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第4章 更なる戦い
第442話 ゲーム会場へようこそ82
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「はあはあ・・・」
戸隠とともに、彼女が見かけた洞穴へと身を隠す桐原。森の奥に、岩壁がそびえているのだが、そこに、確かに小さな洞穴が存在していたのだった。
桐原自身は意識していなかったことではあるが、彼女たちが森に入ってから、実はこの岩壁の傍を通っていた。その時に、戸隠はこの場所を見つけたらしい。いざという時のために、潜伏場所候補として考えていたのだろう。
「大丈夫か、桐原殿・・・」
既に汗だくの桐原に戸隠は声をかける。
「み、水が欲しい・・・」
大量の汗のために、額に髪が張り付いているだけでなく、ブラウスの中が透けて見えてしまっている。戸隠は、あまり不躾に今の彼女を見るのは忍びないと思ったのか、すぐに目を反らして洞穴の入り口の方へを見やった。
「水、か・・・この辺に川等あればよいが・・・」
戸隠自体は全くと言っていいほど汗をかいてはいない。幼いころから、いかなる環境でも耐えられるように体を鍛え上げられているからだろう。
だが、ごく普通に育てられた桐原にとっては、この高温多湿の中、全力疾走することは生命の危険にも関わってくる。このままだと、熱中症や脱水症状で本当に倒れてしまいかねなかった。
「一旦、森を抜けるにしても、あの魔物がいる限りは・・・」
先ほどより聞こえてくる音は遠くなったものの、未だに魔物の咆哮や少女たちの悲鳴じみた絶叫、そして激しい爆発音は断続的に続いている。多分、戸隠一人ならばなんとかうまくやり過ごして森を脱出できるのだろうが、桐原を見捨てていくことなどできはしない。
「近くに沢でもあれば・・・む」
ふと、戸隠は向かって右手の方角に目を向ける。そちらの方に耳を澄ませてみた。
もともと、戸隠の聴覚は常人よりも高い。わずかな音でさえ聞き逃さぬように、訓練を受けているというのもあるが、生まれつき耳がいいというのも事実なのだ。
ー・・・水の流れる音が聞こえるー
わずかだが、右手の方向に小川のせせらぎのような音を聞くことができた。距離的には、ここから少し離れてはいるものの、戸隠の足ならば行って帰ってくるのは造作もない距離と言えた。
ただ、その場所まで行ったとしても、水を入れる物がない。結局は、そこまで桐原を連れて行かなくてはならないだろう。
「桐原殿・・・あと少しだけ、動けるか?」
戸隠は、洞穴の奥で荒い呼吸をし続ける桐原にそっと声をかける。
「・・・な、何とか・・・」
桐原は、疲れ切った体に鞭を打つ形で何とか立ち上がった。この様子だと、立って歩くのがやっとといったところだろう。
「この穴の右手の方に、小川らしきものがあるようだ・・・そこまで何とかこらえてくれるか」
小川ーと聞いて、桐原も少しは希望が出たのか、目を輝かせた。
もう、喉は完全に乾いている。すぐにでも水を飲まなければ、本当に倒れてしまいそうだった。
戸隠とともに、彼女が見かけた洞穴へと身を隠す桐原。森の奥に、岩壁がそびえているのだが、そこに、確かに小さな洞穴が存在していたのだった。
桐原自身は意識していなかったことではあるが、彼女たちが森に入ってから、実はこの岩壁の傍を通っていた。その時に、戸隠はこの場所を見つけたらしい。いざという時のために、潜伏場所候補として考えていたのだろう。
「大丈夫か、桐原殿・・・」
既に汗だくの桐原に戸隠は声をかける。
「み、水が欲しい・・・」
大量の汗のために、額に髪が張り付いているだけでなく、ブラウスの中が透けて見えてしまっている。戸隠は、あまり不躾に今の彼女を見るのは忍びないと思ったのか、すぐに目を反らして洞穴の入り口の方へを見やった。
「水、か・・・この辺に川等あればよいが・・・」
戸隠自体は全くと言っていいほど汗をかいてはいない。幼いころから、いかなる環境でも耐えられるように体を鍛え上げられているからだろう。
だが、ごく普通に育てられた桐原にとっては、この高温多湿の中、全力疾走することは生命の危険にも関わってくる。このままだと、熱中症や脱水症状で本当に倒れてしまいかねなかった。
「一旦、森を抜けるにしても、あの魔物がいる限りは・・・」
先ほどより聞こえてくる音は遠くなったものの、未だに魔物の咆哮や少女たちの悲鳴じみた絶叫、そして激しい爆発音は断続的に続いている。多分、戸隠一人ならばなんとかうまくやり過ごして森を脱出できるのだろうが、桐原を見捨てていくことなどできはしない。
「近くに沢でもあれば・・・む」
ふと、戸隠は向かって右手の方角に目を向ける。そちらの方に耳を澄ませてみた。
もともと、戸隠の聴覚は常人よりも高い。わずかな音でさえ聞き逃さぬように、訓練を受けているというのもあるが、生まれつき耳がいいというのも事実なのだ。
ー・・・水の流れる音が聞こえるー
わずかだが、右手の方向に小川のせせらぎのような音を聞くことができた。距離的には、ここから少し離れてはいるものの、戸隠の足ならば行って帰ってくるのは造作もない距離と言えた。
ただ、その場所まで行ったとしても、水を入れる物がない。結局は、そこまで桐原を連れて行かなくてはならないだろう。
「桐原殿・・・あと少しだけ、動けるか?」
戸隠は、洞穴の奥で荒い呼吸をし続ける桐原にそっと声をかける。
「・・・な、何とか・・・」
桐原は、疲れ切った体に鞭を打つ形で何とか立ち上がった。この様子だと、立って歩くのがやっとといったところだろう。
「この穴の右手の方に、小川らしきものがあるようだ・・・そこまで何とかこらえてくれるか」
小川ーと聞いて、桐原も少しは希望が出たのか、目を輝かせた。
もう、喉は完全に乾いている。すぐにでも水を飲まなければ、本当に倒れてしまいそうだった。
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