テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

土竜の街は・・・？（第10話）

「おーい、みんな、お客さんだよ」

　ベンジャミンが家に入るなり、大声で家人を呼び出す。

「あらあら、これはまあ、ようこそいらっしゃいました」

「おお、何か人間がいっぱいいるぞ！」

「本当だ、人間だ！」

　部屋の奥から、土竜の家族が現れ、挨拶してくれた。ベンジャミンの奥さんらしき女性の土竜と、あとは5人の子供土竜ー事前にベンジャミンから聞かされていた通りの家族構成だった。

　子供たちにとっては、人間のお客さんというのは非常に珍しいらしく、晶たちを興味深く観察し、ワイワイと騒いでいた。

「こら、お客さんに失礼だぞ、お前ら」

「すいませんねえ、この子達ったら、こら、静かにしなさい」

　土竜の夫婦が元気いっぱいの子供達をたしなめる。

「いえいえ、構いませんよ、元気なお子さんたちで何よりです」

　近くに寄ってきた子供土竜の頭を軽く撫でてやりながら、晶は自己紹介を行った。

「オレは吾妻晶です。大樹にて、害蟲駆除業者をやっています。そして・・・」

「わしはモリガン。秋の領域最大の魔女じゃ、みんなよろしくな」

「私は清野早苗です、皆さん元気で楽しそうですねぇ」

「吾輩はミケと申しますニャー。よろしくニャ」

　晶に続き、それぞれ自己紹介を行う。この分だと、ベンジャミンの家族とも打ち解けるのは早そうだ。

「まあまあ、ご丁寧に。私はベンジャミンの妻のイレイスです。よろしくお願いいたしますね」

「そして、こいつらがおいらの子供達だ。やんちゃな奴らで悪戯ばかりするから、本当困っちゃうんだよな～」

　ベンジャミンはそう言いつつも、子供たちのことが可愛らしくて仕方がないらしく、頬のあたりが自然と緩んでいるように見える。我が子に対する愛情は、土竜も人間も変わりはないというところだろう。

「さあさ、皆さん、今日は本当にお疲れでしょうから、ぜひとも我が家でお休みになってくださいな。今食事もご用意いたしますからね」

「ああ、頼んだよイレイス。おいらは晶たちを部屋に案内してくるから」

　土竜の夫婦は手際よく客人に対応し始めた。

　晶たちの周りには、まだ物珍しいのか、土竜の子供たちがくっついて歩いている。早くも、ミケさんがいじくりまわされ始めた。

「おお、このニャンコの髭、伸びるぞ」

「わぁ、本当だ！」

「ウニャー、髭を引っ張るニョは勘弁してほしいニャー」

　その光景を見た晶が、モリガンを振り返り、

「いつぞやで見たような覚えがあるんだがな・・・魔女殿」

「な、何のことだか、わしにはさっぱりじゃ！」

　わざとらしく、口笛を吹く真似をしながら、そっぽを向くモリガンであった。ミケさんと最初に出会った時に、自分も同じことをしていたので、多少バツが悪かったのだろ。

「ウニャー、見ていないで助けてくれニャー」

　結局はどこに行っても玩具にされる運命のミケさんであったー。