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019:エアストドルフ 第78回魔王討伐フェスト
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
019:エアストドルフ 第78回魔王討伐フェスト
Erst Durf……年代物の標識にはそう書かれている。
ドルフと付いているのだから村だろうと思ったら、そこそこの町だ。
「Erst Durf(エアストドルフ)、第一の村という意味でございますね」
「このあたりで一番の 村なのか?」
「入ればわかるだろう」
看板と町の様子を見比べる二人を置いて、サッサと町に入っていくヒルデ。
町は城壁未満柵以上という塀で囲まれた万博会場ほどの広さ。中心には教会や広場もあって、そこそこの賑わいがあるように見える。
ここまでは二泊三日の行程だった。
途中、何十組かのパーティーに追い越された。みんな微妙に急いでいた。
関わるのも面倒なので、ほとんど追い越されるままに来たが、町に入って理由が分かった。
——エアストドルフ 第78回魔王討伐フェスト——
「おお……」「賑わっておりますねえ」「フフ、考えたものだなあ」
広場の手前の酒場、その二階バルコニー席から広場のフェスト会場を見下ろす。
下戸のオレはジンジャエールだが、ヒルデとエマはビールや酎ハイ。
異世界は飲み物や食い物が独特の名前だったりするのだが、この世界は、大方のものが俺の世界と同じなので助かる。
『エアストドルフ第78回魔王討伐フェストにご参加の皆さん。ただいまより討伐を開始いたします!』
広場のスピーカーが宣言して声の主を捜す。
広場には1000人を超える冒険者と、それと同じくらいの野次馬が集まってすぐには分からなかったが、エマが指し示してくれて分かった。人混みの真ん中で肩車されている爺さんが目に入った。肩から『村長』のタスキをかけている。
『町中、いや村中に出現いたします魔物を退治しながら、村の北側に出ていただきます。そこにラスボスのドラゴンと戦っていただきます。ソロで戦うか、パーティーを組んで戦うかはみなさんの自由です。胸の判定バッジをご確認ください。バッジには五つから十個の星が付いております。魔物の攻撃がヒットするたびに星が一つ赤く灯ります。全て赤になりますと死亡判定になってゲームオーバーになります。魔物を倒すと、青く灯り、最低五つ青になりますと、ラスボス魔王との戦いの参加資格が得られます。入賞者、優勝者には豪華景品をご用意しておりますので、最後まで冒険者魂を発揮して挑戦してください!』
町長、いや村長が宣言すると、村長を肩車している、首に『助役』の名札のオバサンが補足する。
『広場には大小八つの道が集まっています。どちらに進んでいただいても構いませんが、最後は北門に集まってください。それ以外におられますと、成績確認ができなくなってしまいますので、よろしくお願いします。では、よーーーい……』
ドン!
ウォォォォォ!!
スタートピストルが鳴って、1000人はいるだろう冒険者たちが雄たけびを上げて四方に散った。
「考えたな」
「そうでございますねえ、たいていの人が星十個の設定しているようです」
「そうだな。五つまでは無料だけど、それ以上は星一個100ギル(1000円)、一人5個で500ギル、1000人で50万ギル。そこそこの収入じゃないか」
「どうだろ、これだけのイベント、人件費や運営費をさっぴくとそれほどでもないような気がする」
「そうなのか?」
「ああ、あちこちにスタッフがいるだろ。ボランティアも居るんだろうが、バイトも居るだろう。人件費やら弁当代、あの胸のゼッケンや星の得点の仕掛け、広告宣伝費も入れたら一割残るかどうか」
「スグル様、ポスターの下に広告が入っているようでございますよ」
「ほんとうだ、これならペイするんじゃないのか?」
「いや、スペースが小さいから、それほどじゃないだろう。せいぜい印刷代の三割といったところだ。村の主催のようだから、施設利用料なんかはかからないだろうけど、村の職員を使っていたら残業手当とか特別手当とか……ほら、広場の隅に仮設トイレを置いているから、そのレンタル料もあるだろうしな……」
「フフ、スグルが参入していれば臨時収入だったな」
「アハハ、まあね」
「スグル様、元の世界では企業の経営者とかだったのですか?」
「アハ、ただのフリーターさ」
「フリッター? 揚げ物でございますか?」
「そんな美味しそうなもんじゃないよ」
「フフ、冒険者の一種だな」
「グ……(-_-;)」
ヒルデは、時どき令和の日本に避難しに来ていた。けっこうあっちのことを知っているのかもしれないけど、藪蛇になってはいけないので切り替える。
「エマ、またカメラを飛ばしてくれないか?」
「はい、構いませんが、魔物と間違われませんでしょうか」
「ちょっと待ってね……」
スキルを探る。
「ああ、ステルス魔法がある。レベルは高くないけど、カメラ程度なら問題ないだろう」
エマのカメラにステルスをかけて、三人で護の退治のイベントを観ることにした。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中
