百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第3章 虚ろなる人形

第114話 氷上を工芸品に

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 一条紗耶香と天内葉月が潜伏している校舎ーその2階から見える樹に、なんとも形容しがたいものがぶら下がっていた。よく見ると、樹の枝にロープみたいなもので吊るされているようだった。
 たまたま、校舎の2階にいた葉月がそれを見つけ、近くにいた紗耶香に報告する。
「・・・なんか、変なものがぶら下がっているようなんすよ・・・先輩、一緒に確認しに行ってもらえないっすか?」
 前の勅使河原マヤの襲撃のこともある。それを考えれば、共に動いた方がいいだろう。
 二人は、目的のものを確認しに行くため、校舎の中庭へと急いだ。
 そして、そこで驚愕の物体を目にすることになるー
「あ、あ、これは・・・氷上亜美!!」
「それと・・・こっちの方は、相坂光・・・だったか」
 二人が目にしたものは、二人の少女の生首ーただし、その姿は、単に首をぶら下げたものではなかった。
 二人の首の切断面をそれぞれ縫合する形で首を繋ぎ、そして、その縫合面を隠すかのように包帯が巻かれて連結させられていたのだ。その状態で、樹の枝にぶら下げられていたのである。
 首札も二人分かけられていた。名前はー氷上亜美、相坂光ーと。
「・・・あの野郎」
 紗耶香は、二人の無残な最期の姿を見て、呪詛を吐いた。誰がやったかなんて一目瞭然だろう。
「これは・・・あたしらもいずれはこんな目に遭わせるという、あの女のメッセージ・・・すかね、先輩」
 連結された二人の生首を見て、戦慄に身を震わせながら、弱弱しい声で葉月が尋ねる。
「・・・なんともふざけたやつだ。あたしらに対する挑戦のつもりだろうな」
 氷上亜美と相坂光は、その死後ようやく文字通りと言える。ただ、氷上も相坂も、決して相手の視線を感じることはできない。決して交わることのない視線、だが結ばれてはいるー
 見方によっては、二人に対する最高の冒涜ともいえるだろう。
「・・・なあ、葉月。あたしは生前に二人の妹弟子の首を刎ねたろくでなしだが、相手の首を冒涜するようなつもりはなかった」
 大会運営側のルールでは、一度晒した首は、特定の事情を除いてその場から動かしてはならないとされている。つまりは、氷上も相坂も、大会が終わるまでこの状態のままだということだ。
「基本的に、この大会に出てる連中は、自分以外全て敵だ・・・だから、氷上もいずれは敵となっただろう。だが」
 紗耶香は、一旦ここで言葉を区切った。隣の葉月は黙って彼女の言うことに耳を傾けている。
「こんなまねされると、さすがにあたしも胸糞悪い。氷上のためにも、あいつの弔い合戦してやりたくなってきたぞ」
 あの勅使河原という女は、あまりにもー紗耶香は、ぶら下げられている氷上たちを見上げつつ、打倒勅使河原の意志を傍らの葉月に伝えた。
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