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清野江紀と薬師寺咲那(第1話)
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《ユグドラシル》ーこの世界において、害蟲駆除を専門的に行うチームの名称だ。彼らは、前文明消滅後、新たな世界に突如として現れた害蟲と呼ばれる存在を退治する役目を担っている。
その《ユグドラシル》を率いているのが「双子の王」の異名を持つ和泉奏多、和泉鏡香の姉弟だ。今、2人は故あって他の領域に赴いている。
そんな2人の留守中において、チーム《ユグドラシル》が管理している属領に、大型の害蟲が出現したとの報告が入った。
したがって、チーム《ユグドラシル》の出撃となる。
ーー
「害蟲駆除業者参上~」
なんとも気怠げな女性の声が辺りに響いた。なかなかハスキーな声である。
チーム《ユグドラシル》の属領ー西のはずれに廃墟(前文明時代に建てられた施設らしい)が立ち並ぶエリアがあるが、ここに今二人の人物が姿を現した。どちらも20くらいの年齢だ。一方は二振りの剣を携えた黒髪の青年で、もう一方は髪を無造作にポニーテールに結った女性だ。
青年の方は、顔立ちは端正だが、どこか穏やかそうに見えて冴えない雰囲気を纏っている。しかし、その両手に携えた二振りの剣を見ればなかなかの使い手であることが窺える。
女性の方は、シャツに穴あきジーンズというラフな格好で、腰に刀(前文明時代でいえば日本刀)を佩いている。あまりやる気が感じられないように見えるが、眼光は鋭い。身長が高く、モデル並みのスタイルを有しており、その上顔立ちも堀の深い端正なものだ。
「薬師寺、気を引き締めろ」
「わーってるよ、江紀」
頭をぼりぼりとかきながら、女性が答えた。
青年の名は清野江紀、女性は薬師寺咲那という。二人とも《ユグドラシル》のメンバーだった。
「確か、この辺りで大型のやつらが出たんだよな?」
咲那が隣の相棒に確認する。ハスキーなボイスに加え、男性的な口調も加わり、それが却って薬師寺咲那という人物の魅力を引き立たせているかのようだった。
「ああ、そうだ」
江紀が端末からの情報を確認しながら答えた。
「出現した個体は、大型と亜人種型だな」
「亜人種型だと?」
咲那が端末情報を横からのぞき込む。
害蟲にも様々な種類があるが、中でも危険度が高いとされているのが亜人種型と呼ばれる存在だ。やつらは、人間並みかそれ以上の知性を備えており、高度な魔法も自在に操る。蟲は、その能力に応じてS~D級にランク分けされている。さすがに、チームを率いる「マスター」(S級クラスに匹敵する)には及ばないものの、その実力だけならはA級クラスだ。
要するに、並の相手ではないということだ。中途半端な実力で挑んでも、まず間違いなく返り討ちにされるだけだろう。
だが、このA級クラスに勝てればその実力は本物ということになる。害蟲駆除を生業としているものであれば、名声を上げるために避けて通れぬ登竜門といったところか。
「いいねえ、亜人種型が相手というのは」
思わぬ強敵とやり合えるということを知った咲那が楽し気に唇を歪めた。戦いは好きだったー特に、自分と互角以上の相手と戦えるというのなら、これほど面白いことはない。薬師寺咲那とはそういう人物なのだ。
「おい、江紀。今回はあたしに亜人種型をやらせな」
「いや、お前にはまだ時期尚早だろう」
亜人種型は並大抵の相手ではない。今まで、亜人種型と戦うことがあった場合、江紀が主にその役目を担ったものだった。
「お前ねぇ、お前ばかり亜人種型とやり合っていたら、こっちが成長できないだろ。たまにはあたしにやらせろ」
溜息交じりに咲那が要求し始めた。確かに、いつまでも江紀ばかりが亜人種型の相手をしていては、いつまでたっても彼女が成長できない。それはそれで困った話でもある。
「わかったよ」
江紀が折れた。
「今回はお前に任せる。ただ、危なくなった場合にはオレも動くからな」
「そうこなくっちゃな」
