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本編70
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「み……みず……」
もうだめだ、街どころか村一つ見つけることができない。でもこの道を進んでいけばきっと誰かに会える。きっと助けてもらえる。それだけを信じて、ソーマは進んでいった。
きっと心優しいお姉さんが声をかけてくれて、水と一緒に身体もくれちゃったりするんだ、きっと。
脱水間近の頭の中で、ご都合主義のエロ漫画的展開を想像して、自分を鼓舞させていく。きっとこの道の先には綺麗なお姉さんが筆おろしをさせてくれる、と。そんなはずなどあるわけないのに、一縷の望みを抱きながら、一歩一歩煉瓦の道を踏みしめながら歩き続ける。
きっと、きっと脱童貞は叶うはず。きっと……こんなに頑張っている自分だから絶対にどっかの神様が見て、夢を叶えてくれるはず。
だが振り返って、前世を含みソーマが何かを成し遂げるために努力をしたことは、あまりない。今回だって、脱童貞と掲げながら計画が稚拙だし、目的も卑猥で、これを憐れんで拾ってくれる神は果たしているのだろうか。だがソーマは本当に蜘蛛の糸よりも細い望みに縋りつきながら歩き続けた。
今、ソーマが歩いている場所は、国でも危険指定地区となっていることを知らない。
数年前から出てくる山賊に身ぐるみを剥がされ、命が助かれば御の字という地区だった。男なら殺され、女なら犯されて捨てられる、そんな場所だからこそ、馬車で全速力で走り抜けるか、護衛を付けていかなければいけなかった。
山賊狩りのために兵や冒険者を派遣しているが、なかなかねぐらを見つけることができず、壊滅に至っていない。
そこをひたすら水を求めて、とぽとぽと歩き続けた。
当然、山賊はそんなソーマを見逃すことはしない。
みすぼらしい格好だが、見目美しいソーマに早々と目を付けていた。
今に倒れそうになるギリギリまで待たれている段階であった。
彼らとて、労力は少ないほうが良い。
そしてとうとう、ソーマは喉の渇きに足を止めた。
「だめだ……」
これ以上声すら出ない。どうしよう……まだ日は高いから夜になるのを木陰で待って、また竜の姿になって先に進もう。
自分に旅は無理だったのだと諦め、木陰を探し始めた時、数人の巨漢に囲まれた。
「護衛も付けずにここを通ろうなんて、バカだなこいつ」
「バカだから俺たちの仕事もしやすいってもんだろ」
「おい見ろよ、こりゃ掘り出しもんだぜ」
突然現れた男たちに、必死で逃げる算段をする。だが荒事に慣れた男が数人に対し、ソーマは一人だ。しかも疲弊している。
「このままねぐらに連れていこうぜ」
「おいおい、いくら美人だってこいつ男だぜ」
「男でも穴があるだろ。お前が嫌だったら俺が一人で楽しませてもらうぜ」
ソーマの品定めをして卑猥に笑う。
「あの……ちょっとなんですか?」
自分が望んでいるのは、ボンギュッボンのお姉さんであって、ガチムチの荒々しい汚らしい男ではない。しかもこんな卑猥な笑い方をする人は、生理的にご遠慮いただきたいのだが、なんと言えば離れてくれるのだろうか。
「あの……僕何も持ってませんよ」
現に、金は一円も持ち合わせていない。あるのは干し肉と乾燥した果物、それと服ぐらいだ。これだって竜の館にある綺麗目なものを着てきただけである。
もうだめだ、街どころか村一つ見つけることができない。でもこの道を進んでいけばきっと誰かに会える。きっと助けてもらえる。それだけを信じて、ソーマは進んでいった。
きっと心優しいお姉さんが声をかけてくれて、水と一緒に身体もくれちゃったりするんだ、きっと。
脱水間近の頭の中で、ご都合主義のエロ漫画的展開を想像して、自分を鼓舞させていく。きっとこの道の先には綺麗なお姉さんが筆おろしをさせてくれる、と。そんなはずなどあるわけないのに、一縷の望みを抱きながら、一歩一歩煉瓦の道を踏みしめながら歩き続ける。
きっと、きっと脱童貞は叶うはず。きっと……こんなに頑張っている自分だから絶対にどっかの神様が見て、夢を叶えてくれるはず。
だが振り返って、前世を含みソーマが何かを成し遂げるために努力をしたことは、あまりない。今回だって、脱童貞と掲げながら計画が稚拙だし、目的も卑猥で、これを憐れんで拾ってくれる神は果たしているのだろうか。だがソーマは本当に蜘蛛の糸よりも細い望みに縋りつきながら歩き続けた。
今、ソーマが歩いている場所は、国でも危険指定地区となっていることを知らない。
数年前から出てくる山賊に身ぐるみを剥がされ、命が助かれば御の字という地区だった。男なら殺され、女なら犯されて捨てられる、そんな場所だからこそ、馬車で全速力で走り抜けるか、護衛を付けていかなければいけなかった。
山賊狩りのために兵や冒険者を派遣しているが、なかなかねぐらを見つけることができず、壊滅に至っていない。
そこをひたすら水を求めて、とぽとぽと歩き続けた。
当然、山賊はそんなソーマを見逃すことはしない。
みすぼらしい格好だが、見目美しいソーマに早々と目を付けていた。
今に倒れそうになるギリギリまで待たれている段階であった。
彼らとて、労力は少ないほうが良い。
そしてとうとう、ソーマは喉の渇きに足を止めた。
「だめだ……」
これ以上声すら出ない。どうしよう……まだ日は高いから夜になるのを木陰で待って、また竜の姿になって先に進もう。
自分に旅は無理だったのだと諦め、木陰を探し始めた時、数人の巨漢に囲まれた。
「護衛も付けずにここを通ろうなんて、バカだなこいつ」
「バカだから俺たちの仕事もしやすいってもんだろ」
「おい見ろよ、こりゃ掘り出しもんだぜ」
突然現れた男たちに、必死で逃げる算段をする。だが荒事に慣れた男が数人に対し、ソーマは一人だ。しかも疲弊している。
「このままねぐらに連れていこうぜ」
「おいおい、いくら美人だってこいつ男だぜ」
「男でも穴があるだろ。お前が嫌だったら俺が一人で楽しませてもらうぜ」
ソーマの品定めをして卑猥に笑う。
「あの……ちょっとなんですか?」
自分が望んでいるのは、ボンギュッボンのお姉さんであって、ガチムチの荒々しい汚らしい男ではない。しかもこんな卑猥な笑い方をする人は、生理的にご遠慮いただきたいのだが、なんと言えば離れてくれるのだろうか。
「あの……僕何も持ってませんよ」
現に、金は一円も持ち合わせていない。あるのは干し肉と乾燥した果物、それと服ぐらいだ。これだって竜の館にある綺麗目なものを着てきただけである。
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