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015:ズィッヒャーブルグ北広場
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
015:ズィッヒャーブルグ北広場
ギルドを出て、まずは装備を整えに行く。
ズィッヒャーブルグは中央に領主の城があって、それを囲むように南北に広場がある。装備屋やアイテム屋は、表通りにもあるんだが値段が高く、ポーションや回復薬などはパック詰めやグロス単位がほとんどで、小規模パーティーには不向きだ。
どうせ北門から出発することになるので、南広場は様子を見るだけにして、城を右手に見ながら北の広場に向かう。
「無駄に豪勢だなあ」
城は、堀と城壁に囲まれ、色とフォルムはシンデレラ城だが、規模と重厚さは皇居の東御苑、つまり江戸城の本丸ほどもある。
堀も外周の堀とは違って清潔で、白鳥が泳いでいたりして、注意書きは無くても排泄物を捨てるような者は居ない。
市民も訪問者も、街の中に入れば、自ずと中の秩序に従うようになるみたいだ。
「スグルは、こういうのが好きなのか」
「ああ、そうだ」
仕事だからこそ、月の半分は出張という生活を送っているけど、将来は、世田谷あたりの街で年金生活ができればと思っている。
「逆立ちした方がよさそうだぞ」
「逆立ち?」
意味不な言い回しにエマも斜め後ろかで首をかしげる。
「スグルは29才、逆立ちすれば92才だ」
プ( ´艸`)。
エマが可愛く噴き出す。
「…………(-_-;)」
「……なんだ、突っかかってこないのか?」
「つまらんギャグだからだ」
「ほう、エマ、おまえはつまらんことで笑うと、ご主人さまは言っているぞ」
「待て、そういう意味じゃない」
「エマ、この城の宮殿は収納できるか?」
「はい……主殿がギリギリというところです」
「おい、まさか?」
「ハハ、ただの話題だ、おお、広場が見えて来たぞ」
もう昼を回っているというのに、これから出発しようというパーティーがあちこちの露天で買い物をしている。
「食材と、回復系のアイテムを見てはいかがですか?」
「そうだな、調理器具も一通りは揃えた方がいいだろう。それと地図もいくつかな」
『らっしゃいらっしゃいぃ!』『アイテムのバラ売りするよぉ!』『メーカー品が半額だよぉ!』『安いよ安いよぉ!』『買ってけ買ってけ!』
コ▢ナ明けに足を運んだ世田谷ボロ市を偲ばせる賑わいだ。
「いろいろ混ざっています、安いものは消費期限を見た方がよろしゅうございます。試供品のあるものは試してからにいたしましょう……あ、あちらのお店……そっちのお店も……」
水を得た魚みたいに、オレたちを先導するエマ。若い女性がイキイキしているのはいいもんだ。
シュチエーションは違うけど、コスプレに目を輝かせているアキたちを思い出す。
「スグル様、テントを買いませんか。野宿をするにしても、テントの有る無しで疲れの取れ方が違いますよ」
装備屋の前で、三人用のテントを指さすエマ。
「ああ、それはいいなあ」
エマの指さしたもの以外に八人用の大きいのも買う。
「こんな大きなもの必要かぁ?」
「あ、ああ、どこで人を助けて必要になるか知れんだろが」
ほんとうは、ヒルデやエマと寝床を離したいからなんだが、それは言わない。
「まあ、スグル様は、そこまでお考えなのですね!」
「オヤジ、多少高くてもいいから魔法設営できるテントにしてくれ」
どんなテントでも魔法で張れるが、やはり的不的がある。長い旅になりそうだ、耐久消費財はいいものを買っておいた方がいい。
「簡易トイレも見ておいていいですか?」
「あ、それは必要ない」
「え、なぜでございますか?」
控え目だけど眉を曇らせる、やっぱり、あの排泄物処理は堪えているようだ。
