スマートフォンは使わない。

大秦頼太

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スマートフォンは使わない。 前編

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「遺体がなくなってたんだよ」
 亡くなった祖母が死んだという知らせを受けて、僕ら家族は祖母と一緒に暮らしていた叔父が住むA県にある葬祭場へ向かったのだ。
 空の棺桶の前で叔父が父や母、その他の親類の前で深々と頭を下げた。
「どういうことなんだよ」
「葬儀屋で遺体が盗まれるなんて前代未聞だぞ」
「管理はどうなってるんだ」
 と親類一同が批難の声を上げる中、叔父はボソリと言った。
「病院でいなくなったんだ」
 その叔父の言葉に父は呆れ返った。
「いなくなったんだったら、するのは葬式じゃなくて警察に捜索願を出すことだろうが!」
 みんな忙しい中、祖母の葬式に駆けつけた。着いてみてこれでは怒るのも当然だったろう。僕だけは学校をサボれて嬉しかった。
「違うんだよ。母さんはたしかに死んだんだ。医者もきちんと立ち会ってる。死亡診断書もある。葬儀屋の手配も一彩樂歳して連絡もして、霊安室から移すことになったらいなくなってたんだよ」
 一番下の叔母が嘲るように笑った。
「あのねえ、兄さん。もっときちんとしてくれない? 家族にこんな人がいるなんて本当に恥ずかしいわ。お母さんのお葬式くらいきちんと出来ないでなにしてるのよ。お父さんの時も兄さんは全部母さんに任せっきりで」
「それはお前たちだって」
 叔母は叔父の反論を許さなかった。
「実家に残ってるのは兄さんでしょ! 責任と義務はそっちにあるのよ! 何言ってるの!」
 ヒートアップしそうな兄妹の間に叔母の夫が割り込んでくる。
「つまり病院側の過失ですか? 間違って運んでしまったとか」
「それが、そうでもないらしくて」
「病院が認めるわけがないじゃないの。カメラでも付けとけばよかったわね」
「あったんだ」
「なにがよ」
「カメラ。監視カメラ」
「え? じゃあ、分かるでしょ?」
「何も映ってないんだ」
「何だ故障か。やっぱり病院のミスじゃないか」
「違うんだよ。運んでくるところが映ってて、看護師が戻っていって、あとはずーっと廊下が映ってるだけなんだ。霊安室は地下で、出口は一つだけで窓もなくてどこにも行きようがないんだ。それでも最近は、臓器をこっそり取りに来る悪徳医師とか業者とかがいるらしくて監視カメラを付けてるそうなんだけど、僕らが行くまで誰も通ってないんだ」
 叔母が悲鳴にも似た声を出した。
「じゃあ、どこに行ったっていうのよ!」
「それがわからないからこんなことになってるんだろ!」
 叔父も徐々にヒステリックになっていく。
「俺だってちゃんとやってたのに、なんでこんなことになってるのかわけがわからないんだよ」
「お義母さん、本当に死んだのかしら?」
 母の言葉で葬祭場の一室にいる全員の動きが止まった。
「ほら、昔はよくあったっていうじゃないの。亡くなったと思ってたら、実はまだ生きていたって話よ。あれとおんなじなんじゃない?」
 父が母の援護をし始める。
「そうだよ。そうだとしたらうちに帰ってるかもしれない。いや、道がわからないからどこかで迷ってるかもしれないな」
「警察に連絡して探してもらいましょう!」
「だから、霊安室に運ばれていったんだよ! お医者さんだって確認してるんだ」
 祖母が生きていたとしてもビデオに映っていなかったことの証明にはならない。ただ、本当に霊安室に送られたキャスターの付いたベッドの上に乗っていたのか。
「ビデオを見せてもらおうよ。本当におばあちゃんが乗ってたのか」

 そして、僕らは深みにはまっていく。映像は意外と大きくかなり鮮明だった。カメラの前をベッドが通り、そこには祖母がきちんと目をつぶって横たわっていた。その後は早回し映像をじっと見守っていたが、確かに運ばれた後には誰も来なかったし、出て行きもしなかった。
「これは一体、何なんだ?」
 父がつぶやいた。
「明日には帰らなきゃいけなかったんだぞ。まったく、なにやってんだ」
 父のイライラは叔父にぶつけられる。肩を小さく寄せながら叔父はただじっと黙って耐えていた。
 看護師の一人が映像を確認している僕らのところへやってきた。
「あの、警察にそれらしい方が見つかったって」
 その瞬間、部屋の中に安堵のため息が漏れる。みんな忘れている。気が付かないようにしている。考えないようにしている。僕らは、霊安室に運び込まれる祖母をビデオでしっかり確認をした。
「コマ落ちだよ。行くぞ」
 父に肩を叩かれて、納得するしかなかった。そうだ。ビデオは再生速度を上げればコマ落ちをするだろう。それでたまたま祖母が生き返った後、部屋を出たところがコマ落ちしていたのだ。

