115 / 499
第3章 虚ろなる人形
第114話 氷上を工芸品に
しおりを挟む
一条紗耶香と天内葉月が潜伏している校舎ーその2階から見える樹に、なんとも形容しがたいものがぶら下がっていた。よく見ると、樹の枝にロープみたいなもので吊るされているようだった。
たまたま、校舎の2階にいた葉月がそれを見つけ、近くにいた紗耶香に報告する。
「・・・なんか、変なものがぶら下がっているようなんすよ・・・先輩、一緒に確認しに行ってもらえないっすか?」
前の勅使河原マヤの襲撃のこともある。それを考えれば、共に動いた方がいいだろう。
二人は、目的のものを確認しに行くため、校舎の中庭へと急いだ。
そして、そこで驚愕の物体を目にすることになるー
「あ、あ、これは・・・氷上亜美!!」
「それと・・・こっちの方は、相坂光・・・だったか」
二人が目にしたものは、二人の少女の生首ーただし、その姿は、単に首をぶら下げたものではなかった。
二人の首の切断面をそれぞれ縫合する形で首を繋ぎ、そして、その縫合面を隠すかのように包帯が巻かれて連結させられていたのだ。その状態で、樹の枝にぶら下げられていたのである。
首札も二人分かけられていた。名前はー氷上亜美、相坂光ーと。
「・・・あの野郎」
紗耶香は、二人の無残な最期の姿を見て、呪詛を吐いた。誰がやったかなんて一目瞭然だろう。
「これは・・・あたしらもいずれはこんな目に遭わせるという、あの女のメッセージ・・・すかね、先輩」
連結された二人の生首を見て、戦慄に身を震わせながら、弱弱しい声で葉月が尋ねる。
「・・・なんともふざけたやつだ。あたしらに対する挑戦のつもりだろうな」
氷上亜美と相坂光は、その死後ようやく文字通り結ばれたと言える。ただ、氷上も相坂も、決して相手の視線を感じることはできない。決して交わることのない視線、だが結ばれてはいるー
見方によっては、二人に対する最高の冒涜ともいえるだろう。
「・・・なあ、葉月。あたしは生前に二人の妹弟子の首を刎ねたろくでなしだが、相手の首を冒涜するようなつもりはなかった」
大会運営側のルールでは、一度晒した首は、特定の事情を除いてその場から動かしてはならないとされている。つまりは、氷上も相坂も、大会が終わるまでこの状態のままだということだ。
「基本的に、この大会に出てる連中は、自分以外全て敵だ・・・だから、氷上もいずれは敵となっただろう。だが」
紗耶香は、一旦ここで言葉を区切った。隣の葉月は黙って彼女の言うことに耳を傾けている。
「こんなまねされると、さすがにあたしも胸糞悪い。氷上のためにも、あいつの弔い合戦してやりたくなってきたぞ」
あの勅使河原という女は、あまりにもやりすぎるー紗耶香は、ぶら下げられている氷上たちを見上げつつ、打倒勅使河原の意志を傍らの葉月に伝えた。
たまたま、校舎の2階にいた葉月がそれを見つけ、近くにいた紗耶香に報告する。
「・・・なんか、変なものがぶら下がっているようなんすよ・・・先輩、一緒に確認しに行ってもらえないっすか?」
前の勅使河原マヤの襲撃のこともある。それを考えれば、共に動いた方がいいだろう。
二人は、目的のものを確認しに行くため、校舎の中庭へと急いだ。
そして、そこで驚愕の物体を目にすることになるー
「あ、あ、これは・・・氷上亜美!!」
「それと・・・こっちの方は、相坂光・・・だったか」
二人が目にしたものは、二人の少女の生首ーただし、その姿は、単に首をぶら下げたものではなかった。
二人の首の切断面をそれぞれ縫合する形で首を繋ぎ、そして、その縫合面を隠すかのように包帯が巻かれて連結させられていたのだ。その状態で、樹の枝にぶら下げられていたのである。
首札も二人分かけられていた。名前はー氷上亜美、相坂光ーと。
「・・・あの野郎」
紗耶香は、二人の無残な最期の姿を見て、呪詛を吐いた。誰がやったかなんて一目瞭然だろう。
「これは・・・あたしらもいずれはこんな目に遭わせるという、あの女のメッセージ・・・すかね、先輩」
連結された二人の生首を見て、戦慄に身を震わせながら、弱弱しい声で葉月が尋ねる。
「・・・なんともふざけたやつだ。あたしらに対する挑戦のつもりだろうな」
氷上亜美と相坂光は、その死後ようやく文字通り結ばれたと言える。ただ、氷上も相坂も、決して相手の視線を感じることはできない。決して交わることのない視線、だが結ばれてはいるー
見方によっては、二人に対する最高の冒涜ともいえるだろう。
「・・・なあ、葉月。あたしは生前に二人の妹弟子の首を刎ねたろくでなしだが、相手の首を冒涜するようなつもりはなかった」
大会運営側のルールでは、一度晒した首は、特定の事情を除いてその場から動かしてはならないとされている。つまりは、氷上も相坂も、大会が終わるまでこの状態のままだということだ。
「基本的に、この大会に出てる連中は、自分以外全て敵だ・・・だから、氷上もいずれは敵となっただろう。だが」
紗耶香は、一旦ここで言葉を区切った。隣の葉月は黙って彼女の言うことに耳を傾けている。
「こんなまねされると、さすがにあたしも胸糞悪い。氷上のためにも、あいつの弔い合戦してやりたくなってきたぞ」
あの勅使河原という女は、あまりにもやりすぎるー紗耶香は、ぶら下げられている氷上たちを見上げつつ、打倒勅使河原の意志を傍らの葉月に伝えた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】【百合論争】こんなの百合って認めない!
千鶴田ルト
ライト文芸
百合同人作家の茜音と、百合研究学生の悠乃はSNS上で百合の定義に関する論争を繰り広げる。やがてその議論はオフ会に持ち越される。そして、そこで起こったこととは…!?
百合に人生を賭けた二人が、ぶつかり合い、話し合い、惹かれ合う。百合とは何か。友情とは。恋愛とは。
すべての百合好きに捧げる、論争系百合コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる