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呪われた子 27
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赤黒い長い足が、マムルの胴を貫き地面に縫い付ける。
「あは? あれぇ? いでぇ」
細長い体についた頭が、マムルの喉元に食らいつく。骨が砕ける音が周囲に響き、肉が引き裂かれていく。
「出た、足長蟲だ……」
ガリウスがあわててメイスを引き抜く。
「早く、行きなさいよ」
「前に倒した奴よりでかい……」
セヴルは、レハの剣を引き抜く。刃こぼれのある幅広の剣だ。
「みんな! 俺が引きつける。家の中に隠れて、音を立てるな!」
セヴルが、足長蟲に突っ込んでいく。
「セヴル! 今から術に入る。殺すなよ!」
バリュフの呼びかけに左手を上げて応える。
「難しい注文だよね!」
足長蟲の後ろに滑り込む。足長蟲は足を器用に動かして、セヴルに向き直ろうとする。
そのうちの一本をセヴルの剣が切り飛ばす。切り口から体液が飛び散る。
三本の足が、セヴルを押しつぶそうと次々に振り落とされる。三本の中から一本を選んで切りつける。赤黒い血が放物線を描くが、足は落ちなかった。
「浅いか!」
切り落とすには、もう一歩踏み込む必要があった。
「今度こそ」
セヴルの足を、長い足が払う。セヴルの天地が一転する。地面に肩を打ちつける。
「うが」
「セヴル、立って!」
数本の足長蟲の足が土ぼこりを巻き上げて地面に突き刺さる。
「セヴル!」
長い足の隙間にセヴルが立っている。背中に大きな擦り傷が出来ている。右手に握っていたはずの剣がない。
長い足の一本に剣が突き刺さっている。
「ピンチ……」
長い足が、連続で降り注ぐ。右へ左へセヴルが避けるが、完全には無理だった。一本がセヴルの頭をかするのを皮切りに、徐々に肩、腰に当たるようになる。体勢を崩したところへ、鋭い一撃が襲う。硬い物がぶつかる音が響く。
「クソ、まだかよ……」
セヴルは、切り落とされた蟲の足を両手に持ち、蟲の足の直撃を防いでいた。
蟲の足が、またもセヴルに襲い掛かる。横から繰り出されるしなる一撃が、セヴルを柵に激突させる。柵は、セヴルを巻き込みバラバラに崩れる。
「いてぇ……」
口から血の混じった涎をたらしながら、セヴルは立ち上がる。
「へへへ」
セヴルの伸ばした右手が、壊れた柵の残骸をつかむ。一度振るえば、絡み付いていた他の物が切り落とされる。長めの棍棒が、新たな刃物になる。心なしか剣の形にも見える。
「この野郎! 頭を落としてやるぞ」
大きな雄たけびを上げながら、セヴルが足長蟲に特攻していく。だが、蟲にたどり着く前に横に飛ばされる。
森の木々に体を打ちつけるセヴルとガリウス。
「ダメだよ。冷静にならなくちゃ」
セヴルは、ゆっくりと立ち上がる。
「……そうだった」
「あいつに集中して。準備が出来たら、僕が教えるから」
うなずき合う二人。
「こらー! しっかりしなさい!」
村の中から、サアラが叫ぶ。
「まったく、人使いが荒い」
セヴルは、長めの棍棒を振り回しながら、蟲に飛び掛る。頭上から降って来る長い足を切り裂き、蟲に近づいていく。
「んあああああっ!」
腰を入れた一撃は、長い足を切り落とす。
「はぁはぁ……」
長い棍棒を振り回す。少しでもバランスが崩れると蟲の足の突起に跳ね返される。ふらつく足が、蟲の体液で滑る。こらえたところに長い足が飛んでくる。宙を舞って柵に激突する。
それでもセヴルは立ち続ける。切った足のほとんどは、もう体液の流出が止まっている。長い棍棒を杖にして立ち上がると、呼吸と共に肩が上下する。
「準備出来たよ!」
グロウの声はよく響く。ガリウスが、セヴルに呼びかける。
「セヴル、頑張ろう!」
「頑張ってるよ!」
走るとは言えない速さでセヴルは蟲に向かっていく。突き刺さる攻撃を受けることが出来ても、横へ凪ぐ攻撃に対応できなくなっていた。
再び宙を舞う。
セヴルは立ち上がる。棍棒を手にするが、持ち上げることが出来ない。
「あと、少し……」
横をガリウスとサアラが駆け抜ける。メイスと丸盾を構え、足長蟲に突撃していく。
「がんばれ!」
「少し休んで!」
セヴルは棍棒を捨てた。ベルトを外すと、右手に撒きつけて握る。瓦礫を軽く殴ってみる。瓦礫が切れる。
深く息を吸い込むと、足長蟲に向かって走り始める。蟲は、狙いが増えたことによって、的を絞りきれずにいた。
「大きく動いてくれ!」
セヴルは注意のそれた足長蟲に向かって仰向けに滑り込む。真下まで来ると、右手を滅茶苦茶に振り回す。蟲の腹が切れ、セヴルの体が赤く染まっていく。蟲が、悲鳴を上げる。
足長蟲が、森の中へと動き出す。
その時だった。
「『兎(ラビット)の(・)足跡(フット)』」
バリュフの声が聞こえた。セヴルは、逃げ出した細長い体の移動に巻き込まれる。揉みくちゃにされて地面の上に転がった。
側にガリウスやサアラ、グロウが寄ってくる。
「生きてる?」
「……死にそう」
グロウの問いに指を動かして答えるセヴル。サアラが笑った。
「じゃあ、大丈夫ね」
バリュフが歩いてくる。
「行けるかい?」
