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022:エアストドルフ ボス戦・2
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
022:エアストドルフ ボス戦・2
ング
ズザ!
三人目が脚一本残して呑み込まれた瞬間、最終組は全員飛び退った。
オレとヒルデは逆に踏み込みそうになったのを堪えて踏みとどまった。
ラスボスドラゴンとは言え生き物だ。生き物は飲み込む瞬間、防御も敏捷性も落ちる。モンスター退治のゲームで掴んだコツだ。ヒルデはリアルの戦いで会得したものなのだろう。この隙を狙って踏み込めば、一撃で倒せる。ドラゴンには逆鱗があって、それが嚥下の瞬間には見えてしまう。ただ、確実に逆鱗を粉砕しなければ、かえって猛り狂わせて手が付けられなくなる。
踏み込まなかったのは違和感を感じたからだ。
デルスウザーラという黒澤明が監督した映画がある。日ソ合同で作られた作品で、撮影全てがソ連で行われた。その作品の中で本物の虎が出てくるシーンがあるのだけど「この虎ではカメラは回せない」と黒沢は撮影を止めた。ソ連のスタッフが「なぜダメなんだ、本物の虎ですよ」と聞くと、「この虎は目が死んでる」と答えた。じっさい、その虎はサーカスかなにかから借りて来た虎で、見る者が見れば——大きな飼い猫——に過ぎない。
「フフ、スグルも感じたか」
「ああ」
「……?」
エマが不思議そうな目をするが、それには応えず「お先にどうぞ」と左に走った。
すると、いったん飛びのいたチャレンジャーたちが気を取り直してドラゴンに打ちかかっていく。
トオオ! セイ! オオ! 喰らえ! ビシ! ウオーー!! 小癪な! ズガ! させるか! ドビュ! ガオーー!! ゲシ! これでもか! カキーン! ゲシゲシ! グォオオ!! クソ! ドガガガ! ズビビビ!
さすが最終戦まで勝ち残った者たち、一瞬の怯みから立ち直ると、剣や槍やらの得物を構え、あるいはロッドに魔力を籠めて、火炎や電撃の魔法攻撃を始める。ドラゴンもその図体からは想像できない身軽さで立ち向かい、けっこうな迫力だ。
そして……
10分ほど過ぎると双方息が上がって、けが人も続出、ドラゴンもあちこち傷を負って空中で羽ばたいて威嚇してくるが、威勢の割には参っている様子に見える。
「では」「ああ」
セイ!
ヒルデと目配せしてジャンプすると左右からドラゴンに一撃を食らわせ、地上に墜としたところで思念通話。
——きさま、雇われのいかさまドラゴンであろう——
初手から容赦ないヒルデ。
——ギク(=◇=;) ——
——図星かよ(^_^;)——
——トドメはささん、次の一撃でやられたふりをして退散しろ——
——わ、分かった(-_-;)——
こいつ、人の言葉をつかいやがる。
「行くぞ!」「おお!」
ズガガガガーーーーーン!!
ギャオオオオオ~~~~~~ン(>〇<)!!
苦し気な悲鳴を上げて、ヨタヨタとドラゴンは北の空に逃げ飛んでいった。
最初に食われた三人はエマが蘇生魔法をかけたということで、蘇りの辻褄を合わせてやった。
「いやあ、面目ない、苦肉の策なんですよぉ(^▽^;)」
助役の肩から下りると、申しわけなさそうに村長は頭を掻いた。
「魔王討伐で大勢の若者が、この村を通って北の国へ行きました。むろん、この村からも何人もねえ……」
「それで(⩌□⩌)」
結論を聞く前からヒルデは手厳しい。
「大方は雰囲気とかムードに押されて、後先の考えも無く出発して、大方は帰ってきません」
「村長の息子と娘も行ったきりでねぇ……」
助役のオバサンが付け加える。
「しかし、この討伐ブームで村が潤っていることも事実でしてねえ」
「そうだな、もうドルフ(村)というよりはブルグ(町)と言っていい規模だ」
「それで、討伐隊を選別し、犠牲を減らすためにこういうフェストを行っている次第なのです」
ズィッヒャーブルグで見かけたコスプレの奴らを思い出した。あいつらなら、こういうイベントめいたことでも十分だろう。
「あのドラゴンはどうしたのでございますか(⩌︵⩌)?」
ペテンめいたドラゴンにエマは反感を持っているようだ。
「あれは、北から逃げて来たドラゴンでしてなあ、息子たちを捜しに行った時にライズゼニッヒ(Leichtsinn)山で見つけまして助けてやったものですじゃ」
「なるほどな……」
それ以上には言わず、ひとことありそうなエマを——言ってやるな——と目配せし、エマも賞金をもらうと機嫌を直した。
オレたちはライズゼニッヒ山を目指してエアストドルフを後にした。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中
022:エアストドルフ ボス戦・2
ング
ズザ!
