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第1章 開幕
第15話 洋子と美奈、決着の時・・・
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「はああぁぁぁ!」
「やああぁぁぁl」
洋子と美奈、二人の喊声が神社に木霊する。
そして・・・二人同時に斬りかかった。二人とも、接近戦に持ち込んだ形となった。
美奈は、戦いの最初、チャクラムによる遠距離攻撃主体で戦いを優位に進めようと考えていた。しかし、洋子が予測不可能な攻撃を仕掛けてくるので、彼女の間合いに入るのは覚悟のうえで最後は接近戦でけりをつけようとしていた。
洋子の刀は一振りに対し、美奈のチャクラムは両手ーこれには洋子もなかなか手古摺らされた。
「あんたの刀だと、あたしの武器を弾くのが精いっぱいでしょう?」
両手のチャクラムを連続で繰り出してくる美奈に対し、確かに洋子の方は防ぐので精一杯に見えた。
「・・・!」
洋子の左肘辺りをチャクラムが切り裂くー。
「荒垣洋子、擬体破損率17%」
洋子のダメージが蓄積され、その様子がジャッジを通して語られる。今はまだ、洋子の方がリードしているものの、状況としては芳しくはなかった。
「さすがに、接近戦に持ち込まれると、さっきまでのような変な技は使えないようね・・・というより、使ってる余裕自体がなくなるのかしら?
擬体破損率ではいまだにリードを許してはいるものの、苦悶の表情を浮かべる洋子を見て、余裕を取り戻す美奈。
確かに、今の洋子には、先ほどのような自分でもよくわからないような一撃を繰り出すような余裕はなかった。
「・・・舐めんな!何も小細工に頼るだけがあたしじゃない!」
とはいえ、洋子はそれでも美奈のチャクラムを防いではいる。先ほどのように体の一部を切り裂かれることがあるとしても、擬体破損率はさほど上昇しなかった。要するに、致命傷だけは何とか防いでいるのだ。
「悪いけど、これでとどめを刺させてもらうわ、洋子・・・愉しかったわよ、アンタとの戦い」
美奈が、両手のチャクラムに気を込め始める。チャクラムを構成する擬体の光の粒子がさらに輝きを増し、そして・・・。
「・・・!?」
先ほどまでとは比較にならないスピードで、チャクラムが繰り出される。
「う、うわあああ!」
たまらず悲鳴を上げる洋子。一方のチャクラムを弾こうとしたが、強度自体が強化されたらしく、逆に刀を弾かれそうになる。
「・・・負けるか!」
洋子も、自身の刀に気を込めるーだが、先ほどのような、「自分でもよくわかっていない状態での技」を繰り出すまでには至らなかった。
「・・・!」
やはり、あの技はまだ意識しながら出せるようなものではないらしかった。
とはいえ、全く効果がないわけでもなく、美奈の強化チャクラムを踏ん張りながらも何とか弾き返すことには成功したー。
だがー。
「・・・!!」
「終わりよ、洋子・・・チェックメイトだわ」
美奈の冷徹な声とともに、もう片方の強化チャクラムが、深々と洋子の腹部を貫いてー胴体を切断ー実際には擬体を切断していた。
「・・・あ、ああぁ」
洋子は、力なく、その場にへたり込む。自分の中の闘気ー擬体が消え、武器の刀も同時に消えたのを認識した。
「・・・荒垣洋子、擬体破損率100%」
ジャッジの無情な音声が、辺りに響き渡り、洋子は、自身の敗北を確信したー。
ーー
「・・・あたしの負けだ、美奈」
その場にへたり込んでいた洋子が、顔を上げて美奈の方を見やる。その表情は、どこかはにかんでいるようにも見えた。
「やっぱりだめだなぁ、あたし、昔から、本番には弱いタチなんだ」
そして、自虐的に呟く。そんな洋子の姿を、美奈は、先ほどまでの戦いの時とは打って変わって、どこか力が抜けたような感じで見つめていた。
「美奈、アンタとの戦いは楽しかったよ・・・さっきも言った通り、あたしは勝っても負けても後悔はない。あたしの首は、勝利者であるアンタのものだ」
そう静かに呟いて、美奈が己が首を刎ねやすいように、亜麻色の髪をかき分けてうなじを見せようとしたところで・・・。
「おおっと、これは邪魔だな、さすがに」
戦いの最中も首にかけたままのヘッドホンを外し、地面へと置く。音楽鑑賞が趣味の洋子にとっては、例え音楽を聴かない時であっても外すことのない必須のアイテムであった。そして、改めて、髪をかき分け、白いうなじを露出させた。
「この言葉で使い方あってるのか知らないけどさ・・・介錯を頼むよ」
白く細く、少しでも力を加えれば、折れてしまいそうな脆さを内包した、洋子の首筋。美奈は、震える手で、思わず美奈の首筋に触れた。
「おいおい、これから首を刎ねるんだろ?そうしないと、美奈がペナルティに合うよ」
「洋子・・・あたし」
美奈の指が、洋子のうなじから喉へと伸ばされる。それをくすぐったく思いながら、その指を引きはがす洋子。
「勝利者は、速やかに敗北者の首を切断してください」
ジャッジの声が残酷に告げる。負けたものは、その首を刎ねられ晒される。それがこの大会のルールだった。
「洋子・・・」
美奈が、声を詰まらせながら、洋子の名前を再び呼んだ。洋子との別れの時は、すぐそこまで迫っていたー。
「やああぁぁぁl」
洋子と美奈、二人の喊声が神社に木霊する。
そして・・・二人同時に斬りかかった。二人とも、接近戦に持ち込んだ形となった。
美奈は、戦いの最初、チャクラムによる遠距離攻撃主体で戦いを優位に進めようと考えていた。しかし、洋子が予測不可能な攻撃を仕掛けてくるので、彼女の間合いに入るのは覚悟のうえで最後は接近戦でけりをつけようとしていた。
洋子の刀は一振りに対し、美奈のチャクラムは両手ーこれには洋子もなかなか手古摺らされた。
「あんたの刀だと、あたしの武器を弾くのが精いっぱいでしょう?」
両手のチャクラムを連続で繰り出してくる美奈に対し、確かに洋子の方は防ぐので精一杯に見えた。
「・・・!」
洋子の左肘辺りをチャクラムが切り裂くー。
「荒垣洋子、擬体破損率17%」
洋子のダメージが蓄積され、その様子がジャッジを通して語られる。今はまだ、洋子の方がリードしているものの、状況としては芳しくはなかった。
「さすがに、接近戦に持ち込まれると、さっきまでのような変な技は使えないようね・・・というより、使ってる余裕自体がなくなるのかしら?
