百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

文字の大きさ
13 / 499
第1章 開幕

第13話 勝負の行方は

しおりを挟む
 洋子の首と腹部を狙って放たれた美奈のチャクラム。そして、それらを迎え撃とうとする洋子。
 亜麻色の髪を闘気が巻き起こす風に靡かせ、洋子は自らの首筋を狙ったチャクラムを弾き返す。食らえば確実に致命傷ー擬体破損率100%に迫るのは必至だった。
「・・・!」
 だが、もう一つのチャクラムに関してはさすがに回避しきれない。一方のチャクラムを弾き返した後、わずかに後方に跳び退って何とか致命傷は避けられたもののー。
「荒垣洋子、擬体破損率12%」
 ジャッジの音声が無情に響き渡る。もう一方のチャクラムが洋子の腹部を掠め、ダメージを与えていた。
「・・・なるほど、これが擬体を斬られるってことだね・・・」
 洋子は斬られた箇所を抑えながら、
「確かに美奈の言うとおりだな・・・痛くはないけど、なんか気持ち悪い」
 腹から何か激しい波のようなものが体の内部まで浸透していくような感じだろうか・・・確かに何度も味わいたくはない感触である。
「二つ同時をかわすのは、さすがに難しいでしょ?」
 自分の手元に戻ってきたチャクラムを構えながら、余裕綽々と言った感じで、美奈が次の攻撃のタイミングを窺っている。
「まあね・・・でも」
 洋子も負けじと刀を構え直し、少しずつ美奈との距離を詰め始めた。
「だからこそやりがいもあるってことさ!」
 言い終わるか否かというタイミングで、再び駆け出す洋子。それを見て、
「・・・また同じパターンかしら?言っとくけど、最初の一撃で、大体アンタの動きやスピードは把握してるわよ」
 美奈は後方へと跳躍し、可能な限り洋子との距離を保とうとする。もちろん、その間にも、攻撃のタイミングを計るのを忘れてはいなかった。
 ・・・が。
「同じパターンじゃ面白くないだろ?だから、こうするんだよ!!」
 洋子の刀が振るわれるーその斬撃は、美奈には全く届かない距離のはずだったが、
「・・・え!?」
 まるで、刀から衝撃波でも発せられたかのように、距離を保っていたはずの美奈の体ー正確には擬体ーを切り裂いていた。
「な?」
 驚愕を隠し切れない美奈ー確かに距離は十分とっていたはずなのに、相手の斬撃はこちらに届いていたのだ。
 まるで、洋子の刀から、かまいたちのようなものが放たれたーそんな感じであった。
「川村美奈、擬体破損率26%」
 何とか、直感的に回避して致命的なダメージは避けたものの、さすがに擬体破損率が25%以上に達すると、美奈自身にも焦りが出てきた。
「・・・どうやら、アンタの刀って、遠距離攻撃も可能のようね」
 今回斬られたのは、右腕の部分ーもし、これが擬体ではなく、生身だったら、まず間違いなく右腕が飛んでいただろう一撃だった。また、右腕だけではなく、一部右わき腹にもその一撃は到達していたようだ。痛みは感じぬとはいえ、斬られた箇所の衝撃自体は伝播するので、自分がどれくらいのダメージを受けたのか、ジャッジの音声を聞くまでもなくわかっていた。
「・・・それとも、それもとっさの一撃なのかしら?」
 単純に距離さえ取っていれば勝てるというわけではないことがわかってきたので、美奈も今まで以上に慎重に洋子に対峙する。
「うーん、半分自覚あって、半分は無意識、みたいな感じ?」
 洋子自身も、まだよくわかっていないのか、少し首をかしげながら、なんとも中途半端な返事をする。
「・・・何それ、まるでシュレディンガーの猫みたいなもんじゃない?半死半生の猫、みたいな」
「・・・あれって、箱の中の猫を覗いたら生きてるか死んでるかって話だろ?それとは違うんじゃないかなぁ、この場合」
「まあ、それはどうでもいいのよ・・・つまり、洋子自身もよくわかってないってことなんでしょ?自分でもよくわかってないのによくここまで粘れるわよね、全く」
 呆れ顔の美奈に対し、洋子は
「まあ、いいんじゃない?そんなのどっちでもさ・・・」
 もともと楽天的な性格の洋子である。あまり深く物事を考えるタチでもなかった。
「それよりも、そろそろ決着をつけようよ・・・美奈、アンタの首、あたしがもらい受けるよ!!」
 洋子の闘気の高まりがさらに激しくなる。どうやら、洋子は次の一撃で一気にけりをつけるつもりらしい。
「あたしは全力でアンタと戦った。勝っても負けても後悔はない」
 そんな洋子の姿を見て、美奈も自身に気合を入れ直す。
「それはあたしも同じよ・・・洋子、アンタの首はあたしがもらう・・・他の誰にも渡すつもりはないから!!」
 そして、二人の少女は同時に叫んだー。
「いざ、勝負!!」
 二人の少女の喊声は、神のおわす社に響き渡った。
 ついに、二人の戦いに終止符が打たれるー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【完結】【百合論争】こんなの百合って認めない!

千鶴田ルト
ライト文芸
百合同人作家の茜音と、百合研究学生の悠乃はSNS上で百合の定義に関する論争を繰り広げる。やがてその議論はオフ会に持ち越される。そして、そこで起こったこととは…!? 百合に人生を賭けた二人が、ぶつかり合い、話し合い、惹かれ合う。百合とは何か。友情とは。恋愛とは。 すべての百合好きに捧げる、論争系百合コメディ!

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

処理中です...