待ての勇者と急ぎの姫騎士

武者走走九郎or大橋むつお

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020:エアストドルフ 予選通過は13組

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待ての勇者と急ぎの姫騎士

020:エアストドルフ 予選通過は13組




 カメラは村のあちこちに飛んで模擬討伐の様子を写してくれる。

 スライム、ゴブリン、グール、ドラゴン、ヴァンパイア、オーク、リザードマン、ゴーレム、コカトリス、マンティアコア、ワイバーン、リビングデッド、クラーケン、グリフォン、ミノタウロス……

 いやはや、異世界系ラノベの『この物語に出てくる魔物一覧』みたいに盛りだくさんの魔物が、なんの脈絡も無く出現して、冒険者達に襲いかかる。

「こういうのは、スライムとかゴブリンとかから始まるんじゃないのか?」

 ラスボスほどではないが、エリアボスや中ボス程度の魔物が突然現れて、あっという間に全滅というパーティーもチラホラ。イベントとしては、ちょっとフェアじゃない気がする。

「東の方を見てみろ」「東?」「三カメでございます」

 ヒルデが指差してエマが教えてくれるカメラに同期する。

「おお、ここは……」

 セオリー通りにスライムとゴブリンとの戦闘があって、その向こうではゴブリンキングが——次はこっちだぞ!——と棍棒を振って手招きしている。

「初級者用のコースなのですねえ、最初から示してはいませんが、戦っているうちに気が付いたパーティーは、自然とこのコースに来るのでございましょうねえ」

「……しかし、落とし穴でもあるようだぞ」

「なんでだ、冷静で観察眼のあるパーティーなら、このコース一択だろう?」

「カメラを引いて俯瞰して見ろ」

「うん?」

「なんでございましょう…………あ?」

「エマは気づいたようだな」

「はい、順当に周れば、東から南、それから西から北へと大回りになってしまうようでございます」

「そうだ、手堅くはあるが、時間と手間がかかる。考えているなあ」

「あ、子どもたちが……フフ、ポーションを売っています(^_^;)」

「あ、ほんとだ」

 路地に隠れたり、家の窓をこっそり開けたりして自家製ポーションを売っている。

「ケアル程度だなあ、一つで100。ゴブリンのクリティカル一撃分を回復できる程度だ」

「でも、その分多く飲めば効果があるんじゃないのか?」

「フフ、そうはいかないようでございますよ」

「ううん?」

「ほら、あそこでございます」

「あ、ああ……」

 ポーションは95%が水分。ポーション一本は100CCほどだが、10本20本となると、けっこうな水分量になる。

「あちこちの家でトイレを貸しているようでございます」

「フフ、使用料をとっているようだぞ、スグル」

「フフ、儲けそこないましたねえ……」

 ヒルデとエマ、タイプはまるで違うが、根本のところでは通じ合うものがあるのかもしれない(^_^;)。


 40分もすると、運と要領のいいパーティーが北門に集まり始め、90分後には13組が勝ち残って予選が終わった。


『おめでとうございます! 13組のみなさんが、生き残り、めでたくラスボス挑戦権を獲得なさいました。これより、最終戦を行う仕儀とあいなりますが……13組であります……いささか数字が不穏であります。そこで、もう一組、参加料10000ギルの特別枠で参加者を募り、都合14組にて、最終戦を執り行います。希望する個人やパーティーがございましたら手をお上げくださいませ! 参加登録されていない方でもけっこうです、我と思わん冒険者は手をお上げください!』

 ウォォォォォ!

「うまいやり方だな」

 瞬くうちに十組以上が手を挙げた。

「おお、かほどの勇者が名乗りを上げられるとは! 村長、心より感服いたしました!」

 ゴニョゴニョ……助役のオバサンが耳打ち。

「それでは、オークションといたします。15000!」

 オオオ!

 五組に減った。

「18000!」

 四組。

「20000!」

 三組。

「21000!」

 二組。

「では、一気に25000!」

 一組。

「300000で引き受けるぞ!」

「「え!?」」

 ヒルデが名乗りを上げてしまった!




☆彡 主な登場人物

・鈴木 秀(すずきすぐる)    三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女
・エマ              バンシーのメイド
・女神              異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち          アキ 田中
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