三人目が脚一本残して呑み込まれた瞬間、最終組は全員飛び退った。
オレとヒルデは逆に踏み込みそうになったのを堪えて踏みとどまった。
ラスボスドラゴンとは言え生き物だ。生き物は飲み込む瞬間、防御も敏捷性も落ちる。モンスター退治のゲームで掴んだコツだ。ヒルデはリアルの戦いで会得したものなのだろう。この隙を狙って踏み込めば、一撃で倒せる。ドラゴンには逆鱗があって、それが嚥下の瞬間には見えてしまう。ただ、確実に逆鱗を粉砕しなければ、かえって猛り狂わせて手が付けられなくなる。
踏み込まなかったのは違和感を感じたからだ。
デルスウザーラという黒澤明が監督した映画がある。日ソ合同で作られた作品で、撮影全てがソ連で行われた。その作品の中で本物の虎が出てくるシーンがあるのだけど「この虎ではカメラは回せない」と黒沢は撮影を止めた。ソ連のスタッフが「なぜダメなんだ、本物の虎ですよ」と聞くと、「この虎は目が死んでる」と答えた。じっさい、その虎はサーカスかなにかから借りて来た虎で、見る者が見れば——大きな飼い猫——に過ぎない。
「フフ、スグルも感じたか」
「ああ」
「……?」
エマが不思議そうな目をするが、それには応えず「お先にどうぞ」と左に走った。
すると、いったん飛びのいたチャレンジャーたちが気を取り直してドラゴンに打ちかかっていく。
トオオ! セイ! オオ! 喰らえ! ビシ! ウオーー!! 小癪な! ズガ! させるか! ドビュ! ガオーー!! ゲシ! これでもか! カキーン! ゲシゲシ! グォオオ!! クソ! ドガガガ! ズビビビ!
さすが最終戦まで勝ち残った者たち、一瞬の怯みから立ち直ると、剣や槍やらの得物を構え、あるいはロッドに魔力を籠めて、火炎や電撃の魔法攻撃を始める。ドラゴンもその図体からは想像できない身軽さで立ち向かい、けっこうな迫力だ。
そして……
10分ほど過ぎると双方息が上がって、けが人も続出、ドラゴンもあちこち傷を負って空中で羽ばたいて威嚇してくるが、威勢の割には参っている様子に見える。
「では」「ああ」
セイ!
ヒルデと目配せしてジャンプすると左右からドラゴンに一撃を食らわせ、地上に墜としたところで思念通話。
——きさま、雇われのいかさまドラゴンであろう——
初手から容赦ないヒルデ。
——ギク(=◇=;) ——
——図星かよ(^_^;)——
——トドメはささん、次の一撃でやられたふりをして退散しろ——
——わ、分かった(-_-;)——
こいつ、人の言葉をつかいやがる。
「行くぞ!」「おお!」
ズガガガガーーーーーン!!
ギャオオオオオ~~~~~~ン(>〇<)!!
苦し気な悲鳴を上げて、ヨタヨタとドラゴンは北の空に逃げ飛んでいった。
最初に食われた三人はエマが蘇生魔法をかけたということで、蘇りの辻褄を合わせてやった。
「いやあ、面目ない、苦肉の策なんですよぉ(^▽^;)」
助役の肩から下りると、申しわけなさそうに村長は頭を掻いた。
「魔王討伐で大勢の若者が、この村を通って北の国へ行きました。むろん、この村からも何人もねえ……」
「それで(⩌□⩌)」
結論を聞く前からヒルデは手厳しい。
「大方は雰囲気とかムードに押されて、後先の考えも無く出発して、大方は帰ってきません」
「村長の息子と娘も行ったきりでねぇ……」
助役のオバサンが付け加える。
「しかし、この討伐ブームで村が潤っていることも事実でしてねえ」
「そうだな、もうドルフ(村)というよりはブルグ(町)と言っていい規模だ」
「それで、討伐隊を選別し、犠牲を減らすためにこういうフェストを行っている次第なのです」
ズィッヒャーブルグで見かけたコスプレの奴らを思い出した。あいつらなら、こういうイベントめいたことでも十分だろう。
「あのドラゴンはどうしたのでございますか(⩌︵⩌)?」
ペテンめいたドラゴンにエマは反感を持っているようだ。
「あれは、北から逃げて来たドラゴンでしてなあ、息子たちを捜しに行った時にライズゼニッヒ(Leichtsinn)山で見つけまして助けてやったものですじゃ」
「なるほどな……」
それ以上には言わず、ひとことありそうなエマを——言ってやるな——と目配せし、エマも賞金をもらうと機嫌を直した。
オレたちはライズゼニッヒ山を目指してエアストドルフを後にした。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
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