宇宙戦艦三笠

武者走走九郎or大橋むつお

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4[旅立ちの時・2]

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宇宙戦艦三笠

4[旅立ちの時・2]



「みんなCIC(戦闘指揮所)に集まって!」

 神さまが命じると、オレたちはまるであらかじめ知っていたかのように三笠の中央部にあるCICに走り、それぞれの席に着いた。

「シールドA展開! 砲術長、航海長、現状報告!」

 オレは、当たり前のように天音と樟葉に命じた。なんで、オレ、こんなに偉そうなんだ!?

「右舷3時方向0・04パーセクに敵艦多数。フェザー砲飽和攻撃の感あり! 弾着まで5秒」

「機関長、ミニワープで敵の真ん中に出る。同時に艦載砲すべてでフェーザー攻撃」

「てーっ!」

「ミニワープ!」

 機関長のトシが、今まで聞いたことのない冷静かつしっかりした声で応えた。

 ズゥイン

 掃除機を弱で起動したような音がしたかと思うと、モニターの星々が前方に集中し、後方モニターの星々は消えて真っ暗になった。

 シュイン

 ワープカウンターが05を示すと、掃除機が停止するような音がして、モニターに星空が戻ってゴマ粒のような敵艦隊が映し出された!

「全フェーザー砲射撃オート!」

「てーー!」

 シュビビビビビビ

 俺が命じ砲術長の天音が応えて、弾幕シューティングゲームのような射撃音が続く。

「捻りこみ最大戦速で敵旗艦に並走、一斉射後9時方向0・01パーセクにミニワープ」

 シュビビビビビビ……ズィン

 射撃音の後に掃除機の誤作動のようなミニワープの音が続く。

 ウッ(;'∀')

 瞬間のミニワープが終わると敵直衛艦のどてっ腹が迫って、思わず唸ってしまう。

 シュビビビビビビ

 ワープの寸前から撃ちっぱなしのフェーザー射撃の束が直衛艦の腹を舐めていき、捻り込み運動が完了する寸前に大爆発!

 その爆発エネルギーをも推進力の足しにして0・2秒間敵旗艦と並走。こちらのシールドで、敵艦のシールドを中和、主砲と左舷の全副砲で0距離射撃。敵が爆沈する寸前にミニワープ。9時方向でステルスシールドに切り替えた。

「敵艦123隻中40隻を撃沈23隻撃破」
「残存艦にフェーザー攻撃。初元位置にミニワープ」
「敵残存艦32隻、ワープしつつ逃走しあり……」

「「「「勝った」」」」

「チュートリアルクリア、全員合格よ」

 神さまが静かに微笑んだ。

「どうして、俺たちに、こんなことができるわけ……?」

「これからの航海に必要なアビリティーはダウンロードしてある。インストールが完璧なことも、今のチュートリアルで確認できたわ」

 飛躍した現実に付いていけず長い沈黙になった。

「……どうして、わたしたちなんだ?」

 数分の沈黙を破って天音が口を開いた。

「東郷君の霊波動が、わたしに合うの」

「え、俺が!?」

「それと、あなたたちの喪失感。潜在的な一体感……そういうものが総合的に適合した……で、納得してくれる?」

「……で、できるか! わたしたち、学校やら自分の生活があるんだぞ!」

「ワープ移動がほとんどになるから、遅くとも明日の朝には戻れるわ。上手くいきすぎたら、それよりも前に戻るかも、光速以上で移動すると時間は逆行するから」

「あの……それって、ボクが引きこもる前に戻れる可能性もあるってことですか?」

「そこまでは……でも、この旅で秋山くん(トシの苗字)の引きこもりは完治すると思うわ」

「そ、そうなんだ」

「で、あなたのことは、なんて呼んだらいいのかしら?」

 樟葉が取り持つように続ける。

「アマテラスオオミカミさんじゃ言いにくいかな(^_^;)」

「アマさん……じゃ変?」

「っていうか、あたしが呼ばれてるみたいだぞ」

「「ああ」」

 トシが入部したての頃天音を、そう呼んでたな。声に元気がないもんだからアマネのネが発音しきれなかったんだ。

「ん~と、みかさんでいいわ」

「「「みかさん?」」」

「三笠の船霊だから『三笠さん』でしょ。『みかささん』じゃ舌噛みそうだし『みかさん』。うん、これでいこう。じゃ、今夜は休んで。明日から本格的なミッションに入るから。じゃ、よろしく!」

 みかさんは、エフェクトも無く消えてしまった。オレたちは目的も目的地も敵のなんたるかも知らずじまい、地球の寒冷化と言われても、いま一つピンとこないまま始まってしまった……。


☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 みかさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
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