「エマ、スグルはトイレ魔法が使えるんだ」
「トイレ魔法?」
「ああ、手入れも始末もいらん優れモノだ。心配はいらん」
「ああ、任せておけ」
「はい、承知しました!」
「あ、そんなに畏まらなくていいから(^_^;)」
「はい、でも、ご主人様ですから」
ウ……(*゜д゜*)
ご主人様……メイド喫茶でしか言われたこと無いが、リアルメイドに言われるとけっこうな破壊力だ。
オヤジとエマがやり取りの間、広場を見渡す。
南よりもガサツだが、生き生きしている。モノを売る以外に、代書屋やら飛脚屋、本屋に見世物小屋まであるが、奴隷商いの店は無い。風俗同様、裏に周ればあるのかもしれないが、表に出ていない分だけ健全と言えるのかもしれない。
本屋に行ってみようと、MPを少し使って読解スキルを習得……本屋の前まで来ると、けっこうな人だかり。意外とこの街は文化レベルが高いのか? しかし、混雑しているところは——ちょっと待て——になって、隣りの見世物小屋は、なぜか休館。際物なんだろうが、看板を見ると討伐旅行の名所や名勝負を見せるようだ。
「なかなか面白いぜ、史実に忠実だしな」と本屋から出て来たニイチャンが頼まぬ解説をしてくれる。ポスターを見ると、派手ではあるが、ほぼほぼニイチャンの言う通りのようだ。
それから、エマとヒルデと合流。追加のあれこれ買って、いよいよ北門に向かう。
「なんだ、高札が立っているぞ」
ヒルデが示した高札を見ると、難儀なことが書かれている。
——ズィッヒャー川から北は危険レベルが上がっているため、ズィッヒャー川以北に向かうパーティーは、三人に一人の割合でレベルB以上の戦闘スキル、または魔法スキルを持っている者で構成されていること。レベルに満たない者は出門を禁ずる。ズィッヒャーブルク遠征局長官 フランツ・ミューラー ——
ググ……これは困った。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・秀の友人たち アキ 田中
015:ズィッヒャーブルグ北広場
ギルドを出て、まずは装備を整えに行く。
ズィッヒャーブルグは中央に領主の城があって、それを囲むように南北に広場がある。装備屋やアイテム屋は、表通りにもあるんだが値段が高く、ポーションや回復薬などはパック詰めやグロス単位がほとんどで、小規模パーティーには不向きだ。
どうせ北門から出発することになるので、南広場は様子を見るだけにして、城を右手に見ながら北の広場に向かう。
「無駄に豪勢だなあ」
城は、堀と城壁に囲まれ、色とフォルムはシンデレラ城だが、規模と重厚さは皇居の東御苑、つまり江戸城の本丸ほどもある。
堀も外周の堀とは違って清潔で、白鳥が泳いでいたりして、注意書きは無くても排泄物を捨てるような者は居ない。
市民も訪問者も、街の中に入れば、自ずと中の秩序に従うようになるみたいだ。
「スグルは、こういうのが好きなのか」
「ああ、そうだ」
仕事だからこそ、月の半分は出張という生活を送っているけど、将来は、世田谷あたりの街で年金生活ができればと思っている。
「逆立ちした方がよさそうだぞ」
「逆立ち?」
意味不な言い回しにエマも斜め後ろかで首をかしげる。
「スグルは29才、逆立ちすれば92才だ」
プ( ´艸`)。
エマが可愛く噴き出す。
「…………(-_-;)」
「……なんだ、突っかかってこないのか?」
「つまらんギャグだからだ」
「ほう、エマ、おまえはつまらんことで笑うと、ご主人さまは言っているぞ」
「待て、そういう意味じゃない」
「エマ、この城の宮殿は収納できるか?」
「はい……主殿がギリギリというところです」
「おい、まさか?」
「ハハ、ただの話題だ、おお、広場が見えて来たぞ」
もう昼を回っているというのに、これから出発しようというパーティーがあちこちの露天で買い物をしている。
