロゲやりたくって仕方ねえんだろ」
「バ、バカ言ってんじゃねーよ」
「俺もテスト中に督促したりしねーからよ」
ノリスケに罪はないんだけど、無性にムカついてしまう。
なんで、こんなに秘密や心配事を抱え込まなくっちゃいけないんだ!
家に帰ると人の気配が無かった。
廊下を茶の間に向かっていると、ジャーゴボゴボと水の音。
とっさに首を巡らせると、トイレのドアが開いて小菊と至近距離で目が合ってしまう。
「ト、トイレの前に立ってんじゃないわよ!」
「いま帰ったとこだ、いちいちつっかかんなよ」
「ふん!」
「小菊の他には誰もいねーのか?」
「店の方よ、あたしが受験前だから気を使ってくれてんの。あんただけだよ無神経なのは!」
「すまんな、気が利かなくて」
「ハアアアアアアアアアアア」
こんな時間に受験勉強なんかしてるわけないんだけど、いっぱしの受験生みたいに盛大なため息ついて、小菊は茶の間に向かった。
小菊に触発されて尿意を催す。
トイレの便座を開けると、とり残されたトイレットペーパーが水の中でクルクル回っている。節水型トイレもいいけど、こういうとり残しはなんとかなんねーんだろうか。盛大に水を流してから用を足す。
『男のくせに二回も見ず流すんじゃないわよ、せっかく休憩に下りてきてんのに、気分悪いんですけどー』
お前の使用済みが残ってたんだ!
ま、それを言っちゃおしまいなので、台所で水を飲む。他にも飲み物は有るんだけど、俺は、つい水を飲んでしまう。
まあ、東京の水道水は世界有数の飲める水道水なんだけどな。緑が似合う都知事に、ちょっとだけ感謝。
……店の方から微かに笑い声が聞こえる。
うちは祖父ちゃんの代までパブをやっていたので、店がそのまま残っている。店の入り口と住居部分の間は防音構造になっているんだけど微かに音が漏れるんだ。
しかし、小菊の勉強のためだとしたら、ちょっと気を遣いすぎてねーか。だいたい俺んときは……。
ただいまー……。
ドアを開けると、楽し気な家族の語らいがマックスになっていた。
そして、その語らいの中心にいたのは……。
「あら、ゆう君!」
「あ、松ネエ!」
それは、親父の妹の娘。俺には一つ年上の従姉である柊木小松(ひいらぎこまつ)であった。
三年ぶりの従姉は、なんだか、とても眩しかった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校二年
百地美子 (シグマ) 高校一年
妻鹿小菊 中三 オメガの妹
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