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本編13
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「王都でお前を迎える準備をしてくる。だから、帰ってくるまで待ってくれ」
「それ、いつ? どれくらい待てばいいの?」
「お前が二十歳になるまでには必ず帰ってくる。だから、この村で、誰とも結婚なんかしないで、俺を待っててくれないか?」
なぜ結婚しないまま待たなければならないのだろう。
ソーマは早く結婚し家庭を築きたいと思っている。可愛い妻を迎え、そのうち子供ができ、みんなで一緒に王都に行くことへ夢が変わりつつあった。ようやく現実が見えるようになると、自分がしなければならないことも分かってくる。
「結婚して待つ、じゃ駄目かな?」
「……駄目に決まっているだろう。俺がお前と結婚するんだから」
「はい? ……あの、僕たち男同士だよ。結婚できないよ」
だって、結婚というのは、男と女がするものであって、男同士で結婚する人など村には誰もいない。それに結婚した男女に村のおばちゃん連盟が「早く子供作りなさいよ」というから、男女でなければならないのだろう。
どうやってするかは解からないが。
「王都ではできるんだ。そういう人たちもいる。だから俺はお前を連れて王都に行きたいんだ」
「……そうなの?」
知らなかった。男同士で結婚できることも、王都にはそういう人たちがいることも。
「去年、冒険者が来ただろう。あの人たちに教えてもらった。だから頼む、俺の嫁になってくれ」
「でも、そしたら僕、村の女の子に殺されちゃうじゃん! ムリムリムリムリ!」
それに嫁を貰うという壮大な夢も潰えてしまう。
けれど、幼馴染を手放すのも惜しくなっていた。
ゲオルクとの約束の証はとても甘く、ソーマを虜にしているから。後四年もしてもらえないのは悲しい。
ゲオルク以外ともできるのだと知らないソーマは、それに縋るしかなかった。あの冒険者が来ていたころ、全くしてもらえなかった期間、言いようのない渇きのようなものを味わっていたからだ。
どんなに食べても満たされず、約束の証をすることばかりを考えてしまった。
大量に食べても飲んでも、癒えないのだ。
あれがあと四年も続くのは嫌だった。
「お前と結婚すると言って出ていかなければ大丈夫だ。だから頼む、俺を待っていてくれ。王都でソーマと暮らす家を建てるために金を稼ぐから」
「……どうやって?」
「冒険者になってギルドに登録する。仕事の内容によっては稼ぐことができるから」
だからゲオルクは冒険者たちと夜通し話をして情報を集めていたのだ。この村ではソーマと一緒になることはできず、絶対に周囲が引き離してしまうのが分かっているから。
ゲオルクはいい。狩りも畑仕事もできて村に貢献できるから。だがソーマはどうだろうか。父と小さな畑を維持していくのが精いっぱいで狩りもできないソーマがゲオルクの相手と解ったら、村長を中心に父親ごと追い出しかねない。
ソーマが女だったらとゲオルクは常々思っていた。
誰よりも綺麗で可愛くて、自分を信じてまっすぐに見つめてくるこの幼馴染が女だったら、今日この日に誰の目にも晒すことなく部屋に閉じ込めて犯し続けたことだろう。誰かのものになってしまう前に攫ってしまったかもしれない。
「それ、いつ? どれくらい待てばいいの?」
「お前が二十歳になるまでには必ず帰ってくる。だから、この村で、誰とも結婚なんかしないで、俺を待っててくれないか?」
なぜ結婚しないまま待たなければならないのだろう。
ソーマは早く結婚し家庭を築きたいと思っている。可愛い妻を迎え、そのうち子供ができ、みんなで一緒に王都に行くことへ夢が変わりつつあった。ようやく現実が見えるようになると、自分がしなければならないことも分かってくる。
「結婚して待つ、じゃ駄目かな?」
「……駄目に決まっているだろう。俺がお前と結婚するんだから」
「はい? ……あの、僕たち男同士だよ。結婚できないよ」
だって、結婚というのは、男と女がするものであって、男同士で結婚する人など村には誰もいない。それに結婚した男女に村のおばちゃん連盟が「早く子供作りなさいよ」というから、男女でなければならないのだろう。
どうやってするかは解からないが。
「王都ではできるんだ。そういう人たちもいる。だから俺はお前を連れて王都に行きたいんだ」
「……そうなの?」
知らなかった。男同士で結婚できることも、王都にはそういう人たちがいることも。
「去年、冒険者が来ただろう。あの人たちに教えてもらった。だから頼む、俺の嫁になってくれ」
「でも、そしたら僕、村の女の子に殺されちゃうじゃん! ムリムリムリムリ!」
それに嫁を貰うという壮大な夢も潰えてしまう。
けれど、幼馴染を手放すのも惜しくなっていた。
ゲオルクとの約束の証はとても甘く、ソーマを虜にしているから。後四年もしてもらえないのは悲しい。
ゲオルク以外ともできるのだと知らないソーマは、それに縋るしかなかった。あの冒険者が来ていたころ、全くしてもらえなかった期間、言いようのない渇きのようなものを味わっていたからだ。
どんなに食べても満たされず、約束の証をすることばかりを考えてしまった。
大量に食べても飲んでも、癒えないのだ。
あれがあと四年も続くのは嫌だった。
「お前と結婚すると言って出ていかなければ大丈夫だ。だから頼む、俺を待っていてくれ。王都でソーマと暮らす家を建てるために金を稼ぐから」
「……どうやって?」
「冒険者になってギルドに登録する。仕事の内容によっては稼ぐことができるから」
だからゲオルクは冒険者たちと夜通し話をして情報を集めていたのだ。この村ではソーマと一緒になることはできず、絶対に周囲が引き離してしまうのが分かっているから。
ゲオルクはいい。狩りも畑仕事もできて村に貢献できるから。だがソーマはどうだろうか。父と小さな畑を維持していくのが精いっぱいで狩りもできないソーマがゲオルクの相手と解ったら、村長を中心に父親ごと追い出しかねない。
ソーマが女だったらとゲオルクは常々思っていた。
誰よりも綺麗で可愛くて、自分を信じてまっすぐに見つめてくるこの幼馴染が女だったら、今日この日に誰の目にも晒すことなく部屋に閉じ込めて犯し続けたことだろう。誰かのものになってしまう前に攫ってしまったかもしれない。
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