擬体破損率ではいまだにリードを許してはいるものの、苦悶の表情を浮かべる洋子を見て、余裕を取り戻す美奈。
確かに、今の洋子には、先ほどのような自分でもよくわからないような一撃を繰り出すような余裕はなかった。
「・・・舐めんな!何も小細工に頼るだけがあたしじゃない!」
とはいえ、洋子はそれでも美奈のチャクラムを防いではいる。先ほどのように体の一部を切り裂かれることがあるとしても、擬体破損率はさほど上昇しなかった。要するに、致命傷だけは何とか防いでいるのだ。
「悪いけど、これでとどめを刺させてもらうわ、洋子・・・愉しかったわよ、アンタとの戦い」
美奈が、両手のチャクラムに気を込め始める。チャクラムを構成する擬体の光の粒子がさらに輝きを増し、そして・・・。
「・・・!?」
先ほどまでとは比較にならないスピードで、チャクラムが繰り出される。
「う、うわあああ!」
たまらず悲鳴を上げる洋子。一方のチャクラムを弾こうとしたが、強度自体が強化されたらしく、逆に刀を弾かれそうになる。
「・・・負けるか!」
洋子も、自身の刀に気を込めるーだが、先ほどのような、「自分でもよくわかっていない状態での技」を繰り出すまでには至らなかった。
「・・・!」
やはり、あの技はまだ意識しながら出せるようなものではないらしかった。
とはいえ、全く効果がないわけでもなく、美奈の強化チャクラムを踏ん張りながらも何とか弾き返すことには成功したー。
だがー。
「・・・!!」
「終わりよ、洋子・・・チェックメイトだわ」
美奈の冷徹な声とともに、もう片方の強化チャクラムが、深々と洋子の腹部を貫いてー胴体を切断ー実際には擬体を切断していた。
「・・・あ、ああぁ」
洋子は、力なく、その場にへたり込む。自分の中の闘気ー擬体が消え、武器の刀も同時に消えたのを認識した。
「・・・荒垣洋子、擬体破損率100%」
ジャッジの無情な音声が、辺りに響き渡り、洋子は、自身の敗北を確信したー。
ーー
「・・・あたしの負けだ、美奈」
その場にへたり込んでいた洋子が、顔を上げて美奈の方を見やる。その表情は、どこかはにかんでいるようにも見えた。
「やっぱりだめだなぁ、あたし、昔から、本番には弱いタチなんだ」
そして、自虐的に呟く。そんな洋子の姿を、美奈は、先ほどまでの戦いの時とは打って変わって、どこか力が抜けたような感じで見つめていた。
「美奈、アンタとの戦いは楽しかったよ・・・さっきも言った通り、あたしは勝っても負けても後悔はない。あたしの首は、勝利者であるアンタのものだ」
そう静かに呟いて、美奈が己が首を刎ねやすいように、亜麻色の髪をかき分けてうなじを見せようとしたところで・・・。
「おおっと、これは邪魔だな、さすがに」
戦いの最中も首にかけたままのヘッドホンを外し、地面へと置く。音楽鑑賞が趣味の洋子にとっては、例え音楽を聴かない時であっても外すことのない必須のアイテムであった。そして、改めて、髪をかき分け、白いうなじを露出させた。
「この言葉で使い方あってるのか知らないけどさ・・・介錯を頼むよ」
白く細く、少しでも力を加えれば、折れてしまいそうな脆さを内包した、洋子の首筋。美奈は、震える手で、思わず美奈の首筋に触れた。
「おいおい、これから首を刎ねるんだろ?そうしないと、美奈がペナルティに合うよ」
「洋子・・・あたし」
美奈の指が、洋子のうなじから喉へと伸ばされる。それをくすぐったく思いながら、その指を引きはがす洋子。
「勝利者は、速やかに敗北者の首を切断してください」
ジャッジの声が残酷に告げる。負けたものは、その首を刎ねられ晒される。それがこの大会のルールだった。
「洋子・・・」
美奈が、声を詰まらせながら、洋子の名前を再び呼んだ。洋子との別れの時は、すぐそこまで迫っていたー。
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