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第2章 確かなもの
第44話 離せ、そして、話せ
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門下生がほとんど帰り、青白く幽玄な月明かりのみが道場内を照らしている。
そこにいるのは、一条紗耶香と薬師寺咲那の二人だけだった。
「話があるって言ってたよな、紗耶香。何だよ、改まって」
咲那を呼び出したのは紗耶香の方だった。紗耶香と咲那、そして鏡香の3人は、道場の中では気の置けない関係だった。その一方で、剣術に関しては3人ともライバル関係にある。
「話っていうかさ・・・」
咲那を呼び出した紗耶香自身、何を喋ればいいのかよくわかっていないような様子で、頭を掻き始める。そんな彼女を訝し気に見つめる咲那だったが、
「どうした、何か悩み事か・・・?あたしでよければ相談には乗るぞ」
紗耶香がこうした態度を自分に見せるのは初めてのことだった気がする。咲那からみた紗耶香と言えば、いつも飄々としており、どこか食えないやつーそんな印象だった。
「紗耶香・・・?」
その時、紗耶香が素早く動いた。
バタンと大きな音が道場に響き渡り、咲那が紗耶香に押し倒され、道場の床にねじ伏せられている。
「・・・!?」
咲那は、何が起こったのか、一瞬わからなかったが、それがすぐに紗耶香が自分を押し倒したのだとわかると、声を荒げて紗耶香を振り払おうとする。
「紗耶香、お前、いったい何してんだ!?離せ!!」
だが、紗耶香が咲那を押さえつける力は思いのほか強く、咲那に振りほどくことはできなかった。
そのまま押し倒された格好のまま、もがいているうちに、紗耶香が顔を近づけてきた。
「紗耶香・・・お前、何を・・・?う、うむぅ」
咲那の唇に、紗耶香の柔らかなそれが押し当てられている。さらには、唇の隙間から、舌も入れられて、自分の舌と絡み合わされた。
「ふ、ふぬ・・・」
咲那は、驚愕に目を見開くが、すぐに、自分がされたことに気が付き、彼女を振り払おうとさらにもがく。
「ふ・・・うう、んんん・・・く」
だが、紗耶香は決して咲那を離さない。いつしか紗耶香の手はサラシをまいた咲那の胸元に伸ばされ、そしてー。
「くふぅ・・・んん・・・んぷ」
その乳房を揉み下された。
「はふぅ・・・」
自分の乳房を弄ばれ、さらには唇を勝手に奪われてーついに咲那の怒りが頂点に達した。先ほどまで押さえつけられていた両手が自由になっていたので、右手で思いっきり紗耶香の頬を張った。
パァァン!
月明かりのみが照らし出す道場の中、その音は秋の虫の声よりもはるかに響き渡りー。
「はあはあ・・・」
ようやく、紗耶香が咲那から唇を離し、張られた自らの頬を手で押さえる。どこか茫然自失とした表情だった。
「・・・はなせ」
咲那は低い声音で、紗耶香を冷徹に睨みつけながら、静かに言った。
「はなせ、と言っている」
紗耶香の手は、未だに咲那の乳房の上にあった。
「離せ・・・そして、話せよ、紗耶香」
先ほどよりは多少冷静さを取り戻したのか、咲那の口調もいつもの調子に戻りつつあるようだった。
「まずは、あたしを離しな・・・その後、なぜこんなことをしたのか、その理由を話しな、紗耶香」
意外なほどすんなりと、紗耶香は咲那の言うことに従った。まずは、咲那を解放しー。
「理由、か・・・」
どこか自嘲気味な、皮肉気な笑みを浮かべつつ、紗耶香は独り言ちた。
正直に言うと、紗耶香自身もなぜこんなことをしたのか、実はよくわかっていない。それこそ、とっさの行動ー衝動的なものだったと言わざるを得なかった。
だが、咲那にそれを話したところで、彼女が納得するはずもない。自分は、彼女の「初めて」を奪った人間なのである。
「話は、聞いてやる。だから、話せ、紗耶香」
