宇宙戦艦三笠

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
48 / 50

48[小惑星ピレウスの秘密]

しおりを挟む
宇宙戦艦三笠

48[小惑星ピレウスの秘密] 修一  




 三笠のクルーはみんな同じ思いだった。

「ピレウスに来て三日たつけど、オレたちなんともない……」

「スキャンしても、みなさん健康そのものです」

 クレアがトシの言葉を裏付けた。三笠のクルーはレイマ姫とジェーンの顔を交互に見た。

「んだんず。地球人は、このピレウスでも影響受げねんだ……」

「レイマ姫、君の狙いは……」

「寒冷化防止装置、なんど(あなたたち)に渡すて、地球救うごどだ」

「それだけかい……?」

「…………」


 修一の問いかけに、レイマ姫は黙ってしまった。


「あたしが代わりに言ってやろう」

「……なんで、ジェーンが」

「これは、レイマ姫のお願いであって、交換条件じゃない。ただ、自分から言いだすと、気のいいあんたたちに強制するようで言えなかったのさ」

「……言えないことって?」

「ジェーン、もうい。三笠のふとたぢに、寒冷化防止装置ば……」

「言うだけ言ってみようよ。あとは……みんなで考えればいいさ」

 いつも陽気なジェーンが真剣な顔になった。

「あんたたちの中で、男女一組がピレウスに残ること……意味は分かるわね?」



「え?」



「……ひょっとして、オレたちにピレウスのアダムとイブになれって……ことか?」

「あ、もういんだ! 忘れでけ、けすて交換条件ずわげでねはんで(#^△^#)!」

 レイマ姫は、両手でイラナイイラナイをした。

 重い沈黙が三笠の長官室を支配する。

 カタカタ……

 かそけき音に顔をあげると、ネコメイドたちがワゴンにお茶の用意を載せてやってきた。

「失礼しますニャ」

 ネコメイドたちが、紅茶とスコーンを給仕してくれる間も言葉を発する者はいなかった。

「艦長、ひとこと申し上げてもよろしいですかニャ?」
 
 ミケメが笑顔で指を立てた。

「うん、なにかな?」

「もし、どなたかがお残りのなるのなら、わたしたちもピレウスに残るニャ」

「え、きみたちが?」

「お世話する者がいるニャ」

「家を建てたり、畑を作ったり、水を汲みに行ったりニャ」

「ごはんを作ったりニャ」

「そんなの、ちょっと機材があれば、俺たちでできるぞ」

「でもニャ」

「いざ出産ということになったらニャ」

「たいへんニャ(^_^;)」

「猫の手も借りたいになるのニャ!」



 出産(# ゜Д゜#)!?



 口にこそ出さなかったけど、みんな異口同音に、でも口には出さずに驚いた。

 なんか、モロそのままの話なので、俺は話題を変えたぞ。

「聞きそびれていたんだけどさ!」

「なにかニャ?」

「ダルで二十年休眠して目覚めた時さ、ミケメたちは、そのまんまだったじゃないか、おまえたちもクローンかなにかなのか?」

 ああ……みんなもそんな顔になった。とりあえず緊急避難(^_^;)

「ネコはニャ、100万回生まれかわるニャ」

「宇宙に飛び立つにあたってニャ」

「100万回分を一人の中に取り入れたからニャ」

「100万匹分の寿命があるニャ」

「「「「ニャー(^▽^)!」」」」

 後ろでミカさんが笑ってる、どうやらミカさんの仕業。 

「あたし……なってあげてもいい。助けられるだけじゃ地球人として恥ずかしいことだと思う」

 樟葉が真っ直ぐに顔をあげた。顔は真っ赤っかだったけどな(#^o^#)。

「このピレウスへの遠征で、いろんなことを経験して仲間をかけがえのないものだと思えるようになった。それって、広げて考えたら、人類みんなを大切な仲間と思うことと同じ。だから、あたしは残ってもいい」

「オ、オレも残ってもいいです(#'∀'#)。地球じゃ何の役にもたたない引きこもりだけど、こんなことで役に立つんなら、オレは喜んで残ります!」

「トシ、お前が残ったら宇宙規模の引きこもりになっちまわないか(^_^;)」

「艦長!」

「……すまん、茶化す話じゃないな(-_-;)」

「でもさ、アダムとイブになるってことは、その……夫婦になって、子供を作るってことなんだよ。一時の感情で決めていいことじゃないよ」

「ジェーン、焚きつけてんだか、思いとどまらせてんだか……」

 樟葉に先を越された天音がジェーンを睨む。

「も、もちろん他の意見も聞かなきゃならないけど」

「あたしは……」

「待っで!」

 レイマ姫が遮った。

「トス君は使えね」

「こ、答えるのは、まず樟葉さんでしょ!!」

 トシは珍しく色を成した。

「トス君は……クローンなんだ。クローンには生殖能力がねんだ……」

「エ……オ、オレ、クローン!?」

「ダルの虚無宇宙域で三笠のエネルギー無ぐなったどぎ、なんどは救命カプセルで20年冬眠すでいだんだ。で、トス君のカプセルは具合わりぐで、トス君は死んでまったんだ。で、三笠の船霊のミカさんが、残ってあったDNAで再生すたのが今のトス君なんだ。こぃについでの記憶はアクアリンドのクリスタルの力で封印すてあったのだす」

「そ、そんな……オレがクローン……そんなバカな! そんなの信じられねえ!」

 普段は大人しいトシだが、そう叫んだあと、トシは三笠を飛び出してしまった。

「トシ、待て!」

 いつもならトシに後れを取るような俺じゃなかったが、トシを見つけることはできなかった……。



☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

日露戦争の真実

蔵屋
歴史・時代
 私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。 日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。  日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。  帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。  日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。 ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。  ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。  深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。  この物語の始まりです。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』 この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。 作家 蔵屋日唱

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...