「行くさ」
セヴルはガリウスに支えてもらいながら起き上がった。
赤黒い長い足が、マムルの胴を貫き地面に縫い付ける。
「あは? あれぇ? いでぇ」
細長い体についた頭が、マムルの喉元に食らいつく。骨が砕ける音が周囲に響き、肉が引き裂かれていく。
「出た、足長蟲だ……」
ガリウスがあわててメイスを引き抜く。
「早く、行きなさいよ」
「前に倒した奴よりでかい……」
セヴルは、レハの剣を引き抜く。刃こぼれのある幅広の剣だ。
「みんな! 俺が引きつける。家の中に隠れて、音を立てるな!」
セヴルが、足長蟲に突っ込んでいく。
「セヴル! 今から術に入る。殺すなよ!」
バリュフの呼びかけに左手を上げて応える。
「難しい注文だよね!」
足長蟲の後ろに滑り込む。足長蟲は足を器用に動かして、セヴルに向き直ろうとする。
そのうちの一本をセヴルの剣が切り飛ばす。切り口から体液が飛び散る。
三本の足が、セヴルを押しつぶそうと次々に振り落とされる。三本の中から一本を選んで切りつける。赤黒い血が放物線を描くが、足は落ちなかった。
「浅いか!」
切り落とすには、もう一歩踏み込む必要があった。
「今度こそ」
セヴルの足を、長い足が払う。セヴルの天地が一転する。地面に肩を打ちつける。
「うが」
「セヴル、立って!」
数本の足長蟲の足が土ぼこりを巻き上げて地面に突き刺さる。
「セヴル!」
長い足の隙間にセヴルが立っている。背中に大きな擦り傷が出来ている。右手に握っていたはずの剣がない。
長い足の一本に剣が突き刺さっている。
「ピンチ……」
長い足が、連続で降り注ぐ。右へ左へセヴルが避けるが、完全には無理だった。一本がセヴルの頭をかするのを皮切りに、徐々に肩、腰に当たるようになる。体勢を崩したところへ、鋭い一撃が襲う。硬い物がぶつかる音が響く。
「クソ、まだかよ……」
セヴルは、切り落とされた蟲の足を両手に持ち、蟲の足の直撃を防いでいた。
蟲の足が、またもセヴルに襲い掛かる。横から繰り出されるしなる一撃が、セヴルを柵に激突させる。柵は、セヴルを巻き込みバラバラに崩れる。
「いてぇ……」
口から血の混じった涎をたらしながら、セヴルは立ち上がる。
「へへへ」
セヴルの伸ばした右手が、壊れた柵の残骸をつかむ。一度振るえば、絡み付いていた他の物が切り落とされる。長めの棍棒が、新たな刃物になる。心なしか剣の形にも見える。
「この野郎! 頭を落としてやるぞ」
大きな雄たけびを上げながら、セヴルが足長蟲に特攻していく。だが、蟲にたどり着く前に横に飛ばされる。
森の木々に体を打ちつけるセヴルとガリウス。
「ダメだよ。冷静にならなくちゃ」
セヴルは、ゆっくりと立ち上がる。
「……そうだった」
「あいつに集中して。準備が出来たら、僕が教えるから」
うなずき合う二人。
「こらー! しっかりしなさい!」
村の中から、サアラが叫ぶ。
「まったく、人使いが荒い」
セヴルは、長めの棍棒を振り回しながら、蟲に飛び掛る。頭上から降って来る長い足を切り裂き、蟲に近づいていく。
「んあああああっ!」
腰を入れた一撃は、長い足を切り落とす。
「はぁはぁ……」
長い棍棒を振り回す。少しでもバランスが崩れると蟲の足の突起に跳ね返される。ふらつく足が、蟲の体液で滑る。こらえたところに長い足が飛んでくる。宙を舞って柵に激突する。
それでもセヴルは立ち続ける。切った足のほとんどは、もう体液の流出が止まっている。長い棍棒を杖にして立ち上がると、呼吸と共に肩が上下する。
「準備出来たよ!」
グロウの声はよく響く。ガリウスが、セヴルに呼びかける。
「セヴル、頑張ろう!」
「頑張ってるよ!」
走るとは言えない速さでセヴルは蟲に向かっていく。突き刺さる攻撃を受けることが出来ても、横へ凪ぐ攻撃に対応できなくなっていた。
再び宙を舞う。
セヴルは立ち上がる。棍棒を手にするが、持ち上げることが出来ない。
「あと、少し……」
横をガリウスとサアラが駆け抜ける。メイスと丸盾を構え、足長蟲に突撃していく。
「がんばれ!」
「少し休んで!」
セヴルは棍棒を捨てた。ベルトを外すと、右手に撒きつけて握る。瓦礫を軽く殴ってみる。瓦礫が切れる。
深く息を吸い込むと、足長蟲に向かって走り始める。蟲は、狙いが増えたことによって、的を絞りきれずにいた。
「大きく動いてくれ!」
セヴルは注意のそれた足長蟲に向かって仰向けに滑り込む。真下まで来ると、右手を滅茶苦茶に振り回す。蟲の腹が切れ、セヴルの体が赤く染まっていく。蟲が、悲鳴を上げる。
足長蟲が、森の中へと動き出す。
その時だった。
「『兎(ラビット)の(・)足跡(フット)』」
バリュフの声が聞こえた。セヴルは、逃げ出した細長い体の移動に巻き込まれる。揉みくちゃにされて地面の上に転がった。
側にガリウスやサアラ、グロウが寄ってくる。
「生きてる?」
「……死にそう」
グロウの問いに指を動かして答えるセヴル。サアラが笑った。
「じゃあ、大丈夫ね」
バリュフが歩いてくる。
「行けるかい?」
「行くさ」
セヴルはガリウスに支えてもらいながら起き上がった。
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