 駅前交番まで祖母を迎えに行くと、そこには見たこともないお婆さんがいた。
 警察の人には人違いだと伝えて、僕らはまた途方に暮れた。だが、話はここから更に難しくなる。
 見たこともない老婆が来ている服が祖母の入院していた病院専用のパジャマであったことから、老婆は病院で身元確認をされることになる。
 しかし、当初は病院側もこの老婆の身元がわからなかったのだが、祖母が行方不明になったことが事件化されたらマズイと院内一丸となって老婆が祖母であるという主張を始めたのだった。
「何を言ってるんですか!」
 叔父は猛抗議をする。だが、父と母それと叔母夫婦たちはこの病院の信じられないような提案を受け入れたのだった。
「これで話を収めてもらえれば、入院費も結構ですし、老婆の生活費を支払ってもいい」
 その言葉に親達は乗ったのだ。叔父一人を除いて。
「何よ人騒がせね。お母さん、死んでなかったんじゃないの」
 叔母はあっという間に気持ちを切り替えた。
「じゃあ、俺たちは戻るから、そのお母さんをよろしくな」
 父はまだ受け入れきれてはいないようだったが、帰りの車の中で「これでよかったんだよ」と自分に暗示をかけるように何度もつぶやいていた。母もその父を後押しするように「その内、お義母さんが見つかるわよ。それまで生活費をもらいながらヨシオさんが預かってると思えば大丈夫でしょ。あのお婆さん、認知症で自分が誰かもわかってないみたいだし」
「何言ってんだよ。あれは母さんだよ」
 ルームミラー越しに見える父の顔がひどく不気味に見えた。

