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モリガン一人旅(第6話)

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 モリガンの命を受けて、ひたすら目的の空域を目指す使い魔ー。

 小刻みに転移魔法を繰り返しながら、問題の魔力のぶつかり合いがあった付近にたどり着く。そして、この使い魔が見た光景が、そのままモリガンの目の前に立体映像として転送されるという仕組みであった。

「ほう・・・」

 使い魔から送られてきた映像に、思わず驚愕の色を含んだ呟きが出るモリガン。

「やはり、飛空鎧同士の戦いじゃったか・・・」

 そこに映し出されていた光景は、4機の飛空鎧同士の戦いの場面であった。

「・・・あの1機は、もうすぐ落ちるな・・・」

 これらの飛空鎧から発せられる魔力の波動を感じ、大体の戦況を理解していたモリガンであったが、実際に目の前でその光景をじかに見てみると、より分かりやすい。

 ちなみに、この立体映像は、魔力の高い素質を持つ者ー要は、モリガンと同じくらいの魔力を有している者にしか知覚できなくしている。したがって、立体映像からもたらされる激しい戦闘音なども、他の人には一切聞こえることはない。

「・・・実際に殺し合いをやっておる連中にとっては不謹慎かもしれんが、これはちょっとした戦争映画のワンシーンみたいなものじゃのう」

 立体映像からもたらされる戦闘の様子を、固唾をのんで見守るモリガン。ついに、最初の1機が墜ちるー。

「勝ったのは、あの紫色の機体か・・・確かに、こやつから感じられる魔力の波動は桁外れじゃが・・・」

 それを相手に今まで戦ってきた、つい今しがた墜落を始めた機体も、パイロットは相当の腕前だろうとモリガンは思った。

 そして、そこから先の勝負は、ほぼ一瞬で終わったのだ。むしろ、それまでの戦いの方がメインであり、残る2機との戦いは、単なる後始末であるかのように思われた。

 まず、残った2機のうち、1機については巨大な魔法弾を放ち、爆破ー続いて、残りの機体を真っ二つに両断ーどうやら、この戦いは、先ほど墜とされた最初の1機とのやり合いでそのほとんどを費やされていたようだった。

「・・・あの紫のやつ、魔法まで使えるか・・・!」

 飛空鎧の戦いは、主に通常兵器が主となる、魔力回路も備えてはいるが、実際にはその魔力の大半は飛行能力の方に充てられているからだ。となると、この紫の機体は、さらにそれよりも性能が上だということがわかる。

「あの紫のやつは・・・おそらくは東方のやつらのものか」

 この空域でも、東方出身者によるチームが活動しているということは、噂に聞いたことがある。なるほど、あのやたらと強い紫の機体がそれだというわけか。

「まあ、好き好んで関わり合いにはなりたくはないのう」

 今しがたの戦闘で犠牲になった連中の冥福を祈りながら、モリガンは使い魔を呼び戻そうとしたーが。

「む!?」

 紫の機体が、突如雲海へと降下を始める。もしかしたら、先ほど撃ち漏らした機体を追うつもりなのかもしれない。

「・・・もう少し、使い魔にあとをつけさせてみるか」

 なぜだか、気になったので、モリガンは先ほど呼び戻そうとした使い魔をそのまま尾行させてみることにしたー。
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