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呪われた子 12
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村を捨てた一団は森の中を進み、町を目指した。森の奥を進んでいくと突然、森が開けて土があらわになる。土の大地は踏み固められゴロゴロした石が転がっていた。
だが、何よりもセヴルを圧倒したのは、山のようにそびえる石壁だった。
「これが町か……」
「中は、もっと珍しいよ」
誰かが言った。
一団は外壁の門の前で足止めされた。セヴルは、外壁を隅から隅まで見回してみる。
門番がやってきて村長と話をする。時折、門番がセヴルを見る。大きく首を振ると、セヴルに近づいてくる。
「あんた、蟲の外殻を貫いたのか?」
「え? ああ、うん。おかげで手がこうだけどね」
門番がセヴルの背中を何度も力強く叩く。
「あんたこそ勇者だね! デイモンティへようこそ! ここでは蟲を倒す兵士も沢山募集している。歓迎するよ」
門番は快く門の通過を許可してくれた。
村の一団とは、門を離れてすぐに別れることになった。父親を亡くした女の子は、泣き疲れて眠っていた。セヴルは、女の子の頭をなでてお別れの挨拶にした。
町は、常に動いていた。セヴルの目にはそう見えた。どこを見ても人間がいる。きれいに積み上げられた石で作られた家々。屋根や外壁も、地面でさえもいろいろな色に満ちていた。
歩き出すたびに感動が止まらなかった。
生まれてはじめて見る市場は、セヴルに衝撃を与えた。
「人間って、こんなに沢山いたのか……」
人の流れがセヴルをどんどんと奥へ奥へと押し流していく。やがて堅パンを扱っている店を見つけて、少し心を落ち着ける。
「普段見慣れたものを見るのって、安心するね!」
訳の分からないことを店主に告げると、店主が困った顔をする。感動に浸るセヴルは、自分がどんな身の上の人間であったかと言うことさえ忘れていた。
セヴルは、他の店も見てみる。
人の流れが一番大きいのは、食料品を扱っている辺りだった。よく見てみると、売っている物によって場所が決まっているようだった。
「そういえば、新しい服が欲しいな。もうこれ、着古してるし」
蟲の血や泥に汚れた布の服では、町行く人の目もきつく冷たいのだった。
服屋を眺めているときに、左手と右肩をつかまれた。
「こんなところに来てやがったか」
聞きなれた声は、マムルの小隊の連中だったからだ。前歯のない男が仲間に声をかける。
五、六人がすぐに集まってくる。
セヴルはそのまま路地の裏へ連れて行かれた。
「覚悟は出来てるんだろうな?」
建物の壁に押し当てられて、五人の男に取り囲まれた。どれも村で見知った顔だった。
「口が利けるうちに何か言っておくことはあるか?」
額の狭い男が、セヴルの髪をつかみ壁に何度も押し付ける。
「レハは、マムルが殺したんだ」
「恩人を呼び捨てにしたぜ、こいつ」
頭の薄い男が額の狭い男をあおる。
「嘘を言うんじゃねえ」
額の狭い男の拳が、セヴルの顔面を撃つ。
「お前は、レハとよく揉めてたじゃねえか」
五人の男たちは、次々とセヴルを痛めつける。
「あいつが石の大地に行くと知って、恨みを晴らしたんだろうが」
「俺たちの目はごまかせねえぞ」
「おい、やりすぎるなよ。警護に突き出すんだからよ」
浅黒い男の声が目をぎらつかせた男たちにどれだけ届いているのかわからない。
「わかってるよ」
だが、男たちの拳の雨はやむ気配はなかった。
「左の腕も折っちまえ」
地面に押し倒すと、セヴルを何度も蹴り上げる。セヴルは丸くなってそれを耐える。
「この人殺しが!」
俺は誰も殺してない!
