23 / 30
呪われた子 23
しおりを挟む
23
部屋中に散らかったガラクタを指差して腹を抱えて床の上で笑い転げるサアラとガリウスだった。
「花が、鉢を斬った」
セヴルの右手には、一輪の花が握られている。花びらが落ちる。セヴルは床に落ちた花びらを見つめる。
「何、真面目な顔してるのよ」
「花びらが落ちた」
「そりゃあ、落ちるわよ。当然でしょ」
「これ、すごい力だよ」
部屋中を見回しながらガリウスは力強くうなずいた。セヴルは大して興味がなさそうに答える。
「そうだね」
「何を怒ってるのよ」
サアラが床に落ちた花びらをつまむ。それで床をこすってみるが、花びらはつぶれて丸まるだけだった。
「別に」
「これは神の与えた奇跡だね」
ガリウスがセヴルの右腕を引いて天井に向かって引き上げる。セヴルはすぐに腕をひねって逃れる。
「奇跡? 呪いの間違いじゃないのか?」
「こんなにすばらしい力が呪いのわけないじゃないか!」
高揚したガリウスの目が、セヴルに訴えかける。セヴルは目をそらした。
「こんな危ない力無い方がいいけどね」
「確かに危険ね。まさか、それで人を殺したの?」
「違うよ。決め付けるなよ」
「何よ! あんたは人殺しでしょ」
「俺は、誰も殺してない!」
「何よ、まだ言い逃れするつもり?」
「逃げてなんかない! 俺は蟲しか……」
言いかけて何かに気がつき、セヴルはゆっくりと部屋の隅に向かって歩き出す。
「な、何?」
「……蟲は逃げない」
呟くセヴル。それを見てサアラは不審がる。
「は?」
「大丈夫かい?」
覗き込むガリウス。セヴルはなおも呟き続ける。
「逃げないはずの蟲が逃げた……」
「やだ。頭おかしくなっちゃった?」
「逃げないはずの蟲が逃げる?」
ガリウスがセヴルの言葉を繰り返す。セヴルが急に振り返った。
「そうだよ。逃げるんだよ」
「どこによ」
サアラがセヴルを見る。その後ろでガリウスが大きな声を出す。
「わかった! 巣だね!」
「そう! 巣だ!」
盛り上がる二人を避けるようにサアラはベッドのふちに座り込んだ。
「やだ、あんな丸いのがうじゃうじゃいるなんて、気持ちが悪いわ」
「丸蟲じゃなくて、もっと足の長い奴だった」
「気持ち悪そう」
サアラが口を押さえる。セヴルはそれを無視して話を続ける。
「村で戦ったのは、胴が細長くて足も長かった。あいつが巣に戻ろうとしたなら……」
「そこに巣がある」
セヴルとガリウスが、腕をあわせる。サアラはため息をついてベッドの上に横になる。
「かも知れないでしょ? 楽観的過ぎるわよ、あんたたち」
そこへグロウがドアを開けて入ってくる。
「生き返ったって本当? うわっ、何これ汚い」
口を大きく開けて立ち止まる。セヴルが手を上げて答える。
「死んでないよ」
「泥棒でも入ったの?」
グロウは部屋の中を覗き込んだ。
「違うわよ」
「実験してたんだ。セヴルの右手の」
ガリウスが言い終えないうちに、グロウが叫んだ。
「あー、ずるい! 僕のときは、パンでしかやってくれなかったのに!」
「それよりすごいことに気がついたんだ」
「いい。聞かない」
そう言うと、グロウは部屋を出て行こうとする。
「わかった。見せてやるからさ」
「いい。僕、そんな子どもじゃないもん」
言い放つと、グロウはそのまま勢いよくドアを閉めて出て行ってしまう。
「十分、子どもじゃないの」
「じゃあ、片付けようか」
セヴルは足を押さえる。
「いたたたた……」
「そうだわ、昼食の確認をしないと」
サアラは、ガリウスが声をかける隙もなくするりと部屋を出て行ってしまった。
「僕は、何度もセヴルを運んだのに……」
ガリウスの寂しそうなまなざしが、セヴルをいつまでも見つめる。
「わかったよ! やるよ、やるから!」
セヴルがガラクタを拾い始めるのを見て、ようやくガリウスが笑った。
「よし、頑張ろう!」