「食材と、回復系のアイテムを見てはいかがですか?」
「そうだな、調理器具も一通りは揃えた方がいいだろう。それと地図もいくつかな」
『らっしゃいらっしゃいぃ!』『アイテムのバラ売りするよぉ!』『メーカー品が半額だよぉ!』『安いよ安いよぉ!』『買ってけ買ってけ!』
コ▢ナ明けに足を運んだ世田谷ボロ市を偲ばせる賑わいだ。
「いろいろ混ざっています、安いものは消費期限を見た方がよろしゅうございます。試供品のあるものは試してからにいたしましょう……あ、あちらのお店……そっちのお店も……」
水を得た魚みたいに、オレたちを先導するエマ。若い女性がイキイキしているのはいいもんだ。
シュチエーションは違うけど、コスプレに目を輝かせているアキたちを思い出す。
「スグル様、テントを買いませんか。野宿をするにしても、テントの有る無しで疲れの取れ方が違いますよ」
装備屋の前で、三人用のテントを指さすエマ。
「ああ、それはいいなあ」
エマの指さしたもの以外に八人用の大きいのも買う。
「こんな大きなもの必要かぁ?」
「あ、ああ、どこで人を助けて必要になるか知れんだろが」
ほんとうは、ヒルデやエマと寝床を離したいからなんだが、それは言わない。
「まあ、スグル様は、そこまでお考えなのですね!」
「オヤジ、多少高くてもいいから魔法設営できるテントにしてくれ」
どんなテントでも魔法で張れるが、やはり的不的がある。長い旅になりそうだ、耐久消費財はいいものを買っておいた方がいい。
「簡易トイレも見ておいていいですか?」
「あ、それは必要ない」
「え、なぜでございますか?」
控え目だけど眉を曇らせる、やっぱり、あの排泄物処理は堪えているようだ。
「エマ、スグルはトイレ魔法が使えるんだ」
「トイレ魔法?」
「ああ、手入れも始末もいらん優れモノだ。心配はいらん」
「ああ、任せておけ」
「はい、承知しました!」
「あ、そんなに畏まらなくていいから(^_^;)」
「はい、でも、ご主人様ですから」
ウ……(*゜д゜*)
ご主人様……メイド喫茶でしか言われたこと無いが、リアルメイドに言われるとけっこうな破壊力だ。
オヤジとエマがやり取りの間、広場を見渡す。
南よりもガサツだが、生き生きしている。モノを売る以外に、代書屋やら飛脚屋、本屋に見世物小屋まであるが、奴隷商いの店は無い。風俗同様、裏に周ればあるのかもしれないが、表に出ていない分だけ健全と言えるのかもしれない。
本屋に行ってみようと、MPを少し使って読解スキルを習得……本屋の前まで来ると、けっこうな人だかり。意外とこの街は文化レベルが高いのか? しかし、混雑しているところは——ちょっと待て——になって、隣りの見世物小屋は、なぜか休館。際物なんだろうが、看板を見ると討伐旅行の名所や名勝負を見せるようだ。
「なかなか面白いぜ、史実に忠実だしな」と本屋から出て来たニイチャンが頼まぬ解説をしてくれる。ポスターを見ると、派手ではあるが、ほぼほぼニイチャンの言う通りのようだ。
それから、エマとヒルデと合流。追加のあれこれ買って、いよいよ北門に向かう。
「なんだ、高札が立っているぞ」
ヒルデが示した高札を見ると、難儀なことが書かれている。
——ズィッヒャー川から北は危険レベルが上がっているため、ズィッヒャー川以北に向かうパーティーは、三人に一人の割合でレベルB以上の戦闘スキル、または魔法スキルを持っている者で構成されていること。レベルに満たない者は出門を禁ずる。ズィッヒャーブルク遠征局長官 フランツ・ミューラー ——
ググ……これは困った。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・秀の友人たち アキ 田中
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