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真夜中の訪問者
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都内に住む橋本郁子さん(仮名)からの投稿。
これは私が以前住んでいたアパートのお話です。
あの頃はまだ本当にこんなことがあるだなんてことを知らなくて、家族の心配などをよそに夜遅くまで遊び歩くなどと言うことも多かったのでした。
そんなある日の週末、いつものように仕事仲間たちと飲み会とその後のカラオケですっかり盛り上がり、そのまま朝まで騒ぎ続けるような雰囲気になりかけたのですが、A子が終電までには帰ると言うので会は早々にお開きになりました。そうして、私が部屋に帰ったのは夜12時を少し過ぎる頃でした。
帰りの電車で気味の悪い話を後輩のB太から聞いていたので私は何度も戸締りを確認して、いつもは使わないチェーンまで使ってしまうのでした。
寂しいので部屋のテレビをつけてからシャワーを浴び、なんだかまだ物足りなかったので冷蔵庫から缶ビールを取り出すとベッドの縁に寄りかかりながらテレビの映像をぼんやり眺めていたのです。すると、
コンコン。
とドアをノックする音が聞こえてきました。
「こんな真夜中に誰だろう?」
私はそう思って立ち上がりました。玄関まで歩いてきたとき、そこで後輩の言葉を思い出しました。
「先輩、真夜中の訪問者って知ってますか? 一人暮らしの女の人の部屋にやってきて、ドアを叩く強盗なんですけどね。返事をしたのが女の声だとそのまま押し込んでくるそうなんですよ。だから、真夜中にドアを叩かれたら声を出しちゃいけないんですよ。え? じゃあ、どうやって確かめるのかって? 真夜中に尋ねてくるような奴がまともな奴だとは思えないから確かめなくていいんじゃないですかね。もしかして幽霊だったりして」
その間もドアを叩く音は小さかったのですが聞こえていました。
私は頭の後ろにまで迫る鼓動を感じながら、どうしても確かめてみたい衝動に駆られていました。でも、ドアを開ける勇気はありません。そこでのぞき穴からのぞいてみることにしました。
でも、アパートの廊下は真っ暗で何も見ることが出来ませんでした。その時です。ドアの向こうから女の声が聞こえてきたのです。
「いるんでしょ? 開けなさいよ」
聞き覚えのない声でした。私はもうただ怖くて、音を立てないようにその場を離れようとしました。
ガチャガチャガチャ!
ドアノブが激しく揺さぶられます。その後、ドアの向こうでドアに何かを叩きつけるようなぶつけるようなそんな音も聞こえてきました。
私はもうただ怖くて怖くてベッドに戻ると布団を頭からかぶって何も聞こえないように丸まっていました。少し落ち着いたところで友達にメールをしたら、警察を呼んだほうがいいと言われ、その通りにして時間が過ぎるのを待っていました。
そうしてしばらくすると、ドン。と言う大きな音がして、静かになりました。
私は、怖かったのですがどうしても気になってしまい、玄関まで歩いていったのですがそのドアを見たとたんに動けなくなってしまいました。
ドアののぞき穴から、小さな光が見えたのです。
さっきは真っ暗だったのに。
そうなんです。さっきはそこから誰かがのぞいていたんです。おそらくは女が。
部屋の中に赤い光が入り込んできて、私は少しだけ安堵しました。
しばらくすると警察官を名乗る男性がやってきて、のぞき穴から確認すると若い警官とおじさんの警官の二人が立っていたのでドアを開けました。そこでまた私は驚きました。
ドアに包丁が突き立てられていたからです。
あの女の人は私によほどの恨みがあったのでしょうか。見たこともない女の人だったのに。
警官はアパートの周囲を見回って安全を確認してくれたのですが、なんだか怖くてたまらなかったのでパトカーで友達の家まで送ってもらい夜を明かしました。
翌日、友達とともに部屋を訪れると窓ガラスが割られて部屋の中は荒らされていました。それはもうなんとも言いようがなく、壁紙も布団もカーペットも切り裂かれていました。カッターナイフの折れた刃が壁に突き刺さっていたりして、私は驚きと恐怖で固まっていました。一緒に来た友達がいろいろと手伝ってくれたのでその後のことを警察に任せることにしました。
しばらくすると犯人がわかりました。
女は少し離れたところに住んでいて、以前ここに住んでいた女性が女の彼と浮気をしたそうで、その復讐をするべく機会を狙っていたそうです。でも、その女性は今ではどこかに引越したらしく女は悔しくてたまらないので、何か手がかりがないかとずっと待っていたそうです。そこにこの部屋に引っ越してきた私を戻ってきた女性と思い違い犯行に及んだというのです。
この話を聞いたとき、私はとても怖かったです。
なぜなら、あのアパートが出来てから私の部屋に住んだことがあるのは私だけだったからです。
そして、女の話を信じてしまう警察が何よりも怖かったです。彼らの言うとおりに部屋に残っていたらと思うと、本当に怖くてたまりません。私は部屋を引き払い実家に戻りました。