部屋中に散らかったガラクタを指差して腹を抱えて床の上で笑い転げるサアラとガリウスだった。
「花が、鉢を斬った」
セヴルの右手には、一輪の花が握られている。花びらが落ちる。セヴルは床に落ちた花びらを見つめる。
「何、真面目な顔してるのよ」
「花びらが落ちた」
「そりゃあ、落ちるわよ。当然でしょ」
「これ、すごい力だよ」
部屋中を見回しながらガリウスは力強くうなずいた。セヴルは大して興味がなさそうに答える。
「そうだね」
「何を怒ってるのよ」
サアラが床に落ちた花びらをつまむ。それで床をこすってみるが、花びらはつぶれて丸まるだけだった。
「別に」
「これは神の与えた奇跡だね」
ガリウスがセヴルの右腕を引いて天井に向かって引き上げる。セヴルはすぐに腕をひねって逃れる。
「奇跡? 呪いの間違いじゃないのか?」
「こんなにすばらしい力が呪いのわけないじゃないか!」
高揚したガリウスの目が、セヴルに訴えかける。セヴルは目をそらした。
「こんな危ない力無い方がいいけどね」
「確かに危険ね。まさか、それで人を殺したの?」
「違うよ。決め付けるなよ」
「何よ! あんたは人殺しでしょ」
「俺は、誰も殺してない!」
「何よ、まだ言い逃れするつもり?」
「逃げてなんかない! 俺は蟲しか……」
言いかけて何かに気がつき、セヴルはゆっくりと部屋の隅に向かって歩き出す。
「な、何?」
「……蟲は逃げない」
呟くセヴル。それを見てサアラは不審がる。
「は?」
「大丈夫かい?」
覗き込むガリウス。セヴルはなおも呟き続ける。
「逃げないはずの蟲が逃げた……」
「やだ。頭おかしくなっちゃった?」
「逃げないはずの蟲が逃げる?」
ガリウスがセヴルの言葉を繰り返す。セヴルが急に振り返った。
「そうだよ。逃げるんだよ」
「どこによ」
サアラがセヴルを見る。その後ろでガリウスが大きな声を出す。
「わかった! 巣だね!」
「そう! 巣だ!」
盛り上がる二人を避けるようにサアラはベッドのふちに座り込んだ。
「やだ、あんな丸いのがうじゃうじゃいるなんて、気持ちが悪いわ」
「丸蟲じゃなくて、もっと足の長い奴だった」
「気持ち悪そう」
サアラが口を押さえる。セヴルはそれを無視して話を続ける。
「村で戦ったのは、胴が細長くて足も長かった。あいつが巣に戻ろうとしたなら……」
「そこに巣がある」
セヴルとガリウスが、腕をあわせる。サアラはため息をついてベッドの上に横になる。
「かも知れないでしょ? 楽観的過ぎるわよ、あんたたち」
そこへグロウがドアを開けて入ってくる。
「生き返ったって本当? うわっ、何これ汚い」
口を大きく開けて立ち止まる。セヴルが手を上げて答える。
「死んでないよ」
「泥棒でも入ったの?」
グロウは部屋の中を覗き込んだ。
「違うわよ」
「実験してたんだ。セヴルの右手の」
ガリウスが言い終えないうちに、グロウが叫んだ。
「あー、ずるい! 僕のときは、パンでしかやってくれなかったのに!」
「それよりすごいことに気がついたんだ」
「いい。聞かない」
そう言うと、グロウは部屋を出て行こうとする。
「わかった。見せてやるからさ」
「いい。僕、そんな子どもじゃないもん」
言い放つと、グロウはそのまま勢いよくドアを閉めて出て行ってしまう。
「十分、子どもじゃないの」
「じゃあ、片付けようか」
セヴルは足を押さえる。
「いたたたた……」
「そうだわ、昼食の確認をしないと」
サアラは、ガリウスが声をかける隙もなくするりと部屋を出て行ってしまった。
「僕は、何度もセヴルを運んだのに……」
ガリウスの寂しそうなまなざしが、セヴルをいつまでも見つめる。
「わかったよ! やるよ、やるから!」
セヴルがガラクタを拾い始めるのを見て、ようやくガリウスが笑った。
「よし、頑張ろう!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる