異世界に転生したら王子と勇者に追いかけられてます

椎名サクラ

文字の大きさ
3 / 111

序章3

しおりを挟む
 さすがにそれは納得できない。あと20年もあれば、数多あるアニメの最終回に遭遇できるし、やっているゲームで今以上に強くなっているかもしれない。もしかしたら彼女だって……。

「今すぐ生き返らせろよ!」

「それがですね、人間No.54,689,756,148,947番さんが寝ている間に、肉体が焼却されてしまったので、不可能なんですね。残念でしたね!」

「なんだよ、それ……」

 クソアニメの最終一話前を観て死ぬとか悲しすぎるだろ、それは。

「時間とか……巻き戻せないのかよ。運命の女神なんだろ」

「運命の女神でも、うーにゃんは時間取扱技師能力試験に五千年連続で落ち続けてるのでダメなんですよ」

「…………難しいの、その試験?」

「他の人は大抵一発合格です!」

 もしかして、女神すら外れ引いたかも。

「でもでも、大丈夫ですよ。遅くなったのは、お詫びとして転生した際のオプション取り付け許可を上司からもぎ取ってきたからなんです。人間No.54,689,756,148,947番さんが、次に転生する時に、好きな状態になれますよ」

「それって、チートがつくって言う感じか!?」

「うーにゃんはちーとってのがよくわかっていないんですけど、お好みの人生オプションがつけること可能です」

「……例えば?」

「そうですね、一番多いのは王様になるとかですね」

 やった、チートきた!

 まさか自分の身にアニメで大活躍のチートが付随するのか!

 当然颯馬には断る選択はなかった。だって、今の自分はただのニートだ。面白おかしくもない地味な学生生活を過ごし、まさか風邪をこじらせて高校受験失敗して以来引き籠もって過ごした人生に未練はない。

「じゃ、じゃあ……一番強い王様になって恋人ができて、たくさんの人から好意を寄せられて、複数人から取り合われたりもいいな……波乱万丈だけど幸せな人生なんてのもあり?」

「それでいいんですか? それなら一番低水準のお願いですね、大丈夫ですよ」

「……これで低水準?」

「あ、恋人さんのスペックを付属しますか?」

「ぜひ!」

「どんなのをお求めですかー。身長とか、容姿とか」

「顔は……綺麗系! 絶対、綺麗系! 綺麗系だから背は高いほうが良いかも」

「胸はどうします?」

「あー……あったほうが良いのかな?」

 母親以外の女性の胸なんて見たことがないからよくわからないが。

「では胸大きめで登録しておきますね。他はありますか?」

「そう……だな、今の世界はもういいんで、ファンタジーがいいです!」

「ファンタジー……ああ、今とは別の世界観ですね、解りました。ではこれで登録しておきます」

 女神は持っていた杖で宙を何カ所か叩くように振ると、笑顔で消えていった。

「では良い人生を」

「ありがとう、うーにゃん! 本当にありがとう!!」

 消えていく女神に最大級の感謝を述べ手を振り続けた。

「……あれ、チートってスキルのことだよな。俺なんで強い王様以外のやつをお願いしなかったんだ?」

 最強魔法とか、不死身とか、もっと色々お願いすればよかった。

『あれー、オプション追加ですかぁ?』

 遠くから消えたはずの女神の声が聞こえる。

「追加です、追加! 最強魔法も付け加えてください!」

『わかりましたー、さいきょうですねー』

 どんどん女神の声が小さくなっていくが、それでも受理されたようだ。

「やった!」

 颯馬は拳を握り締めながら大声で叫んだ。

 そして来世に期待しながらゆっくりと目を閉じるのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない

水凪しおん
BL
命を落とした温泉旅館の跡取り息子が転生したのは、人々から忌み嫌われる「呪いの沼」だった。 終わりなき孤独と絶望の中、彼に与えられたのは【万物浄化】と【源泉開発】のスキル。 自らを浄化し、極上の温泉を湧き出させた彼の前に現れたのは、呪いにより心と体を凍てつかせた冷血公爵クロード。 半信半疑で湯に浸かった公爵は、生まれて初めての「安らぎ」に衝撃を受ける。 「この温泉郷(ばしょ)ごと、君が欲しい」 孤独だった元・沼の青年アオイと、温もりを知らなかった冷血公爵クロード。 湯けむりの向こうで出会った二人が、最高の温泉郷を作り上げながら、互いの心の傷を癒やし、かけがえのない愛を見つけていく。 読む者の心まですべて解きほぐす、極上の癒やしと溺愛のファンタジーロマンス、ここに開湯。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

処理中です...