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18『中之島のバラ園』
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はるか ワケあり転校生の7カ月
18『中之島のバラ園』
その帰り道、地下鉄の駅を素通りして、南に向かって歩き出していた。
「ごめん、地下鉄乗りそびれちゃった……」
「ええやん、これ堺筋やさかい、ほっといても日本橋に着くさかい」
「日本橋まで歩くの?」
「くたびれたら、どこかで地下鉄に乗ったらええやん」
「そうだね……」
「それから、ニホンバシと違て、ニッポンバシ」
「ウフフ、だったよね」
大阪の地名はムズイんだよね。都島と書いてトシマじゃなくて、ミヤコジマ。放出(はなてん)杭全(くまた)なんて、もうお手上げ。
「でも、はるかが東京帰らへんて分かって安心した」
「……でも、由香って鋭いかもよ」
「え……?」
「東京への未練は、近所の八幡さまにお賽銭といっしょに納めてきちゃった」
短くスキップして、一歩由香の前に出る。
「お賽銭?」
「うん、ピッカピカの百円玉にしてね……でも一個だけどうしても残ってんの」
「なに……?」
由香の怯えたような視線を背中に感じる。自分が、とてもケナゲな子に思えてくる。
「なんやのん?」
「ごめん……言ってしまったら、手からこぼれてしまいそうで、ごめんね」
「ううん、かめへんよ。はるかが大阪に居てくれることは、はっきりしたんやさかい! 今は、それだけでええよ」
「うん。言える時がきたら言うわね、由香にだけは……」
「ありがとぅ!」
スキップで、由香は、わたしの横に並んだ。
しばらく二人で歌いながら歩いた。カラオケみたく元気に、AKB48、スマップ、ももクロなどなど。大阪に来て、こんなに歌うのは初めてだ。
帰宅途中のOLさんたちが拍手をしてくれた。
いつもだったら、こんなこと恥ずかしくて、とてもできない。だけど、この時は平気ってか、とても自然だった。
「あ、すごい!」
ハイテンションの由香の横顔越しにすごいバラ園が見えてきた。
わたしたちは、中之島まで来てしまった。そして目の下に広がるバラ園!
うわあああ!
二人は子犬のようにバラ園に突撃した。
「わあ、すごいバラだ! バラばたけ! バラだらけ!」
「でました、はるかのおやじギャグ!」
「違うよ、韻をふんだのよ韻を!」
わたしたちは、子どものように(もう子どもじゃないんだよ! ってときもあるけど、使い分けます。この年代の特権)はしゃぎまくり!
「ねえ、知ってる、黄色のバラは友情を表してんねんよ。赤は情熱。白はえーと清純、純潔。ハハ、これはうちらに向いてないなあ」
「由香、魚屋さんなのに花に詳しいのね!?」
「うちの向かいが花屋さん」
「なんだ、そうか。でも大したものよ」
「あたしが、それともバラが?」
「言わぬが花ってね」
「なんや、その京都のオバハンみたいなあいまいさは。江戸っ子やったら、はっきりせえよ!」
「両方よ、両方」
「また、そんなあやふやな。黄色いバラに賭けて誓いなさいよ!」
「由香、おっかなーい!」
「アハハ……ねえ、由香。青いバラってないの? 青空みたいに青いの」
「バラに青はあれへんよ。花言葉はあるけど」
「なんての、青いバラの花言葉は?」
「不可能」
「不可能……」
急速にバラたちが色あせていくような気がした……。
18『中之島のバラ園』
その帰り道、地下鉄の駅を素通りして、南に向かって歩き出していた。
「ごめん、地下鉄乗りそびれちゃった……」
「ええやん、これ堺筋やさかい、ほっといても日本橋に着くさかい」
「日本橋まで歩くの?」
「くたびれたら、どこかで地下鉄に乗ったらええやん」
「そうだね……」
「それから、ニホンバシと違て、ニッポンバシ」
「ウフフ、だったよね」
大阪の地名はムズイんだよね。都島と書いてトシマじゃなくて、ミヤコジマ。放出(はなてん)杭全(くまた)なんて、もうお手上げ。
「でも、はるかが東京帰らへんて分かって安心した」
「……でも、由香って鋭いかもよ」
「え……?」
「東京への未練は、近所の八幡さまにお賽銭といっしょに納めてきちゃった」
短くスキップして、一歩由香の前に出る。
「お賽銭?」
「うん、ピッカピカの百円玉にしてね……でも一個だけどうしても残ってんの」
「なに……?」
由香の怯えたような視線を背中に感じる。自分が、とてもケナゲな子に思えてくる。
「なんやのん?」
「ごめん……言ってしまったら、手からこぼれてしまいそうで、ごめんね」
「ううん、かめへんよ。はるかが大阪に居てくれることは、はっきりしたんやさかい! 今は、それだけでええよ」
「うん。言える時がきたら言うわね、由香にだけは……」
「ありがとぅ!」
スキップで、由香は、わたしの横に並んだ。
しばらく二人で歌いながら歩いた。カラオケみたく元気に、AKB48、スマップ、ももクロなどなど。大阪に来て、こんなに歌うのは初めてだ。
帰宅途中のOLさんたちが拍手をしてくれた。
いつもだったら、こんなこと恥ずかしくて、とてもできない。だけど、この時は平気ってか、とても自然だった。
「あ、すごい!」
ハイテンションの由香の横顔越しにすごいバラ園が見えてきた。
わたしたちは、中之島まで来てしまった。そして目の下に広がるバラ園!
うわあああ!
二人は子犬のようにバラ園に突撃した。
「わあ、すごいバラだ! バラばたけ! バラだらけ!」
「でました、はるかのおやじギャグ!」
「違うよ、韻をふんだのよ韻を!」
わたしたちは、子どものように(もう子どもじゃないんだよ! ってときもあるけど、使い分けます。この年代の特権)はしゃぎまくり!
「ねえ、知ってる、黄色のバラは友情を表してんねんよ。赤は情熱。白はえーと清純、純潔。ハハ、これはうちらに向いてないなあ」
「由香、魚屋さんなのに花に詳しいのね!?」
「うちの向かいが花屋さん」
「なんだ、そうか。でも大したものよ」
「あたしが、それともバラが?」
「言わぬが花ってね」
「なんや、その京都のオバハンみたいなあいまいさは。江戸っ子やったら、はっきりせえよ!」
「両方よ、両方」
「また、そんなあやふやな。黄色いバラに賭けて誓いなさいよ!」
「由香、おっかなーい!」
「アハハ……ねえ、由香。青いバラってないの? 青空みたいに青いの」
「バラに青はあれへんよ。花言葉はあるけど」
「なんての、青いバラの花言葉は?」
「不可能」
「不可能……」
急速にバラたちが色あせていくような気がした……。
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