咲那が楽しそうに唇を歪めた。
「んじゃま、目的のやつらをさっさとたおしにいくとするかね」
こうして、今回は江紀が大型種を、咲那が亜人種型とやり合う段取りとなったーー
その《ユグドラシル》を率いているのが「双子の王」の異名を持つ和泉奏多、和泉鏡香の姉弟だ。今、2人は故あって他の領域に赴いている。
そんな2人の留守中において、チーム《ユグドラシル》が管理している属領に、大型の害蟲が出現したとの報告が入った。
したがって、チーム《ユグドラシル》の出撃となる。
ーー
「害蟲駆除業者参上~」
なんとも気怠げな女性の声が辺りに響いた。なかなかハスキーな声である。
チーム《ユグドラシル》の属領ー西のはずれに廃墟(前文明時代に建てられた施設らしい)が立ち並ぶエリアがあるが、ここに今二人の人物が姿を現した。どちらも20くらいの年齢だ。一方は二振りの剣を携えた黒髪の青年で、もう一方は髪を無造作にポニーテールに結った女性だ。
青年の方は、顔立ちは端正だが、どこか穏やかそうに見えて冴えない雰囲気を纏っている。しかし、その両手に携えた二振りの剣を見ればなかなかの使い手であることが窺える。
女性の方は、シャツに穴あきジーンズというラフな格好で、腰に刀(前文明時代でいえば日本刀)を佩いている。あまりやる気が感じられないように見えるが、眼光は鋭い。身長が高く、モデル並みのスタイルを有しており、その上顔立ちも堀の深い端正なものだ。
「薬師寺、気を引き締めろ」
「わーってるよ、江紀」
頭をぼりぼりとかきながら、女性が答えた。
青年の名は清野江紀、女性は薬師寺咲那という。二人とも《ユグドラシル》のメンバーだった。
「確か、この辺りで大型のやつらが出たんだよな?」
咲那が隣の相棒に確認する。ハスキーなボイスに加え、男性的な口調も加わり、それが却って薬師寺咲那という人物の魅力を引き立たせているかのようだった。
「ああ、そうだ」
江紀が端末からの情報を確認しながら答えた。
「出現した個体は、大型と亜人種型だな」
「亜人種型だと?」
咲那が端末情報を横からのぞき込む。
害蟲にも様々な種類があるが、中でも危険度が高いとされているのが亜人種型と呼ばれる存在だ。やつらは、人間並みかそれ以上の知性を備えており、高度な魔法も自在に操る。蟲は、その能力に応じてS~D級にランク分けされている。さすがに、チームを率いる「マスター」(S級クラスに匹敵する)には及ばないものの、その実力だけならはA級クラスだ。
要するに、並の相手ではないということだ。中途半端な実力で挑んでも、まず間違いなく返り討ちにされるだけだろう。
だが、このA級クラスに勝てればその実力は本物ということになる。害蟲駆除を生業としているものであれば、名声を上げるために避けて通れぬ登竜門といったところか。
「いいねえ、亜人種型が相手というのは」
思わぬ強敵とやり合えるということを知った咲那が楽し気に唇を歪めた。戦いは好きだったー特に、自分と互角以上の相手と戦えるというのなら、これほど面白いことはない。薬師寺咲那とはそういう人物なのだ。
「おい、江紀。今回はあたしに亜人種型をやらせな」
「いや、お前にはまだ時期尚早だろう」
亜人種型は並大抵の相手ではない。今まで、亜人種型と戦うことがあった場合、江紀が主にその役目を担ったものだった。
「お前ねぇ、お前ばかり亜人種型とやり合っていたら、こっちが成長できないだろ。たまにはあたしにやらせろ」
溜息交じりに咲那が要求し始めた。確かに、いつまでも江紀ばかりが亜人種型の相手をしていては、いつまでたっても彼女が成長できない。それはそれで困った話でもある。
「わかったよ」
江紀が折れた。
「今回はお前に任せる。ただ、危なくなった場合にはオレも動くからな」
「そうこなくっちゃな」
咲那が楽しそうに唇を歪めた。
「んじゃま、目的のやつらをさっさとたおしにいくとするかね」
こうして、今回は江紀が大型種を、咲那が亜人種型とやり合う段取りとなったーー
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