百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第3章 虚ろなる人形

第113話 痛みと屈辱

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「さあ、氷上さん、いや、亜美・・・これでもう邪魔する者はいなくなったわ・・・思う存分楽しみましょう」
「楽しむですって?」
 敗北者である氷上は、潔くその首を捧げ、その人生に幕を下ろすくらいの選択肢しかない。
 これ以上、いったい何を「楽しむ」というのか。
 胡乱気な目で自分を見つめてくる氷上に対し、当の勅使河原はこれから起こることが楽しみで仕方がないといった様子で、
「あらあ、あなただって、いくら戦いに負けたからって、すぐに首を刎ねられたらたまらないでしょう?どうせ、あなたの人生はこれまでなのだし、だったらなおのこと、私とのプレイを楽しんでいたかがないと。
 勅使河原の端正な顔が、いささか下卑た笑みへと変わっている。
 ーなるほど、そう言うことかー
 この女ー勅使河原は、最後に敗北者である自分を凌辱するつもりでいるようだ。勅使河原にとっては楽しみで仕方がないことだが、氷上からしてみれば、人生の最後の幕をレイプによって下ろすことになるわけで、当然受け入れられるようなことではなかった。
 だが、一方で選択肢も与えられていないことも確かだった。
 ー一条さん、天内さんー
 氷上は、今はここにいない、最近知り合ったばかりの参加者の顔を思い浮かべた。
 ー今にして思えば、あの時あなたたちと戦った方がまだましだったかもしれないわー
 従容とした足取りで自分に近づいてくる勅使河原の残忍な笑みを茫然と見つめながら、氷上はこれから自らに訪れる運命に皮肉気な笑みを浮かべ、そしてー
「いいわ、あなたがこの戦いの勝利者なんだし、好きにしてちょうだい」

「・・・?」
「・・・どうした、葉月」
 ところ変わって、ここは近隣の学校ー既に廃校というか、この島にある以上、初めから学校としては機能していない、形だけの建物ではあるのだがーの保健室で、誰かに呼ばれたような錯覚を感じた天内葉月。そんな彼女を怪訝そうな目つきで見つめる一条紗耶香の姿があった。
「今、一瞬誰かに呼ばれたような気がするんすよ」
「ほう・・・?」
 少なくとも、この学校付近には誰も入り込んではいなかったはずだ。ただ、一方で葉月は妙に勘が鋭いところがある。
「あの勅使河原とかいう女なら、おそらくは当分あたしらには絡んでこないはずだ。あいつだって、結局は我が身は惜しいだろうしな」
 紗耶香は挑戦的な笑みを浮かべると、
「あいつが来ても、大丈夫だ。今度はあたし自身が叩きのめしてやる」
 紗耶香は、前に勅使河原マヤと対峙した際に、その潜在能力を密かに探っていた。さすがに葉月を凌駕する実力派あるようだが、少なくとも自分の敵ではないーそれが紗耶香の勅使河原に対する評価だった。
「あの女じゃないっすよ・・・他の誰かっすね・・・つい最近会ったばかりの」
 何かを探るように、目を泳がせる葉月を前に、
「最近なら、氷上か」
 紗耶香の脳裏に浮かんだのは、あの少女ー氷上亜美だった。
 そして、この後、紗耶香は葉月の勘が正しいことを思い知らされることとなる。
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