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013:ギルドマスター ハンス・バウマン
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
013:ギルドマスター ハンス・バウマン
突き当り『ギルドマスター』と表記のあるドアをノックする。
『おお、入れ』
低い声で応えがあって「失礼します」と応えて、ヒルデが『ん?』という顔をする。
つい会社の癖が出たんだ、上司の部屋に入る時、得意先の事務所を訪ねる時は「失礼します」だからな。いや、ギルマスは上司でも得意先でもないんだけどな(^_^;)。
「おお、なたたたちでしたか、どうぞ、そちらにお掛けください」
ソファーを示しながら名刺を出すギルマス。条件反射で懐をまさぐるが名刺が入っているはずもない。
「申しわけありません、名刺を切らせ……あ、いや」
またしても条件反射の慣用句(^_^;)。
「アハハ、勇者で名刺を持っている人はいませんよ」
「あ、いや……勇者のスズキ・スグルと申します。こちら戦乙女のブリュンヒルデです」
「ブリュンヒルデだ、よろしく頼むぞ」
あ、なんか横柄。
「ギルドマスターのハンス・バウマンです。昨夜は、城外の魔物襲撃に立ち向かっていただきありがとうございました」
「あ、どうも」
「つきましては、些少ですが報奨金が出ておりますので、これをお納めください」
「報奨金?」
「はい、ギルドに未登録ですので、正規の半分しか出せませんが……それと、昨夜のお働きを鑑み、スグル様はレベルDに、ブリュンヒルデ様はCに認定させていただきます」
おお、一級上がった!
「失礼します、お茶をお持ちいたしました」
「ああ、ありがとう」
ギルマスが鷹揚に返答すると、事務員……いや、コスが受付の子とは違ってメイド服。襟もカフスもピシッとしていて、好印象。営業に回って事務員の制服が不潔だったりだらしなかったりすると、印象悪い。
巨大と言うほどではないが、大きなギルドだ、フロアーと奥の境目は施錠されていたし、仕事場としてのギルドとギルマス個人の事務所は区別をつけているのかもしれない。
いや、待て。地方に行くと、稀に地主が発展して、そういう事業形態をとっているところがある。日本は、戦後、農地改革でほとんどの地主は解体されたが、中国地方や関東の奥では山林地主が残っていて、社長のことを『旦那様』とか『御当主様』と呼ぶような所も残っている。
いや、待て。このご時世だから、単なるメイド趣味という線もある。そういう時は大真面目に対応するよりも、少し緩めに「コスの仕立てに熱が入っていますなあ」とか「既製品ではこうはいきません」とか、同調的に……。
いや、待て。そもそもオレはギルドの客だ。出入りの業者じゃない。なんで、そこまで考える!?
メイドがトレーからお茶を置く十数秒の間にそれだけのことを考えてしまう。
そういうのに疲れて、今日は大阪行きをブッチしてアキバに行ったんだった。
「お二人は、この先、北を目指して魔王退治を目指されるのですね?」
「あ、はい。魔王を倒して、この地上に永遠の平和を打ち立てたいと思っています」
「それは頼もしい。魔王は、この北の先の先、ノルデンラント、ほとんど前人未踏の地に居ると言われています……その地に至るには……」
ギルマスは、親切なことに、このズィッヒャーブルグからノルデンラントに至る地理や文化、街や村、出てくるであろう魔物や土地の問題を教えてくれる。
「と、地理の大よそはそうなのですが……」
今度は、その地方で出てきそうな魔物や困難なことについて話が始まる。
「わたしと、その仲間はし残してしまったのですが……」
どうやら、ギルマス自身、昔は冒険者。それも勇者の称号を持っていたようで、実戦に則したアドバイス。
「と言って、戦闘や厳しいことばかりでは無くて……」
地方地方のお楽しみなことや、土地柄や地方の気風、人情に付いても……経験豊かで博識なのは分かったが、窓からの日差しが傾いて、時計の短信がほとんど真下を向き始めて、ちょっとオカシイと感じた。
ヒルデは、セーラー服のリボンを戦がせることもなく、まるで制服を着せたマネキンのようにジッと聞いていたが、ギルマスが冷めたお茶に手を伸ばした隙に切り出した。
「バウマン殿、そろそろ本題に入ってはどうだ。話はおもしろいが、それは、この冒険者の手引きに書かれている内容と変わらんのではないか?」
え、いつ読んだんだ?
「わたしは、オートリーディングのスキルがある。手を伸ばして届く範囲の書類や書物は読まなくても分かるぞ」
「あ、そうでしたか……」
「それに、そのメイドは、どうしてずっとそこに立っているのだ。給仕のことなら、ティーカップを置いた時点で完了であろうが」
え……初めて気づいた。
俺は、この三時間余り、ぜんぜん、このメイドのことが意識に上らなかった。
メイドについての関心は話題の種を拾うために、仕立てのいいメイド服が目に入ったところで切れている。
「失礼いたしました……実は、お二人に申し上げたいのは、このメイドのことなのです」
え……?
