泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

武者走走九郎or大橋むつお

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76『夏コミに行きたい!』

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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

76『夏コミに行きたい!』シグマ 




 これの三倍以上の人が来るんだ……

 そう思うとため息が出る。

 ウットリしてるんじゃない、す、すごいなあ(;'∀')……そう感じて尻込みしてしまう。

 気まぐれでテレビを点けたら後楽園球場の試合を映していた。


 ググってみると……後楽園球場は43000人ほど人が入る。


――満席の後楽園球場には定員いっぱい43000人、満杯の野球ファンで埋め尽くされております!――


 アナウンサーの言葉でリモコンを持つ手が止まった。


 画面の後楽園もすごいけど、かねがね行きたかったアソコは一日に17万人、三日で50万人以上の人が集まる。

 夏コミ 20××!

 日本最大!……ってことは世界最大のオタクの祭典!


 中学の頃から行きたかったけど、動画サイトなどで見る混雑ぶりというか密度の高さで諦めていた。

 夏コミに行けば、限定アイテムや同人誌が手に入る。

 これが他府県なら諦めもつくけど、なんてったって東京ビッグサイトだ。始発に乗っても六時前には着ける。

 それに、今のあたしはボッチじゃない、サブカル研のみんなに声を掛ければいいんだ!


 …………でも迷ってしまう。


 オタクと言ってもいろいろなんだ。

 人生全てが二次元というようなガチな人から、数ある趣味の一つですという人まで。

 うちのサブカル研は、あたしが無理を言って、その無理に先輩たちが合わせてくれているところがある。

 そうなんだ、合わせてくれているんだ。

 ノリスケ先輩は元々二次元が好きみたい。パソコンでゲーム進行していても、とてもテンポがいい。

 ゲームで詰まっても「おもしれーじゃねーか」とセーブデータを見て「ここが分岐だったんだなあ(^▽^)」と適切に過去フラグに戻って、すぐにルートに戻ってくる。

 でも、オメガ先輩は途中で投げ出すゲームも多い。

 最初にやってもらった『君の名を』はツボにはまったみたいだけど、先月紹介した『時を掛ける妹』は止まっているみたいで、あまり興味はない様子だ。

 部活らしくやろうということで始めた『バトルフィールドラブ』で勝ったことが一度もない。エロゲなんで勝ちにこだわることもないんだけど、やっぱ、お付き合いでやらされてる感が漂っている。

 冷静に分析すれば、あたしの我がままに、人のいい先輩たちが着きあってくれているということなんだ。

 そこんとこ分かっているから、連休中も無理は言わなかった……言えなかった。

 それで、あたしは風信子先輩に相談してみることにした。


「へー、そういうのがあるんだ!」

 まず感心された。


 三日で50万人以上のイベントとはいえ、やっぱ社会的にはオタクの祭典。連日ニュースで取り上げられたたり、スポンサーがついて中継されるようなもんじゃない。情報に接していなければ知らなくて当たり前。

 そもそもオタクのイメージって「異性にモテない」「目を合わせて話さない」「服装がキモイ、あるいはダサい」「引きこもってゲームばっかりやってる」そんな感じ。

 そんなオタクが集まっても、世間は後楽園球場に集まった野球ファンのようには見てくれない。そうなんだよ、野球に関しては「野球オタク」とかは言わない。あくまでファンだよ。サッカーやラグビーとかは、熱狂したファンが発狂して事件を起こすことがあるよね、暴力沙汰になって、暴動めいたり、殺人事件になったり、興奮したファンを鎮めるために機動隊やら軍隊が出撃することも珍しくない。

 オタクが何十万人集まっても、機動隊やら軍隊が出動なんて無いよ。会場に行っても、スタッフが「並んでください」「走らないでください」という注意に見事なくらい従ってる。イベントが終わった時も自主的にゴミの回収とかもやるしね。

 でも、いくら大人しくても、秩序だってても、オタクはオタク。ファンのカテゴライズには勝てない。なんというか、イナゴの大群とかネズミの大群見る感じ。たとえネズミがきれいに一列に並んでも「えらい、キチンとしてるねえ」とは言われないよね。

 去年の夏コミの動画を見ていると、風信子先輩は意外なことを言った。

「ねえ、これって出展とかした方が面白いんじゃない?」

 絶句した、そういう発想は持ったことが無いから……。




☆彡 主な登場人物

妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
百地美子 (シグマ)     高校二年
妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
妻鹿幸一           祖父
妻鹿由紀夫          父
鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ)        小菊のクラスメート


 
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