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222『ジューンブライドからの……』
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
222『ジューンブライドからの……』
「フフ、うまいこと考えたものねぇ」
前日のアルバイトがきつくて、くたびれた顔で頬杖付いていたら「あら、どうしたの?」とゾフィーが聞いてきた。
彼女のはゾフィーって名前で転校してきたんだけど、カチューシャと呼んでも嫌な顔をしない。
ゾフィーは結婚する前のドイツ時代の名前、カチューシャはエカチェリーナの愛称で、ロシア皇帝に嫁いでからのロシア名。
「両方とも自信持ってるのよ」
ちょっと暗い顔で答えるナースチャ。
四代前のヒイヒイお婆ちゃんにあたるナースチャ(アナスターシア)はゾフィーへの警戒を解かない。
で、あ、そうそう「うまいこと考えたものね」って言うのはジューンブライドの話をしたから。
六月の結婚式場が忙しいのは知ってるわよね、去年も一昨年もグチったような気がする。
「そうね、こんな雨季に結婚式あげようなんて普通は考えないものね……それで、6月に結婚したら幸せになれる……天才ね、これ考えた人は」
「ヨーロッパじゃ無いの?」
「あるわよ」
「え?」
ちょっと混乱した。ヨーロッパにもあるんだったら日本のジューンブライドに感心することもないだろう。
「ドイツもロシアもそうだけど、冬の終りから春にかけて、お百姓はめちゃくちゃ忙しいのよ。作付やら家畜の出産やら。だから、1月から5月まで結婚式は控えるのよ。場所によっては領主や教会が禁止しているところもあるわ」
「禁止してるの!?」
「うん、領主も教会も絶大な力を持ってるからね……メモしておこう」
「え、なんかの参考になるの?」
「ウフフ、ポチョムキン村よ。あ、ロコぉ、お手洗いでしょ! ゾフィーもいっしょに行くぅ!」
お手洗いと言われて顔を赤くするロコと並んで行ってしまう。
ちょっとビックリした。ゾフィー、ポチョムキン村って知ってるんだ。
「生前の記憶があるからね……」
そう言いながら前の席に座ってくるナースチャ。
「そうだよね、おトイレ苦手っていうのも生前の記憶だし」
ちょっと思い直した。ナースチャとゾフィーは微妙に違う。
ナースチャは皇帝一家惨殺の中、たったひとり命拾いするという別の時間軸から来た皇女だけど、ゾフィーは前世の記憶を持ったまま生まれ変わってやってきたロシアの女帝。
「わたしなんて、ただロシア皇帝の娘だっていうだけだけど、ゾフィー……エカチェリーナはロシア皇帝だからね、生まれ変わってバージョンアップ、アップデートしていくんだ」
「やっぱ苦手?」
わたしはナースチャほどには警戒心は無い。
押し出しの強い子だけど、結果的にはそれほど悪い印象じゃない。
「ライオンだって、子どもの頃は可愛いからね……」
ナースチャはジュンブルーだ。
ちょっと会話が途切れて、ふたりボンヤリと降る雨に目を向け耳を傾ける。
外から見たら、シトシト降る雨の窓ガラスに日露二人の美少女、自撮り棒つけてスマホで写真撮りたくなるけど、昭和の時代でやるわけにはいかないので、イメージだけでシャッターを切ってみる。
パシャ
ちょっと大きな雨粒がガラスをたたいて、それが、なんだかシャッターを切ったような感じで、我ながら雰囲気に弱い魔法少女(^_^;)。
中から見てる分には梅雨もいいかなあ……と思っていると、廊下を小走りに戻って来る友の気配。
「ねえ、いいもの見つけましたよ!」「二人の名前も書いといたからね!」
ご不浄帰りのロコとゾフィーが、一足飛びにヒマワリみたいな笑顔で飛躍したことを言う。
「え?」「なんなの?」
「県の教育委員会がね、夏休みに『沖縄県高校生交流旅行』を募集してるんですよ」
「一校あたり3人から5人のグループで募集してるんで、ちょうどいいかなって。まあ、抽選なんですけどね」
「ああ、抽選かあ」
「フフフ、このゾフィー・アウグステ・フリーデリケは運はいいからね、たぶん、いや、きっと当たるわよ。ポチョムキン村にはならないからね!」
あ、なんか裏から手を回すとか……ゾフィーならやりかねない。
若き女帝は昂然と胸を張るのでありました。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 3年1組 クラスメート
辻本 たみ子 3年8組
高峰 秀夫 3年6組
吉本 佳奈子 3年4組 バレー部
横田 真知子 3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
カチューシャ エカテリーナ二世(ゾフィー・アウグステ・フリーデリケ)
ユリア ナースチャを狙う魔法少女
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 3年学年主任
先生たち 花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史・3年1組担任:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ 戦艦石見(アリヨール) 藍(アオ、高松塚の采女)
その他の生徒たち 滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