静かに告げられる、理由を求める声ー。
紗耶香は、しばらくの間、咲那を見つめながら、静かに語り出したのだった。
そこにいるのは、一条紗耶香と薬師寺咲那の二人だけだった。
「話があるって言ってたよな、紗耶香。何だよ、改まって」
咲那を呼び出したのは紗耶香の方だった。紗耶香と咲那、そして鏡香の3人は、道場の中では気の置けない関係だった。その一方で、剣術に関しては3人ともライバル関係にある。
「話っていうかさ・・・」
咲那を呼び出した紗耶香自身、何を喋ればいいのかよくわかっていないような様子で、頭を掻き始める。そんな彼女を訝し気に見つめる咲那だったが、
「どうした、何か悩み事か・・・?あたしでよければ相談には乗るぞ」
紗耶香がこうした態度を自分に見せるのは初めてのことだった気がする。咲那からみた紗耶香と言えば、いつも飄々としており、どこか食えないやつーそんな印象だった。
「紗耶香・・・?」
その時、紗耶香が素早く動いた。
バタンと大きな音が道場に響き渡り、咲那が紗耶香に押し倒され、道場の床にねじ伏せられている。
「・・・!?」
咲那は、何が起こったのか、一瞬わからなかったが、それがすぐに紗耶香が自分を押し倒したのだとわかると、声を荒げて紗耶香を振り払おうとする。
「紗耶香、お前、いったい何してんだ!?離せ!!」
だが、紗耶香が咲那を押さえつける力は思いのほか強く、咲那に振りほどくことはできなかった。
そのまま押し倒された格好のまま、もがいているうちに、紗耶香が顔を近づけてきた。
「紗耶香・・・お前、何を・・・?う、うむぅ」
咲那の唇に、紗耶香の柔らかなそれが押し当てられている。さらには、唇の隙間から、舌も入れられて、自分の舌と絡み合わされた。
「ふ、ふぬ・・・」
咲那は、驚愕に目を見開くが、すぐに、自分がされたことに気が付き、彼女を振り払おうとさらにもがく。
「ふ・・・うう、んんん・・・く」
だが、紗耶香は決して咲那を離さない。いつしか紗耶香の手はサラシをまいた咲那の胸元に伸ばされ、そしてー。
「くふぅ・・・んん・・・んぷ」
その乳房を揉み下された。
「はふぅ・・・」
自分の乳房を弄ばれ、さらには唇を勝手に奪われてーついに咲那の怒りが頂点に達した。先ほどまで押さえつけられていた両手が自由になっていたので、右手で思いっきり紗耶香の頬を張った。
パァァン!
月明かりのみが照らし出す道場の中、その音は秋の虫の声よりもはるかに響き渡りー。
「はあはあ・・・」
ようやく、紗耶香が咲那から唇を離し、張られた自らの頬を手で押さえる。どこか茫然自失とした表情だった。
「・・・はなせ」
咲那は低い声音で、紗耶香を冷徹に睨みつけながら、静かに言った。
「はなせ、と言っている」
紗耶香の手は、未だに咲那の乳房の上にあった。
「離せ・・・そして、話せよ、紗耶香」
先ほどよりは多少冷静さを取り戻したのか、咲那の口調もいつもの調子に戻りつつあるようだった。
「まずは、あたしを離しな・・・その後、なぜこんなことをしたのか、その理由を話しな、紗耶香」
意外なほどすんなりと、紗耶香は咲那の言うことに従った。まずは、咲那を解放しー。
「理由、か・・・」
どこか自嘲気味な、皮肉気な笑みを浮かべつつ、紗耶香は独り言ちた。
正直に言うと、紗耶香自身もなぜこんなことをしたのか、実はよくわかっていない。それこそ、とっさの行動ー衝動的なものだったと言わざるを得なかった。
だが、咲那にそれを話したところで、彼女が納得するはずもない。自分は、彼女の「初めて」を奪った人間なのである。
「話は、聞いてやる。だから、話せ、紗耶香」
静かに告げられる、理由を求める声ー。
紗耶香は、しばらくの間、咲那を見つめながら、静かに語り出したのだった。
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