オレもヒルデも意外の声が出てしまい。改めて、メイドの顔を見てしまう。
メイドは、あらためてこちらに正対して頭を下げ、再び上げた時、思わず息を呑んでしまった!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・秀の友人たち アキ 田中
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
013:ギルドマスター ハンス・バウマン
突き当り『ギルドマスター』と表記のあるドアをノックする。
『おお、入れ』
低い声で応えがあって「失礼します」と応えて、ヒルデが『ん?』という顔をする。
つい会社の癖が出たんだ、上司の部屋に入る時、得意先の事務所を訪ねる時は「失礼します」だからな。いや、ギルマスは上司でも得意先でもないんだけどな(^_^;)。
「おお、なたたたちでしたか、どうぞ、そちらにお掛けください」
ソファーを示しながら名刺を出すギルマス。条件反射で懐をまさぐるが名刺が入っているはずもない。
「申しわけありません、名刺を切らせ……あ、いや」
またしても条件反射の慣用句(^_^;)。
「アハハ、勇者で名刺を持っている人はいませんよ」
「あ、いや……勇者のスズキ・スグルと申します。こちら戦乙女のブリュンヒルデです」
「ブリュンヒルデだ、よろしく頼むぞ」
あ、なんか横柄。
「ギルドマスターのハンス・バウマンです。昨夜は、城外の魔物襲撃に立ち向かっていただきありがとうございました」
「あ、どうも」
「つきましては、些少ですが報奨金が出ておりますので、これをお納めください」
「報奨金?」
「はい、ギルドに未登録ですので、正規の半分しか出せませんが……それと、昨夜のお働きを鑑み、スグル様はレベルDに、ブリュンヒルデ様はCに認定させていただきます」
おお、一級上がった!
「失礼します、お茶をお持ちいたしました」
「ああ、ありがとう」
ギルマスが鷹揚に返答すると、事務員……いや、コスが受付の子とは違ってメイド服。襟もカフスもピシッとしていて、好印象。営業に回って事務員の制服が不潔だったりだらしなかったりすると、印象悪い。
巨大と言うほどではないが、大きなギルドだ、フロアーと奥の境目は施錠されていたし、仕事場としてのギルドとギルマス個人の事務所は区別をつけているのかもしれない。
いや、待て。地方に行くと、稀に地主が発展して、そういう事業形態をとっているところがある。日本は、戦後、農地改革でほとんどの地主は解体されたが、中国地方や関東の奥では山林地主が残っていて、社長のことを『旦那様』とか『御当主様』と呼ぶような所も残っている。
いや、待て。このご時世だから、単なるメイド趣味という線もある。そういう時は大真面目に対応するよりも、少し緩めに「コスの仕立てに熱が入っていますなあ」とか「既製品ではこうはいきません」とか、同調的に……。
いや、待て。そもそもオレはギルドの客だ。出入りの業者じゃない。なんで、そこまで考える!?
メイドがトレーからお茶を置く十数秒の間にそれだけのことを考えてしまう。
そういうのに疲れて、今日は大阪行きをブッチしてアキバに行ったんだった。
「お二人は、この先、北を目指して魔王退治を目指されるのですね?」
「あ、はい。魔王を倒して、この地上に永遠の平和を打ち立てたいと思っています」
「それは頼もしい。魔王は、この北の先の先、ノルデンラント、ほとんど前人未踏の地に居ると言われています……その地に至るには……」
ギルマスは、親切なことに、このズィッヒャーブルグからノルデンラントに至る地理や文化、街や村、出てくるであろう魔物や土地の問題を教えてくれる。
「と、地理の大よそはそうなのですが……」
今度は、その地方で出てきそうな魔物や困難なことについて話が始まる。
「わたしと、その仲間はし残してしまったのですが……」
どうやら、ギルマス自身、昔は冒険者。それも勇者の称号を持っていたようで、実戦に則したアドバイス。
「と言って、戦闘や厳しいことばかりでは無くて……」
地方地方のお楽しみなことや、土地柄や地方の気風、人情に付いても……経験豊かで博識なのは分かったが、窓からの日差しが傾いて、時計の短信がほとんど真下を向き始めて、ちょっとオカシイと感じた。
ヒルデは、セーラー服のリボンを戦がせることもなく、まるで制服を着せたマネキンのようにジッと聞いていたが、ギルマスが冷めたお茶に手を伸ばした隙に切り出した。
「バウマン殿、そろそろ本題に入ってはどうだ。話はおもしろいが、それは、この冒険者の手引きに書かれている内容と変わらんのではないか?」
え、いつ読んだんだ?
「わたしは、オートリーディングのスキルがある。手を伸ばして届く範囲の書類や書物は読まなくても分かるぞ」
「あ、そうでしたか……」
「それに、そのメイドは、どうしてずっとそこに立っているのだ。給仕のことなら、ティーカップを置いた時点で完了であろうが」
え……初めて気づいた。
俺は、この三時間余り、ぜんぜん、このメイドのことが意識に上らなかった。
メイドについての関心は話題の種を拾うために、仕立てのいいメイド服が目に入ったところで切れている。
「失礼いたしました……実は、お二人に申し上げたいのは、このメイドのことなのです」
え……?
オレもヒルデも意外の声が出てしまい。改めて、メイドの顔を見てしまう。
メイドは、あらためてこちらに正対して頭を下げ、再び上げた時、思わず息を呑んでしまった!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・秀の友人たち アキ 田中
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
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