百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第4章 更なる戦い

第474話 ゲーム会場へようこそ114

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「・・・殺さないの?」
 荒谷が自嘲気味に口角を釣り上げながら、首筋に短刀を突きつけたままのカヤを見やった。
「私は、アンタに負けたわ・・・少なくとも、今の私では絶対にアンタには勝てないのはわかってる」
 荒谷の言葉に、カヤは特に反応を示すわけでもなく、ただ冷徹に見下ろしているだけだった。
「さあ、早く私の首を落としなさいな・・・こんな大会に出ている以上、私だっていつ死んでもいいように覚悟はしているつもりよ」
「・・・言ったでしょ?今ここでアンタの首を落とすのは簡単だけどって」
 カヤの言葉に、新たには怪訝そうに眉を顰めた。
「なら、やればいいじゃない、さっさと・・・情けでもかけるつもりなのかしら?」
 荒谷のさっきの言葉は嘘ではない。隠れ蓑などといういささか邪道なアイテムを使用しているとはいえ、自分が敗北したら潔く死を受け入れるくらいのことは常に考えていた。
 右太ももを負傷し、さらには姿を消していても相手に気配を悟られ、あっさりと返り討ちに遭うーもう、これ以上戦う必要もなく、その勝敗は既に決しているのだ。
 だがー
「戦いに勝利したのが私だというのなら、アンタのこれからをどうするかを決定するのも私の方じゃない?」
 カヤは口角を釣り上げると、荒谷の首筋にあてがっていた短刀をすっと退いた。荒谷は、思わず自分の首筋に手をあてがう。
 首には傷一つなかった。まさしくただあてがわれていたというだけだった。
「なんで敗北者のアンタが私に指図するのよ?さっきも言った通り、アンタをこれからどうするかは、私が決めることだわ」
 軽く肩を竦めて、カヤは短刀をしまい込んだ。
 荒谷の中に屈辱の感情が芽生えた瞬間だった。
「・・・舐めてるの?あんた」 
 太ももの痛みに顔をしかめつつも、何とか起き上がりカヤに詰め寄った。
「・・・戦いに負けたらその場で終わりでしょう?ここでは」
 その勢いのまま、カヤの胸倉を掴んだ。だが、当のカヤは全くひるむ様子もない。その悠然とした態度もまた、荒谷を苛立たせるものだった。
「今のうちに殺さないと、いつかアンタのことを殺しに行くわよ」
 荒谷の強迫に対しても、カヤは全く動じる様子はない。嘲りの混じった小さなため息をつくと、
「アンタが私を殺しに来るですって・・・?」
 ふっと、その瞳を軽く閉じ、その後、かっと見開くと、逆に荒谷を締め上げ始めた。
「・・・ぐうっ!!」
 自分が胸倉を掴んでいたはずが、今度は逆の立場となってしまい、戸惑いと苦しさにうめき声を上げる荒谷。
 そんな彼女の姿に、カヤはふんと鼻を鳴らしながら、
「そんな日は永遠に来ないわよ・・・この未熟者め」
 吐き捨てるように言った。
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