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115≪最後の七不思議・1≫
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新・ここは世田谷豪徳寺・18(さくら編)
115≪最後の七不思議・1≫
「起立、礼、着席」の声で気づいた。
いつもの米井さんの声じゃなくて、副委員長の加藤さんだ。
米井さんは休んだことが無い。まして今日は七不思議の最後を取材しなきゃならない日だ。こんな日になんの連絡もなしに休むわけがない。
あたしと米井さんは、夏休みにTデパートで佐伯君といっしょのところを見かけるまでは、ただのクラスメートだった。それがチェーンメールのことが問題になることによって、その容疑者と思われ、怖い顔で文句言われた。でも、それがきっかけで、その容疑が晴れると共に友達になっていったんだ。
それからは文化祭の『帝都の七不思議』を一緒に取り組むようになった。スマホ番号の交換もやり、恵里奈、マクサの次くらいの親友になりかけていた。
「米井さん、なんでお休みなんですか?」
「ご家庭の事情……としか言えないわ。ごめん」
朝礼終わって、担任の水野先生に聞いても要領を得ない。先生も詳しいことは分からないようだった。
水野先生は、普段は亜紀ちゃんと呼ばれている。歳が近いせいもあるけど、ウソを言うときには女子高生みたいに目線が逃げるので、非常に分かりやすい。その亜紀ちゃんの目線が逃げなかったので、本当に知らないのだろう。
想像力のたくましいあたしたちだけど、お父さんの会社の問題とかお父さんの浮気がバレて大変なことになってるとか、強盗が入って人質になり、学校にも「家庭事情」としか言えないとか、今思えば下衆の勘繰りみたいなことしか頭に浮かばなかった。
いかに普段から安物のラノベくらいしか読んでいないことが分かる。ちなみに強盗説はバレー部の恵里奈。こいつは吉本新喜劇の観すぎ。
―― 兄が亡くなりました。詳しくは後で。由美 ――
昼休みに、このメールが入ってきた。
米井由美は弟と二人姉弟だ。兄と言えば、この夏に双子の兄と分かった佐伯君しかいない……。
そうだ、佐伯君は不治の病で入院していて、七不思議の取材協力にも病院から来ていたんだ。
見かけは元気で乃木坂の制服着てるもんで、あたしたちは頭から抜けていた。帝都の女生徒らしい抜け方だ。昨日気まずいことがあっても、今日が楽しければ、そんな気まずさは忘れてしまうという長所でもあり、短所でもある。
「いまSセレモニー会館に兄といっしょにいます。明日は通夜で込み合うので、来てくれたら嬉しいです」
「え、亡くなった夜がお通夜とちゃうのん?」
恵里奈の素朴な質問にマクサが答えた。
「亡くなった夜は、故人と、ごく親しい者だけで過ごす、仮通夜ともいうの。いわゆるお通夜は本通夜と言って儀式だから、本音の話なんかできない。由美、きっとあたしたちに話があるのよ」
さすがにお茶の家元。洞察力が違う。
地下鉄を一回乗り換えて三つめの駅で降りる。
地上に出ると「Sセレモニー会館こちら」の看板が目に飛び込んでくる。ファミレスやパチンコのそれと違ってモノトーンの案内板は、地味だが、かえって目立つ。
会館に着くと「佐伯家控室」の白地に黒の案内が出ていた。
旅館の入り口みたいなところに『佐伯家』のぼんぼりがあった。
「失礼します」
あたしが代表で声をかける。
………………。
入ったところで畳の上に座ったけど、それ以上の声がかけられない。米井由美は兄の骸の前で俯いて、必死に悲しみに耐えていた……。
115≪最後の七不思議・1≫
「起立、礼、着席」の声で気づいた。
いつもの米井さんの声じゃなくて、副委員長の加藤さんだ。
米井さんは休んだことが無い。まして今日は七不思議の最後を取材しなきゃならない日だ。こんな日になんの連絡もなしに休むわけがない。
あたしと米井さんは、夏休みにTデパートで佐伯君といっしょのところを見かけるまでは、ただのクラスメートだった。それがチェーンメールのことが問題になることによって、その容疑者と思われ、怖い顔で文句言われた。でも、それがきっかけで、その容疑が晴れると共に友達になっていったんだ。
それからは文化祭の『帝都の七不思議』を一緒に取り組むようになった。スマホ番号の交換もやり、恵里奈、マクサの次くらいの親友になりかけていた。
「米井さん、なんでお休みなんですか?」
「ご家庭の事情……としか言えないわ。ごめん」
朝礼終わって、担任の水野先生に聞いても要領を得ない。先生も詳しいことは分からないようだった。
水野先生は、普段は亜紀ちゃんと呼ばれている。歳が近いせいもあるけど、ウソを言うときには女子高生みたいに目線が逃げるので、非常に分かりやすい。その亜紀ちゃんの目線が逃げなかったので、本当に知らないのだろう。
想像力のたくましいあたしたちだけど、お父さんの会社の問題とかお父さんの浮気がバレて大変なことになってるとか、強盗が入って人質になり、学校にも「家庭事情」としか言えないとか、今思えば下衆の勘繰りみたいなことしか頭に浮かばなかった。
いかに普段から安物のラノベくらいしか読んでいないことが分かる。ちなみに強盗説はバレー部の恵里奈。こいつは吉本新喜劇の観すぎ。
―― 兄が亡くなりました。詳しくは後で。由美 ――
昼休みに、このメールが入ってきた。
米井由美は弟と二人姉弟だ。兄と言えば、この夏に双子の兄と分かった佐伯君しかいない……。
そうだ、佐伯君は不治の病で入院していて、七不思議の取材協力にも病院から来ていたんだ。
見かけは元気で乃木坂の制服着てるもんで、あたしたちは頭から抜けていた。帝都の女生徒らしい抜け方だ。昨日気まずいことがあっても、今日が楽しければ、そんな気まずさは忘れてしまうという長所でもあり、短所でもある。
「いまSセレモニー会館に兄といっしょにいます。明日は通夜で込み合うので、来てくれたら嬉しいです」
「え、亡くなった夜がお通夜とちゃうのん?」
恵里奈の素朴な質問にマクサが答えた。
「亡くなった夜は、故人と、ごく親しい者だけで過ごす、仮通夜ともいうの。いわゆるお通夜は本通夜と言って儀式だから、本音の話なんかできない。由美、きっとあたしたちに話があるのよ」
さすがにお茶の家元。洞察力が違う。
地下鉄を一回乗り換えて三つめの駅で降りる。
地上に出ると「Sセレモニー会館こちら」の看板が目に飛び込んでくる。ファミレスやパチンコのそれと違ってモノトーンの案内板は、地味だが、かえって目立つ。
会館に着くと「佐伯家控室」の白地に黒の案内が出ていた。
旅館の入り口みたいなところに『佐伯家』のぼんぼりがあった。
「失礼します」
あたしが代表で声をかける。
………………。
入ったところで畳の上に座ったけど、それ以上の声がかけられない。米井由美は兄の骸の前で俯いて、必死に悲しみに耐えていた……。
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