跳んでくる足を、セヴルの左手がつかんだ。右手を布から引き抜くと、折れた剣を引き抜いて立ち上がる。その勢いに巻き込まれた男が、地面に転がる。他の男たちは一斉に距離をとる。セヴルは男の足を握ったまま、剣を振り上げる。
膨れ上がった顔面から覗く爛々とした目が、前歯のない男の恐怖を増幅させる。
「もういっぺん言ってみろ……。もういっぺん言ってみろ!」
前歯のない男の目から涙がこぼれる。
「た、頼む。殺さないでくれ。頼むよぉ」
「こら! 貴様、剣を捨てろ! 何をしてるか!」
路地へ警護の兵がやってくる。それでもセヴルは振り上げた剣で前歯のない男を脅し続けた。
「言ってみろよ! うっ……」
セヴルは、後ろから警備兵に殴られてその場に倒れこんだ。
村を捨てた一団は森の中を進み、町を目指した。森の奥を進んでいくと突然、森が開けて土があらわになる。土の大地は踏み固められゴロゴロした石が転がっていた。
だが、何よりもセヴルを圧倒したのは、山のようにそびえる石壁だった。
「これが町か……」
「中は、もっと珍しいよ」
誰かが言った。
一団は外壁の門の前で足止めされた。セヴルは、外壁を隅から隅まで見回してみる。
門番がやってきて村長と話をする。時折、門番がセヴルを見る。大きく首を振ると、セヴルに近づいてくる。
「あんた、蟲の外殻を貫いたのか?」
「え? ああ、うん。おかげで手がこうだけどね」
門番がセヴルの背中を何度も力強く叩く。
「あんたこそ勇者だね! デイモンティへようこそ! ここでは蟲を倒す兵士も沢山募集している。歓迎するよ」
門番は快く門の通過を許可してくれた。
村の一団とは、門を離れてすぐに別れることになった。父親を亡くした女の子は、泣き疲れて眠っていた。セヴルは、女の子の頭をなでてお別れの挨拶にした。
町は、常に動いていた。セヴルの目にはそう見えた。どこを見ても人間がいる。きれいに積み上げられた石で作られた家々。屋根や外壁も、地面でさえもいろいろな色に満ちていた。
歩き出すたびに感動が止まらなかった。
生まれてはじめて見る市場は、セヴルに衝撃を与えた。
「人間って、こんなに沢山いたのか……」
人の流れがセヴルをどんどんと奥へ奥へと押し流していく。やがて堅パンを扱っている店を見つけて、少し心を落ち着ける。
「普段見慣れたものを見るのって、安心するね!」
訳の分からないことを店主に告げると、店主が困った顔をする。感動に浸るセヴルは、自分がどんな身の上の人間であったかと言うことさえ忘れていた。
セヴルは、他の店も見てみる。
人の流れが一番大きいのは、食料品を扱っている辺りだった。よく見てみると、売っている物によって場所が決まっているようだった。
「そういえば、新しい服が欲しいな。もうこれ、着古してるし」
蟲の血や泥に汚れた布の服では、町行く人の目もきつく冷たいのだった。
服屋を眺めているときに、左手と右肩をつかまれた。
「こんなところに来てやがったか」
聞きなれた声は、マムルの小隊の連中だったからだ。前歯のない男が仲間に声をかける。
五、六人がすぐに集まってくる。
セヴルはそのまま路地の裏へ連れて行かれた。
「覚悟は出来てるんだろうな?」
建物の壁に押し当てられて、五人の男に取り囲まれた。どれも村で見知った顔だった。
「口が利けるうちに何か言っておくことはあるか?」
額の狭い男が、セヴルの髪をつかみ壁に何度も押し付ける。
「レハは、マムルが殺したんだ」
「恩人を呼び捨てにしたぜ、こいつ」
頭の薄い男が額の狭い男をあおる。
「嘘を言うんじゃねえ」
額の狭い男の拳が、セヴルの顔面を撃つ。
「お前は、レハとよく揉めてたじゃねえか」
五人の男たちは、次々とセヴルを痛めつける。
「あいつが石の大地に行くと知って、恨みを晴らしたんだろうが」
「俺たちの目はごまかせねえぞ」
「おい、やりすぎるなよ。警護に突き出すんだからよ」
浅黒い男の声が目をぎらつかせた男たちにどれだけ届いているのかわからない。
「わかってるよ」
だが、男たちの拳の雨はやむ気配はなかった。
「左の腕も折っちまえ」
地面に押し倒すと、セヴルを何度も蹴り上げる。セヴルは丸くなってそれを耐える。
「この人殺しが!」
俺は誰も殺してない!
跳んでくる足を、セヴルの左手がつかんだ。右手を布から引き抜くと、折れた剣を引き抜いて立ち上がる。その勢いに巻き込まれた男が、地面に転がる。他の男たちは一斉に距離をとる。セヴルは男の足を握ったまま、剣を振り上げる。
膨れ上がった顔面から覗く爛々とした目が、前歯のない男の恐怖を増幅させる。
「もういっぺん言ってみろ……。もういっぺん言ってみろ!」
前歯のない男の目から涙がこぼれる。
「た、頼む。殺さないでくれ。頼むよぉ」
「こら! 貴様、剣を捨てろ! 何をしてるか!」
路地へ警護の兵がやってくる。それでもセヴルは振り上げた剣で前歯のない男を脅し続けた。
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セヴルは、後ろから警備兵に殴られてその場に倒れこんだ。
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