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3[旅立ちの時・1]

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宇宙戦艦三笠

3 [旅立ちの時・1]



「あ、ごめん! そのままの姿で連れてきちゃった!」

 パチン

 お下げの神さまが、そう言って指を鳴らすと、オレたち四人は紺色の軍服姿に変わった。

「わ!」「え!」「お!」「う!」

 四人四様の声をあげて驚いた。

 オレの網膜には天音の白い裸が強烈に焼き付いたので、数秒ダブって見えちまった。で、記憶に間違いがなければ、四人の軍服は戦艦三笠を観に行った時に展示してあった帝国海軍のそれだ。襟元の階級章は天音と樟葉が中佐、トシが少佐。自分のは……見えないので良く分からない。

 周りを見渡すと、立派な応接室のようだけど、部屋全体が三角形で、ところどころの窓が小さくて丸い……記憶に間違いがなければ、これは三笠公園の戦艦三笠の司令長官室にそっくりだ。

「そう、戦艦三笠の司令長官室ですのよ」

 お下げの神さまが、口をωにして言った。

「な……なんで、こんなところに?」

 質問しようとしたら、樟葉に先を越されてしまった。

「言ったでしょ。戦艦三笠に乗ってくださいって」

「いや」「だから」「なんで」

「「「「戦艦三笠に?」」」」


「地球を救ってもらうためです」

「「「「地球を救う( ゜д゜ )!?」」」」


「地球は、氷河期を迎えようとしています。温暖化しているというのは国際的な利権がらみの大嘘です。これを見て……」

 神さまが指差すと、スクリーンが現れ、そこに南極大陸の白い姿が現れた。

「これは去年の冬の姿だけど、観測史上最大の氷面積になっています。で、これが北極。氷は完全に回復しています。そして、世界各国の近年の冬の様子……エジプトで雪が降っています」

「でも……これって、温暖化の前の特異現象……」

「そんなこと、まともに信じているのは、日本と某国営放送ぐらいのもの。二酸化炭素の排出権が利権化していることや、水資源の取り合いのための目くらましにすぎないわ。世界の人々が寒冷化に気づきはじめている、やっとね……そして、寒冷化は人々の予測を超えて進み始めているのです。あと100年もたたずに地球は氷河期に突入して、人類は滅亡する。恐竜が絶滅したように、ごく短時間でね」

「それで、なんで戦艦三笠なの?」

「地球を救うのは、日本の戦艦に決まっています」

「それって、ヤマトの専売特許じゃないの?」

「だって……現物で残っている戦艦は、この三笠だけですから」

 ホワン

 そう言うと、神さまは四人に分身した。

 おそらくこの分身が、ブンケンのメンバーをそれぞれ連れてきたんだろう。

「船には、それぞれ船霊(ふなだま)がいるの」

「戦艦大和には大和神社(おおやまとじんじゃ)の大国魂神(おおくにたまのかみ)」

「戦艦長門には厳島神社」

「戦艦山城には賀茂神社」

「などの、神社の神さまが分祀されていたわ」

「でも、船が沈む前に、船霊は、その船を離れてしまうの」

「で、唯一、わたしだけが三笠に留まっているわけ」

「じゃ、あなたは……」

 ホワン

 樟葉の言葉で、分身していた神さまが一つになった。

 一つになっても、相変わらずお下げのセーラー服。

「一応、天照大神(あまてらすおおみかみ)。でも、大そうに思ってくれなくていいのよ(^_^;)」

「それにしても、アマテラスさんがセーラー服の女子高生じゃなあ」

 と、オレが言うと、トシが初めて口をきいた。

「分かるよ! 日本人の大方が、その程度にしか思ってないから、こんなお姿なんでしょ?」

「あ、それはね、それはみんなに親しみ持ってもらいたいからかな……アハハハ」

 なんだか無理して笑っているような気がした。案外トシの一言は図星なのかもしれない。

「で、なんであたしたちなんですか?」

「それは、まあ、チュートリアルやりながら……」

 ドッカーン!!

 ウワアアア!

 三笠のどこかに弾が当たったような衝撃がした!



☆ 主な登場人物

 修一      横須賀国際高校二年
 樟葉      横須賀国際高校二年
 天音      横須賀国際高校二年
 トシ      横須賀国際高校一年
 神さま     戦艦三笠の船霊
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