せやさかい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
268 / 432

268『今年も大晦日』

しおりを挟む
せやさかい

268『今年も大晦日』さくら     




 お寺で煩わしいのんは、来訪者への対応。


 ピンポ~ン

 ドアホンが鳴って「はい、どちらさんでしょうか?」と対応して、普通の家やったら、まあ、五秒もあったら玄関。

 ところが、お寺であるうちの家は、三十秒はかかる。

 ドアホンの受信機はリビングにある。リビングがいちばん人が居てる確率が高いさかい。

 
 リビングでドアホンが鳴って「はい、ただいま出ます」とか応えて廊下に出て、つっかけ履いて25メートル先の山門へ出向くと、まあ、三十秒。

 タイミングが悪くて、自分の部屋に居てる時に『ピンポ~ン』鳴ったら、三秒待つ。

 リビングかキッチンに誰か居ったら、その誰かが出る。

 応対する気配が無かったら、あたしが出撃することになる!

 ドタドタドタ!

 廊下に出て階段を下りて、廊下からリビング。

 ドアホンに「はい、どちらさまでしょうか?」と、応対して、山門に出たら……一分ぐらいはかかってしまう。


 そこで、あたしの部屋にもドアホンの子機を付けてもろた。


 あたしの部屋で応対したら、廊下を逆に行って本堂から山門に出ることもできる。

 まあ、十秒足らずのショートカットやねんけどね。

「すまんなあ、なんか門番させるみたいで」

 子機のネジを締めながらテイ兄ちゃんが恐縮する。

「ううん、この方が便利やさかい」

 と、明るく応える。



 実はね、お祖父ちゃんが、近ごろ足やら腰やらが具合が悪い。

 昼間のリビングに居てる確率はお祖父ちゃんがいちばん高い。

 まあ、ちょっとでも役に立てばと思うワケです。せめて冬休みとか夏休みとかぐらいはね。

「さくら、偉いよ」

 留美ちゃんは尊敬してくれる。

「だって、ふつうの中学生はドアホン鳴っても出ないよ、めんどうなことは嫌だからね」

「そう……やろねえ。まあ、うちは人相手にするのは気になれへんほうやからね」

「そうだね」

「あ、うちがおらん時に鳴っても、留美ちゃんは出んでええからね」

「出るよ、わたしだって!」

「おお、ほんなら門番2号っちゅうことで」

「ラジャー!」

 留美ちゃんも、ちょっと成長。

 よきかなよきかな(^▽^)


 で、大晦日の今朝は朝寝坊。

 
 朝寝坊と言うても、十分ほどやねんけどね。

 夕べは、受験に向けて、留美ちゃんと勉強してたんで、ちょっとポカやったんですわ。

 留美ちゃんは、あたしが寝ても「もうちょっと」と頑張ってたからね、起こさんように、チャチャッと着替えて山門へ。

 ブル……

 さすがに寒い。

 カロン コロン カロン コロン カロン コロン

 まだ薄暗い境内の石畳にツッカケの音響かせて、郵便受けから新聞を出す。

 うちの新聞は、朝日と産経。

 なんか、新聞同士ケンカしそうな組み合わせ。

 檀家さんにはいろんな人が居てるさかい、両極の新聞を読んでバランスをとっとこという営業方針かららしい。


 リビングに新聞置いて、ナニゲに三面を開く。


 北新地放火事件の容疑者が死んだ。

 この事件は、あまりにも凄惨なんで、進んで読んだり見たりはせえへんかった。

 今の記事も見だしを見ただけ、中身は読まへん。

 ブルっと身震い。


 昼間、留美ちゃんと勉強してたら、ドアホンが鳴った。

「はい、どちら……」

 最後まで言うまでもなく、宅配のニイチャン。

「すぐ行きま~す」


 認め印にぎって、本堂経由で山門へ。


「ちょっと重いですよ」

「だいじょうぶだいじょうぶ……」

 ズシ

 めっちゃ重たい(^_^;)。

 クス

 いっしゅん宅配のニイチャンが笑いよる。

「アハハ、へいきへいき(^_^;)」

 伝票見ると、重量8キロ!

 受取人は、いつものことながらテイ兄ちゃん。

 テイ兄ちゃんは、珍しいもの好きの通販オタク。また、しょうもないもんを買うたにちがいない。


「おお、来たか来たか!」

 従妹の苦労をねぎらいもせんと、朝ごはん食べに来たテイ兄ちゃん。

「なんやのん、このクソ重たいもんは!?」

 我ながらツンツン。

「これはやなあ……」

 ガサゴソ……

「「「な、なんやこれは!?」」」

 食卓のみんながタマゲタ。


 それは、縮尺1/10の釣鐘やおまへんか!


「今年も、除夜の鐘ツアーでけへんからなあ、発想の転換や」

「これ、ほんまに撞けるんか?」

 お祖父ちゃんが、眼鏡かけてしげしげと見る。

「あったりまえですがなあ~(^▽^)」

 ちゃんと、組み立て式の釣鐘堂もあって、文字通り朝飯前のお撞き染め。

 ゴ~~ン

「「「おお!」」」

 イッチョマエに釣鐘の音がする。

「しかし、境内には本物の釣鐘があるのに、なんや、ケッタイやなあ……」

 お祖父ちゃんは、ちょっと複雑。

 街中のお寺は、騒音になるとかで、リアルに撞けるとこは少ない。

「実はね……」

 ニヤニヤしながらテイ兄ちゃん。

「頼子さんとこにも同じもんを送ってある……」

「「「え?」」」

 なんと、頼子さんとうちの如来寺で、スカイプで繋いで共同で除夜の鐘を撞こうというタクラミらしい。


 さて、令和三年の『せやさかい』の大晦日。

 どんな年越しの夜になりますやら。

 来年もよろしくお願いいたします。

                         佐藤 さくら


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜

中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」 大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。 しかも、現役大学生である。 「え、あの子で大丈夫なんか……?」 幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。 ――誰もが気づかないうちに。 専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。 「命に代えても、お守りします」 そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。 そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める―― 「僕、舐められるの得意やねん」 敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。 その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。 それは忠誠か、それとも―― そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。 「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」 最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。 極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。 これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選

上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。 一人用の短い恋愛系中心。 【利用規約】 ・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。 ・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。 ・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

処理中です...