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第1章 開幕
第14話 戦いの果てに
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新垣洋子、川村美奈ー両者ともに、最後の攻撃に打って出た。
そんな二人の様子を、文字通り高みの見物をしている者達がいた。
「どうやら、そろそろ決着が着きそうだね・・・」
ローブに隠された顔ーだが、口元は露出させている結城司が、さも愉快気に口の端を歪めている。
「今のところ、単純に擬体破損率だけで比較すれば、荒垣洋子の方が優位に立っているようにも見えるけど・・・彼女たち自身が言ってた通り、「一撃必殺」なんてのもあり得るからね」
「まあ、お互いそれに持っていくつもりだろうな・・・どちらが勝つかはまだわからんな」
モニターの中の二人は、それぞれにお互いの闘気を高めつつ、最後の一撃を放とうとしている。彼女たちの体を中心に、闘気によって巻き起こされた風が吹き荒れているかのようだった。それにより、二人の髪やスカートが激しく揺れ動くその姿は、闘気の巻き起こす激流の中に煽情的なものも内包していた。
「・・・両者、戦闘行為に移行してください」
その様子を司の隣で冷徹に見ていた来栖が、ふと他のモニターからの音声に気が付き、そこに目をやる。
「・・・!他のグループでも戦いが・・・」
洋子たちを映したモニターの2つ隣のものに、他のグループでの戦いの光景が映し出されたものがあった。そのジャッジの前半部分の音声を聞きそびれたので、誰と誰が戦っているのか、名前はよくわからなかったーまあ、後で確認すればいいだけの話だったが。
「・・・あれは・・・青龍か・・・って、もう終ってるじゃないか」
司が、驚愕を隠さず思わず叫ぶ。
そのモニターに映っていたのは、刀を構えた銀髪の少女ー髪は長く、すらりとした長身は、いささか日本人離れしているともいえる。
対戦者は・・・既に、首がなかった。いや、その首は、既に銀髪の少女の手に渡っていたのだった。
一瞬遅れて、首を失った敗北者の胴体から、まるで間欠泉のように鮮血が吹き上がる。そして、そのままばたりと倒れた。
「勝利者、一条紗耶香」
敗北者の首を高らかと掲げ、銀髪の少女は自らの勝利を宣言する。ジャッジも、その宣言を受け入れた形となっていた。
「へえ、あの子、かなり強いね」
敗北者の名前は後で確認するとして・・・一条紗耶香という銀髪の少女に興味を向ける司。
「戦いが始まって、ほぼ一瞬だったのだろうな・・・おそらく2手でやったのだろう。最初の一撃で擬体破損率を100%にし、そして間髪入れずに首を刎ねた・・・まあ、相手を苦しまずに逝かせたのは、せめてもの慈悲ということか」
一条紗耶香という少女は、自らが刎ねた首をただ淡々と近くのベンチに梟首する。名前が書かれた首札をつけられ、ベンチの上に無造作に置かれた敗者の首ーその顔に残されていたのは、「驚愕」の表情であった。
おそらく、この敗北者は最期自分の身に何が起こったのかさえ分からなかっただろう。
「慈悲・・・というより、手早く「処理した」って感じじゃないの?」
司が、モニター内の一条紗耶香を顎で示す。
「彼女の表情を見てれば、何かつまらなそうだし」
「・・・」
戦いが始まって終わりを告げるまで、そして敗北者を梟首するまで、たったの1分も経過していなかった。司の言う通り、彼女はただ相手を「処理した」だけだとも言える。
「つまりは、彼女にとってはその程度の相手だったってことでしょ?言葉は悪いかもしれないけどさ、相手が「雑魚」だった・・・とか?」
「・・・なるほどな」
来栖も納得したようだった。それほどまでに、一条紗耶香の一連の行動は「事務的」「機械的」にも見えた。
「まあ、彼女の戦いについては、後で改めて映像を確認しようか・・・今は、こっちの方が最優先だ」
そう、これから荒垣洋子と川村美奈の戦いに終止符が打たれようとしている。その決着については見逃すわけにはいかない。
「あまりにも実力に差がありすぎると、あの一条紗耶香みたいなことになるからね・・・あれじゃあ一瞬過ぎてみているこっちもつまらないよ」
「・・・まあ、それは我々が傍観している立場だからこそ言えるのだがな」
「傍観は権力者の特権さ・・・古代ローマじゃ、市民階級の連中が剣闘士同士に殺し合いをさせてそれを娯楽にしてたわけだしね」
「確かにな」
楽し気に体を揺らす司と、半ば呆れながらもそれに相槌を打つ来栖ー。
二人の視線が、洋子たちの戦いを映したモニターへと再び戻っていく。
そんな二人の様子を、文字通り高みの見物をしている者達がいた。
「どうやら、そろそろ決着が着きそうだね・・・」
ローブに隠された顔ーだが、口元は露出させている結城司が、さも愉快気に口の端を歪めている。
「今のところ、単純に擬体破損率だけで比較すれば、荒垣洋子の方が優位に立っているようにも見えるけど・・・彼女たち自身が言ってた通り、「一撃必殺」なんてのもあり得るからね」
「まあ、お互いそれに持っていくつもりだろうな・・・どちらが勝つかはまだわからんな」
モニターの中の二人は、それぞれにお互いの闘気を高めつつ、最後の一撃を放とうとしている。彼女たちの体を中心に、闘気によって巻き起こされた風が吹き荒れているかのようだった。それにより、二人の髪やスカートが激しく揺れ動くその姿は、闘気の巻き起こす激流の中に煽情的なものも内包していた。
「・・・両者、戦闘行為に移行してください」
その様子を司の隣で冷徹に見ていた来栖が、ふと他のモニターからの音声に気が付き、そこに目をやる。
「・・・!他のグループでも戦いが・・・」
洋子たちを映したモニターの2つ隣のものに、他のグループでの戦いの光景が映し出されたものがあった。そのジャッジの前半部分の音声を聞きそびれたので、誰と誰が戦っているのか、名前はよくわからなかったーまあ、後で確認すればいいだけの話だったが。
「・・・あれは・・・青龍か・・・って、もう終ってるじゃないか」
司が、驚愕を隠さず思わず叫ぶ。
そのモニターに映っていたのは、刀を構えた銀髪の少女ー髪は長く、すらりとした長身は、いささか日本人離れしているともいえる。
対戦者は・・・既に、首がなかった。いや、その首は、既に銀髪の少女の手に渡っていたのだった。
一瞬遅れて、首を失った敗北者の胴体から、まるで間欠泉のように鮮血が吹き上がる。そして、そのままばたりと倒れた。
「勝利者、一条紗耶香」
敗北者の首を高らかと掲げ、銀髪の少女は自らの勝利を宣言する。ジャッジも、その宣言を受け入れた形となっていた。
「へえ、あの子、かなり強いね」
敗北者の名前は後で確認するとして・・・一条紗耶香という銀髪の少女に興味を向ける司。
「戦いが始まって、ほぼ一瞬だったのだろうな・・・おそらく2手でやったのだろう。最初の一撃で擬体破損率を100%にし、そして間髪入れずに首を刎ねた・・・まあ、相手を苦しまずに逝かせたのは、せめてもの慈悲ということか」
一条紗耶香という少女は、自らが刎ねた首をただ淡々と近くのベンチに梟首する。名前が書かれた首札をつけられ、ベンチの上に無造作に置かれた敗者の首ーその顔に残されていたのは、「驚愕」の表情であった。
おそらく、この敗北者は最期自分の身に何が起こったのかさえ分からなかっただろう。
「慈悲・・・というより、手早く「処理した」って感じじゃないの?」
司が、モニター内の一条紗耶香を顎で示す。
「彼女の表情を見てれば、何かつまらなそうだし」
「・・・」
戦いが始まって終わりを告げるまで、そして敗北者を梟首するまで、たったの1分も経過していなかった。司の言う通り、彼女はただ相手を「処理した」だけだとも言える。
「つまりは、彼女にとってはその程度の相手だったってことでしょ?言葉は悪いかもしれないけどさ、相手が「雑魚」だった・・・とか?」
「・・・なるほどな」
来栖も納得したようだった。それほどまでに、一条紗耶香の一連の行動は「事務的」「機械的」にも見えた。
「まあ、彼女の戦いについては、後で改めて映像を確認しようか・・・今は、こっちの方が最優先だ」
そう、これから荒垣洋子と川村美奈の戦いに終止符が打たれようとしている。その決着については見逃すわけにはいかない。
「あまりにも実力に差がありすぎると、あの一条紗耶香みたいなことになるからね・・・あれじゃあ一瞬過ぎてみているこっちもつまらないよ」
「・・・まあ、それは我々が傍観している立場だからこそ言えるのだがな」
「傍観は権力者の特権さ・・・古代ローマじゃ、市民階級の連中が剣闘士同士に殺し合いをさせてそれを娯楽にしてたわけだしね」
「確かにな」
楽し気に体を揺らす司と、半ば呆れながらもそれに相槌を打つ来栖ー。
二人の視線が、洋子たちの戦いを映したモニターへと再び戻っていく。
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