女はその後、入院と退院を繰り返しているそうです。
皆さんも真夜中の訪問者にはお気をつけください。
これは私が以前住んでいたアパートのお話です。
あの頃はまだ本当にこんなことがあるだなんてことを知らなくて、家族の心配などをよそに夜遅くまで遊び歩くなどと言うことも多かったのでした。
そんなある日の週末、いつものように仕事仲間たちと飲み会とその後のカラオケですっかり盛り上がり、そのまま朝まで騒ぎ続けるような雰囲気になりかけたのですが、A子が終電までには帰ると言うので会は早々にお開きになりました。そうして、私が部屋に帰ったのは夜12時を少し過ぎる頃でした。
帰りの電車で気味の悪い話を後輩のB太から聞いていたので私は何度も戸締りを確認して、いつもは使わないチェーンまで使ってしまうのでした。
寂しいので部屋のテレビをつけてからシャワーを浴び、なんだかまだ物足りなかったので冷蔵庫から缶ビールを取り出すとベッドの縁に寄りかかりながらテレビの映像をぼんやり眺めていたのです。すると、
コンコン。
とドアをノックする音が聞こえてきました。
「こんな真夜中に誰だろう?」
私はそう思って立ち上がりました。玄関まで歩いてきたとき、そこで後輩の言葉を思い出しました。
「先輩、真夜中の訪問者って知ってますか? 一人暮らしの女の人の部屋にやってきて、ドアを叩く強盗なんですけどね。返事をしたのが女の声だとそのまま押し込んでくるそうなんですよ。だから、真夜中にドアを叩かれたら声を出しちゃいけないんですよ。え? じゃあ、どうやって確かめるのかって? 真夜中に尋ねてくるような奴がまともな奴だとは思えないから確かめなくていいんじゃないですかね。もしかして幽霊だったりして」
その間もドアを叩く音は小さかったのですが聞こえていました。
私は頭の後ろにまで迫る鼓動を感じながら、どうしても確かめてみたい衝動に駆られていました。でも、ドアを開ける勇気はありません。そこでのぞき穴からのぞいてみることにしました。
でも、アパートの廊下は真っ暗で何も見ることが出来ませんでした。その時です。ドアの向こうから女の声が聞こえてきたのです。
「いるんでしょ? 開けなさいよ」
聞き覚えのない声でした。私はもうただ怖くて、音を立てないようにその場を離れようとしました。
ガチャガチャガチャ!
ドアノブが激しく揺さぶられます。その後、ドアの向こうでドアに何かを叩きつけるようなぶつけるようなそんな音も聞こえてきました。
私はもうただ怖くて怖くてベッドに戻ると布団を頭からかぶって何も聞こえないように丸まっていました。少し落ち着いたところで友達にメールをしたら、警察を呼んだほうがいいと言われ、その通りにして時間が過ぎるのを待っていました。
そうしてしばらくすると、ドン。と言う大きな音がして、静かになりました。
私は、怖かったのですがどうしても気になってしまい、玄関まで歩いていったのですがそのドアを見たとたんに動けなくなってしまいました。
ドアののぞき穴から、小さな光が見えたのです。
さっきは真っ暗だったのに。
そうなんです。さっきはそこから誰かがのぞいていたんです。おそらくは女が。
部屋の中に赤い光が入り込んできて、私は少しだけ安堵しました。
しばらくすると警察官を名乗る男性がやってきて、のぞき穴から確認すると若い警官とおじさんの警官の二人が立っていたのでドアを開けました。そこでまた私は驚きました。
ドアに包丁が突き立てられていたからです。
あの女の人は私によほどの恨みがあったのでしょうか。見たこともない女の人だったのに。
警官はアパートの周囲を見回って安全を確認してくれたのですが、なんだか怖くてたまらなかったのでパトカーで友達の家まで送ってもらい夜を明かしました。
翌日、友達とともに部屋を訪れると窓ガラスが割られて部屋の中は荒らされていました。それはもうなんとも言いようがなく、壁紙も布団もカーペットも切り裂かれていました。カッターナイフの折れた刃が壁に突き刺さっていたりして、私は驚きと恐怖で固まっていました。一緒に来た友達がいろいろと手伝ってくれたのでその後のことを警察に任せることにしました。
しばらくすると犯人がわかりました。
女は少し離れたところに住んでいて、以前ここに住んでいた女性が女の彼と浮気をしたそうで、その復讐をするべく機会を狙っていたそうです。でも、その女性は今ではどこかに引越したらしく女は悔しくてたまらないので、何か手がかりがないかとずっと待っていたそうです。そこにこの部屋に引っ越してきた私を戻ってきた女性と思い違い犯行に及んだというのです。
この話を聞いたとき、私はとても怖かったです。
なぜなら、あのアパートが出来てから私の部屋に住んだことがあるのは私だけだったからです。
そして、女の話を信じてしまう警察が何よりも怖かったです。彼らの言うとおりに部屋に残っていたらと思うと、本当に怖くてたまりません。私は部屋を引き払い実家に戻りました。
女はその後、入院と退院を繰り返しているそうです。
皆さんも真夜中の訪問者にはお気をつけください。
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