泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
59 / 100

59『大江戸放送』

しおりを挟む
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

59『大江戸放送』オメガ 




 塀に穴が開いただけで済んだ。

 寿屋の小父さんは元消防団長で、やっぱプロの火消しは大したもんだと思った。家族六人のガスマスクも小父さんが外してくれて事なきを得た。

「ガスマスクってのは一般用がないからね、防災ヘルメットみたいに着脱が簡単じゃないんだよ」

 外してもらった顔には、しっかりマスクの縁の痕がクッキリ。まるで顔の皮膚を移植しましたって感じになってる。

「キャー、信じらんない!」

 一声あげて家に逃げ帰った小菊は無事だったが、残り五人はご近所の皆さんや通行人の人たちに写真やら動画に撮られられてしまった。

「動画サイトに投稿されるわね(^_^;)」

 松ネエの予想は、しっかり当たって、昼過ぎには新聞社と放送局までやってきた。



 で、今日は朝から大江戸放送のスタジオに来ている。



「それでは妻鹿家のみなさんどうぞ!」

 国営放送出身のMCの声が掛かって、俺たちはスタジオの真ん中に進んだ。

 手に手にガスマスクをぶら下げ「どうぞ!」の掛け声で装着する。

 あれから何度もやってみたので、六人の手際はなかなかのもんだ。

「すごい、五秒で装着完了ですね!」

 MCのストップウォッチはきっかり五秒を指している。

 オームサリン事件でも活躍した警察OBのお爺さんがチェックをしてくれて、しっかり合格点をくれる。

「とっさにはキッチリとした装着はむつかしんですが、妻鹿家のみなさんは怪我の功名と言ってはなんですが、しっかりなさっていますね」

「どいうところが注意点なんでしょうか?」

 MCは国営放送の謹厳実直さで訊ねる。

「顔とマスクの間に隙間ができないことが重要です」

「なるほど」

 レギュラーやゲストの皆さんが寄ってきて、しげしげと俺たちのマスク顔を覗き込む。

「さらに重要なのは、ここからなんですが……」

 OB爺さんがいきなり俺のマスクを掴んでグラグラと揺すった。

「お、う、あ」

 3D酔いのようになって、うめき声がもれてしまう。

「人間というのは動きますし表情が有りますので、装着後は、できたら人に揺すってもらったりして確認するのが良いと思います」

「妻鹿さんの家はご家族が多いですからいいと思うんですけど、一人暮らしの人とか」

「そうですね、家族が居てもとっさの時などは」

「ガスマスクってフリーサイズですしね」

 ゲストがいろいろ言う。

「そういう時は、口を大きく開け閉めしていただいて、馴染ませるとよいと思います」

「みなさん、お口の開け閉めを」

 スタジオというのは人を従順にしてしまう魔力があるようで、妻鹿家の面々は、あの気難しい小菊でさえフガフガとやり始めた。

「お、あ、あががーーーー(゚o゚;」

 親父が尋常ではないうめき声を上げ始めた。

「あ、これは……」

 OB爺さんは、すぐに親父のマスクを剥がして異変に対処した。

 親父は、マスクの中で大口御開けすぎて顎を外してしまったのだ。

 カクン

 ピンマイクが拾った音は以外に大きく、親父には災難であったけど、スタジオは笑いの渦に包まれた。

 放送局というのは大したもので、アクシデントがあったにも関わらず、予定時間の中にガスマスクを収めてしまった。



☆彡 主な登場人物

妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
百地美子 (シグマ)     高校二年
妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
妻鹿由紀夫          父
鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ)        小菊のクラスメート


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...