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本編20
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しかも大きな泉には魚がたくさんいて、ソーマが覗き込むだけで寄ってきては、その身を捧げるように一匹また一匹とほとりに飛び上がってくる。それに、時折木陰からこちらを覗くようにやってくる兎や猪もいて、肉にも困らない。
わざわざ道具を作る必要がない状態に感謝しながらも、一人で生活するしかなかった。
幸いなのは、大きな屋敷があることだろう。
今まで住んでいたあばら屋とは違い、大きなベッドや風呂まで付いている。ついでに先人が残していった服も豊富にあり、着る者にも困らない。デザインは古いが。
しかも食材を台所に置いておけば料理してくれ、掃除が勝手に行われ、洗濯まで勝手にしてくれるという、どんだけ先人は家事に手を抜いていたんだと感心するほどに、何もしなくてもいい状態だ。
ソーマがするのは畑仕事と魚を拾うこと、木の実をもぐぐらいでなんとか生活が成り立った。
余った時間はひたすら石板に手を置き、竜族の歴史を学びながら、竜に変化する練習を重ねるくらいだ。
なのに、未だソーマの魔法がなんなのかわからないままだ。何度試してみても頭上で弾けるだけで、何ももたらさない。
「一体どうなってるんだよ……」
呟いても返事などないのも寂しい。
一人でいることがなかったソーマが一人暮らしをしていると、段々と寂しさが募っていった。
やってくる兎を台所に連れていかず飼い始めたが、なぜかみんな台所に行きたがり、いつの間にか調理されてしまうという悲劇を数度体験して止めた。
次にたまたまやってきたウリボウを飼ったが、畑を荒らしもせずいい子だと思った矢先にまた食卓に上がっていた。
この屋敷には動物をすべて台所に引き寄せる魔法が存在するのだと気づくと、動物を飼うのを諦めるしかなかった。
「一人なのは寂しいよ……」
まさかペットすら飼わせてもらえないなんて。
だが強力すぎる手抜き家事魔法を解除するほど、ソーマには魔力はなかった。それに、勝手に家事すべてを行ってくれる恩恵は手放したくない。
泣く泣く動物は触れ合うくらいに留め、とにかく竜王になってしまったんだからと、勉強に励むしかなかった。
読み書きなどできないはずなのに、いつの間にか字を読むことも計算をすることもできるようになっていた。分からないことがあれば、石板に手をかざすだけですべての知識が入ってくる。
暦も地学も気象学もすべて頭に入ると、ここへ来てからどれくらいの時間がたったのかがわかり始める。
竜王になるためと言いながら、ダラダラと四年もの月日が過ぎていた。
面白がって屋敷にある本を読みつくすが、四年もの間にすべて読み切ってしまい、本当にやることがなくなってしまった。
「つまらない……こんな生活をずっと続けるとか無理だろ」
自分用と決めた部屋のベッドの上でゴロゴロと転がりながら、何度も読んだ本を放り投げた。
わざわざ道具を作る必要がない状態に感謝しながらも、一人で生活するしかなかった。
幸いなのは、大きな屋敷があることだろう。
今まで住んでいたあばら屋とは違い、大きなベッドや風呂まで付いている。ついでに先人が残していった服も豊富にあり、着る者にも困らない。デザインは古いが。
しかも食材を台所に置いておけば料理してくれ、掃除が勝手に行われ、洗濯まで勝手にしてくれるという、どんだけ先人は家事に手を抜いていたんだと感心するほどに、何もしなくてもいい状態だ。
ソーマがするのは畑仕事と魚を拾うこと、木の実をもぐぐらいでなんとか生活が成り立った。
余った時間はひたすら石板に手を置き、竜族の歴史を学びながら、竜に変化する練習を重ねるくらいだ。
なのに、未だソーマの魔法がなんなのかわからないままだ。何度試してみても頭上で弾けるだけで、何ももたらさない。
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呟いても返事などないのも寂しい。
一人でいることがなかったソーマが一人暮らしをしていると、段々と寂しさが募っていった。
やってくる兎を台所に連れていかず飼い始めたが、なぜかみんな台所に行きたがり、いつの間にか調理されてしまうという悲劇を数度体験して止めた。
次にたまたまやってきたウリボウを飼ったが、畑を荒らしもせずいい子だと思った矢先にまた食卓に上がっていた。
この屋敷には動物をすべて台所に引き寄せる魔法が存在するのだと気づくと、動物を飼うのを諦めるしかなかった。
「一人なのは寂しいよ……」
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暦も地学も気象学もすべて頭に入ると、ここへ来てからどれくらいの時間がたったのかがわかり始める。
竜王になるためと言いながら、ダラダラと四年もの月日が過ぎていた。
面白がって屋敷にある本を読みつくすが、四年もの間にすべて読み切ってしまい、本当にやることがなくなってしまった。
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