222『ジューンブライドからの……』
「フフ、うまいこと考えたものねぇ」
前日のアルバイトがきつくて、くたびれた顔で頬杖付いていたら「あら、どうしたの?」とゾフィーが聞いてきた。
彼女のはゾフィーって名前で転校してきたんだけど、カチューシャと呼んでも嫌な顔をしない。
ゾフィーは結婚する前のドイツ時代の名前、カチューシャはエカチェリーナの愛称で、ロシア皇帝に嫁いでからのロシア名。
「両方とも自信持ってるのよ」
ちょっと暗い顔で答えるナースチャ。
四代前のヒイヒイお婆ちゃんにあたるナースチャ(アナスターシア)はゾフィーへの警戒を解かない。
で、あ、そうそう「うまいこと考えたものね」って言うのはジューンブライドの話をしたから。
六月の結婚式場が忙しいのは知ってるわよね、去年も一昨年もグチったような気がする。
「そうね、こんな雨季に結婚式あげようなんて普通は考えないものね……それで、6月に結婚したら幸せになれる……天才ね、これ考えた人は」
「ヨーロッパじゃ無いの?」
「あるわよ」
「え?」
ちょっと混乱した。ヨーロッパにもあるんだったら日本のジューンブライドに感心することもないだろう。
「ドイツもロシアもそうだけど、冬の終りから春にかけて、お百姓はめちゃくちゃ忙しいのよ。作付やら家畜の出産やら。だから、1月から5月まで結婚式は控えるのよ。場所によっては領主や教会が禁止しているところもあるわ」
「禁止してるの!?」
「うん、領主も教会も絶大な力を持ってるからね……メモしておこう」
「え、なんかの参考になるの?」
「ウフフ、ポチョムキン村よ。あ、ロコぉ、お手洗いでしょ! ゾフィーもいっしょに行くぅ!」
お手洗いと言われて顔を赤くするロコと並んで行ってしまう。
ちょっとビックリした。ゾフィー、ポチョムキン村って知ってるんだ。
「生前の記憶があるからね……」
そう言いながら前の席に座ってくるナースチャ。
「そうだよね、おトイレ苦手っていうのも生前の記憶だし」
ちょっと思い直した。ナースチャとゾフィーは微妙に違う。
ナースチャは皇帝一家惨殺の中、たったひとり命拾いするという別の時間軸から来た皇女だけど、ゾフィーは前世の記憶を持ったまま生まれ変わってやってきたロシアの女帝。
「わたしなんて、ただロシア皇帝の娘だっていうだけだけど、ゾフィー……エカチェリーナはロシア皇帝だからね、生まれ変わってバージョンアップ、アップデートしていくんだ」
「やっぱ苦手?」
わたしはナースチャほどには警戒心は無い。
押し出しの強い子だけど、結果的にはそれほど悪い印象じゃない。
「ライオンだって、子どもの頃は可愛いからね……」
ナースチャはジュンブルーだ。
ちょっと会話が途切れて、ふたりボンヤリと降る雨に目を向け耳を傾ける。
外から見たら、シトシト降る雨の窓ガラスに日露二人の美少女、自撮り棒つけてスマホで写真撮りたくなるけど、昭和の時代でやるわけにはいかないので、イメージだけでシャッターを切ってみる。
パシャ
ちょっと大きな雨粒がガラスをたたいて、それが、なんだかシャッターを切ったような感じで、我ながら雰囲気に弱い魔法少女(^_^;)。
中から見てる分には梅雨もいいかなあ……と思っていると、廊下を小走りに戻って来る友の気配。
「ねえ、いいもの見つけましたよ!」「二人の名前も書いといたからね!」
ご不浄帰りのロコとゾフィーが、一足飛びにヒマワリみたいな笑顔で飛躍したことを言う。
「え?」「なんなの?」
「県の教育委員会がね、夏休みに『沖縄県高校生交流旅行』を募集してるんですよ」
「一校あたり3人から5人のグループで募集してるんで、ちょうどいいかなって。まあ、抽選なんですけどね」
「ああ、抽選かあ」
「フフフ、このゾフィー・アウグステ・フリーデリケは運はいいからね、たぶん、いや、きっと当たるわよ。ポチョムキン村にはならないからね!」
あ、なんか裏から手を回すとか……ゾフィーならやりかねない。
若き女帝は昂然と胸を張るのでありました。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 3年1組 クラスメート
辻本 たみ子 3年8組
高峰 秀夫 3年6組
吉本 佳奈子 3年4組 バレー部
横田 真知子 3年8組 リベラル系女子(MITAKA初代代表)
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
カチューシャ エカテリーナ二世(ゾフィー・アウグステ・フリーデリケ)
ユリア ナースチャを狙う魔法少女
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 3年学年主任
先生たち 花園先生:1・2年の時の担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史・3年1組担任:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ 戦艦石見(アリヨール) 藍(アオ、高松塚の采女)
その他の生徒たち 滝沢 栗原 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
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