百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

文字の大きさ
44 / 499
第2章 確かなもの

第44話 離せ、そして、話せ

しおりを挟む
 門下生がほとんど帰り、青白く幽玄な月明かりのみが道場内を照らしている。
 そこにいるのは、一条紗耶香と薬師寺咲那の二人だけだった。
「話があるって言ってたよな、紗耶香。何だよ、改まって」
 咲那を呼び出したのは紗耶香の方だった。紗耶香と咲那、そして鏡香の3人は、道場の中では気の置けない関係だった。その一方で、剣術に関しては3人ともライバル関係にある。
「話っていうかさ・・・」
 咲那を呼び出した紗耶香自身、何を喋ればいいのかよくわかっていないような様子で、頭を掻き始める。そんな彼女を訝し気に見つめる咲那だったが、
「どうした、何か悩み事か・・・?あたしでよければ相談には乗るぞ」
 紗耶香がこうした態度を自分に見せるのは初めてのことだった気がする。咲那からみた紗耶香と言えば、いつも飄々としており、どこか食えないやつーそんな印象だった。
「紗耶香・・・?」
 その時、紗耶香が素早く動いた。
 バタンと大きな音が道場に響き渡り、咲那が紗耶香に押し倒され、道場の床にねじ伏せられている。
「・・・!?」
 咲那は、何が起こったのか、一瞬わからなかったが、それがすぐに紗耶香が自分を押し倒したのだとわかると、声を荒げて紗耶香を振り払おうとする。
「紗耶香、お前、いったい何してんだ!?離せ!!」
 だが、紗耶香が咲那を押さえつける力は思いのほか強く、咲那に振りほどくことはできなかった。
 そのまま押し倒された格好のまま、もがいているうちに、紗耶香が顔を近づけてきた。
「紗耶香・・・お前、何を・・・?う、うむぅ」
 咲那の唇に、紗耶香の柔らかなそれが押し当てられている。さらには、唇の隙間から、舌も入れられて、自分の舌と絡み合わされた。
「ふ、ふぬ・・・」
 咲那は、驚愕に目を見開くが、すぐに、自分がされたことに気が付き、彼女を振り払おうとさらにもがく。
「ふ・・・うう、んんん・・・く」
 だが、紗耶香は決して咲那を離さない。いつしか紗耶香の手はサラシをまいた咲那の胸元に伸ばされ、そしてー。
「くふぅ・・・んん・・・んぷ」
 その乳房を揉み下された。
「はふぅ・・・」
 自分の乳房を弄ばれ、さらには唇を勝手に奪われてーついに咲那の怒りが頂点に達した。先ほどまで押さえつけられていた両手が自由になっていたので、右手で思いっきり紗耶香の頬を張った。
 パァァン!
 月明かりのみが照らし出す道場の中、その音は秋の虫の声よりもはるかに響き渡りー。
「はあはあ・・・」
 ようやく、紗耶香が咲那から唇を離し、張られた自らの頬を手で押さえる。どこか茫然自失とした表情だった。
「・・・
 咲那は低い声音で、紗耶香を冷徹に睨みつけながら、静かに言った。
、と言っている」
 紗耶香の手は、未だに咲那の乳房の上にあった。
「離せ・・・そして、話せよ、紗耶香」
 先ほどよりは多少冷静さを取り戻したのか、咲那の口調もいつもの調子に戻りつつあるようだった。
「まずは、あたしを離しな・・・その後、なぜこんなことをしたのか、その理由を話しな、紗耶香」
 意外なほどすんなりと、紗耶香は咲那の言うことに従った。まずは、咲那を解放しー。
「理由、か・・・」
 どこか自嘲気味な、皮肉気な笑みを浮かべつつ、紗耶香は独り言ちた。
 正直に言うと、紗耶香自身もなぜこんなことをしたのか、実はよくわかっていない。それこそ、とっさの行動ー衝動的なものだったと言わざるを得なかった。
 だが、咲那にそれを話したところで、彼女が納得するはずもない。自分は、彼女の「初めて」を奪った人間なのである。
「話は、聞いてやる。だから、話せ、紗耶香」
 静かに告げられる、理由を求める声ー。
 紗耶香は、しばらくの間、咲那を見つめながら、静かに語り出したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...