019:エアストドルフ 第78回魔王討伐フェスト
Erst Durf……年代物の標識にはそう書かれている。
ドルフと付いているのだから村だろうと思ったら、そこそこの町だ。
「Erst Durf(エアストドルフ)、第一の村という意味でございますね」
「このあたりで一番の 村なのか?」
「入ればわかるだろう」
看板と町の様子を見比べる二人を置いて、サッサと町に入っていくヒルデ。
町は城壁未満柵以上という塀で囲まれた万博会場ほどの広さ。中心には教会や広場もあって、そこそこの賑わいがあるように見える。
ここまでは二泊三日の行程だった。
途中、何十組かのパーティーに追い越された。みんな微妙に急いでいた。
関わるのも面倒なので、ほとんど追い越されるままに来たが、町に入って理由が分かった。
——エアストドルフ 第78回魔王討伐フェスト——
「おお……」「賑わっておりますねえ」「フフ、考えたものだなあ」
広場の手前の酒場、その二階バルコニー席から広場のフェスト会場を見下ろす。
下戸のオレはジンジャエールだが、ヒルデとエマはビールや酎ハイ。
異世界は飲み物や食い物が独特の名前だったりするのだが、この世界は、大方のものが俺の世界と同じなので助かる。
『エアストドルフ第78回魔王討伐フェストにご参加の皆さん。ただいまより討伐を開始いたします!』
広場のスピーカーが宣言して声の主を捜す。
広場には1000人を超える冒険者と、それと同じくらいの野次馬が集まってすぐには分からなかったが、エマが指し示してくれて分かった。人混みの真ん中で肩車されている爺さんが目に入った。肩から『村長』のタスキをかけている。
『町中、いや村中に出現いたします魔物を退治しながら、村の北側に出ていただきます。そこにラスボスのドラゴンと戦っていただきます。ソロで戦うか、パーティーを組んで戦うかはみなさんの自由です。胸の判定バッジをご確認ください。バッジには五つから十個の星が付いております。魔物の攻撃がヒットするたびに星が一つ赤く灯ります。全て赤になりますと死亡判定になってゲームオーバーになります。魔物を倒すと、青く灯り、最低五つ青になりますと、ラスボス魔王との戦いの参加資格が得られます。入賞者、優勝者には豪華景品をご用意しておりますので、最後まで冒険者魂を発揮して挑戦してください!』
町長、いや村長が宣言すると、村長を肩車している、首に『助役』の名札のオバサンが補足する。
『広場には大小八つの道が集まっています。どちらに進んでいただいても構いませんが、最後は北門に集まってください。それ以外におられますと、成績確認ができなくなってしまいますので、よろしくお願いします。では、よーーーい……』
ドン!
ウォォォォォ!!
スタートピストルが鳴って、1000人はいるだろう冒険者たちが雄たけびを上げて四方に散った。
「考えたな」
「そうでございますねえ、たいていの人が星十個の設定しているようです」
「そうだな。五つまでは無料だけど、それ以上は星一個100ギル(1000円)、一人5個で500ギル、1000人で50万ギル。そこそこの収入じゃないか」
「どうだろ、これだけのイベント、人件費や運営費をさっぴくとそれほどでもないような気がする」
「そうなのか?」
「ああ、あちこちにスタッフがいるだろ。ボランティアも居るんだろうが、バイトも居るだろう。人件費やら弁当代、あの胸のゼッケンや星の得点の仕掛け、広告宣伝費も入れたら一割残るかどうか」
「スグル様、ポスターの下に広告が入っているようでございますよ」
「ほんとうだ、これならペイするんじゃないのか?」
「いや、スペースが小さいから、それほどじゃないだろう。せいぜい印刷代の三割といったところだ。村の主催のようだから、施設利用料なんかはかからないだろうけど、村の職員を使っていたら残業手当とか特別手当とか……ほら、広場の隅に仮設トイレを置いているから、そのレンタル料もあるだろうしな……」
「フフ、スグルが参入していれば臨時収入だったな」
「アハハ、まあね」
「スグル様、元の世界では企業の経営者とかだったのですか?」
「アハ、ただのフリーターさ」
「フリッター? 揚げ物でございますか?」
「そんな美味しそうなもんじゃないよ」
「フフ、冒険者の一種だな」
「グ……(-_-;)」
ヒルデは、時どき令和の日本に避難しに来ていた。けっこうあっちのことを知っているのかもしれないけど、藪蛇になってはいけないので切り替える。
「エマ、またカメラを飛ばしてくれないか?」
「はい、構いませんが、魔物と間違われませんでしょうか」
「ちょっと待ってね……」
スキルを探る。
「ああ、ステルス魔法がある。レベルは高くないけど、カメラ程度なら問題ないだろう」
エマのカメラにステルスをかけて、三人で護の退治のイベントを観ることにした。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中
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