 それから二週間ほどが過ぎ、叔父から連絡があった。
「宝くじが当たったんだ。どうするか悩んだんだけど、うち二人じゃ使いみちがなくてさ。新しいお母さんは何を聞いても答えになってないしさ。だったら、兄さんとマリコにって。二人とも何かと入用だろ? だからさ、うちに遊びに来てよ」
 この電話の後、どうするか悩んでいた父に現金書留が何通か届き、その全てが叔父からなのと限度額いっぱいに詰め込まれた現金を見て結局行くことに決めたようだった。
 父の実家は山間の村落にあり、その村は人口は三十人程度で、この春にも廃村になるのだと噂になっていた。それでも父が子どもだった頃は二百人以上の人がいて、林業が盛んだったそうだ。その実家には今は叔父が新しい祖母と暮らしている。かなりの大きさで村落が見渡せる位置にある。
「うちは戦前までこの一帯を治めてたんだってさ。今じゃ、あの家しか無いけどな。それだってこんな田舎じゃ大した価値もない」
 たどり着くと、既に何台もの車が止まっていて、中にはパトカーも見えた。
 何事かと思って車を道の脇に止めて降りて行くと、背広の男が叔母の夫と一緒にこちらに近づいてきた。刑事だった。
「橋木マコトさんですね」
「はい」
「橋木ヨシオさんが亡くなりまして、その、なんというか」
「弟が死んだ? いつです?」
「詳しいことは検死解剖の結果を見ないとなんとも言えないんですが、一週間ほど前のようなんです。それで、一応確認を」
「お義兄さん、なんか急逝の心不全だったみたいで」
 叔母の夫はなんとも言えない表情をしていた。
「いつ見つかったんですか? うちには連絡がなかった」
「うちのが今日、見つけたんです。お義兄さんの家には何回か電話したんですけど、あいつお義兄さんの携帯の番号知らないって言うんで。すみません」
「そうですか。こちらこそすみません。で、あいつはどこですか?」
「マリコだったらパトカーに。家には入りたくないって」
「弟さんは救急車に。お母さんはどうされますか?」
「母が見つかったんですか?」
 驚く父の肩を掴み叔母の夫は首を横に振る。
「ああ、そうですね。うちのが」
 そう言うと、母と僕に新しい母の面倒を見るように言う。だが、刑事はそれを止める。
「お母さんは病院で見てもらったほうがいい」
「どこか怪我を?」
 刑事は言いにくそうに顔をしかめる。
「いや、そうじゃなくて、食べてるんですよ」
「何を?」
「弟さんのご遺体を。なので一応検査をした方がいいと思います」
 父は「ああ、そうですね」と言いながら、救急車の方へと歩いて行った。その前で何か説明を受けると開かれた後部から中にはいり、すぐに飛び出して来て道端で嘔吐した。
 側に寄ろうとすると、叔母の夫が僕の肩をつかんで、
「行かないほうがいい。夢に見るよ」
 と言った。
「そんなに酷いんですか?」
「いや、私も何度か人の死に顔を見たけど、事故でグチャグチャになった人よりはマシだけど、それでも中が見えてるから見ないほうがいい」
「そうですか」
「うちは何もいらないんで、葬儀が終わったら遠慮させてもらってもいいかな?」
「え? どういうことですか?」
「お義母さんの面倒はお義兄さんの方で見て欲しいんだ。お金はいらないからさ」
「そんなの僕には決められません」
「30億円貰えるんだよ? 別にいいだろ? うちは一円もいらないって言ってるんだ」
「なんですか30億って」
 僕と叔母の夫の話に母が身を乗り出してくる。
「どうしたの? 30億って?」
「お義姉さん、ヨシオお義兄さんの遺産が30億あるらしいんですが、全部お義母さんの名義になってて、お義母さんを預からないともらえないみたいなんですよ。でも、うちのは一円もいらないから縁を切りたいって。こういうのもなんですが、気味が悪くて」
 母は、心配そうな叔母の夫を鼻で笑い飛ばす。
「30億をどう考えるかね。何も一緒に暮す必要なんて無いわよ。施設に入れちゃえばいいじゃないの。どうせそんなに長生きできるわけないんだから、それでも嫌なの? それよりも30億って本当なの?」
「はい。うちのはもしお義母さんが亡くなっても相続は放棄するから、葬式にも呼ばないで欲しいって」
「今はそうだけど、後になったら言ってくるんじゃないの?」
「念書でもなんでも書きます。でも、ヨシオお義兄さんの葬儀が済んだら、もう縁を切ってください。お願いします」
「一応、うちのお父さんにも聞いてみないと」
「どっちにしても、うちでは預かれません」
 そう言うと叔母の夫は逃げるように一台のパトカーに向かっていく。そこに叔母がいるのだろう。
 父はといえば、刑事からティッシュを受け取って口を拭っていた。
「カズキ、お茶を持って行ってあげて。うがいをしたほうが良さそう」
 車からペットボトルを取ってくると、父に持っていく。
「悪いな」
 父はペットボトルのお茶で口をすすぐ。
「なにか揉めてたけどどうした? どっちがお母さんを引き取るって話か?」
「うん」
「どうせ、何かと理由をつけて断って来たんだろ? なんだって?」
「30億はいらないから、叔父さんの葬式が終わったら縁を切ってくれって」
「何? 30億? そんなに当たってたのか。ハハハ。それはいいや」
「何がいいんだよ。こんなことになったのに」
「いいんだよ。あいつはずっと俺に迷惑をかけどうしで、こないだもそうだっただろ。迷惑料にはちょっと多いかもしれないが、嫌な思い出をいい思い出に変えるには十分だ」
「それであのお婆ちゃんはどうするんだよ」
「施設に入れたってバチは当たらないだろ? お前だって只の会社員の息子から金持ちの息子になれるんだぞ? 良かったじゃないか」
 父はもう祖母のことを覚えていないのだろうか。あの日、どこかに行ってしまったお祖母ちゃん。そして代わりに現れた見ず知らずの老婆。それから一月もしないうちに叔父が死にその遺体を見ず知らずの老婆が食べていたという。それを叔母が見つけた。見つからなかったら、叔父はどうなっていただろうか。もしかしたら、もしかしたら、あの老婆がお祖母ちゃんを食べて消してしまったのじゃないだろうか?
「カズキ、叔父さんはな、あまりの幸運に心臓がついていかなかったんだろう。あのお祖母ちゃんにしても、あのまま放っておいたらどこかで事故にあって死んでたかもしれない。世話をする者がいなくなって、食べるものがなくて、しょうがなくヨシオを食べることになったんだろう。最初に野犬とかそんなのが食べてたのを見たんだよ。可哀想な人じゃないか。病院でちゃんと見てもらって、助けてあげようじゃないか」
「でも」
 何かがおかしい。何がおかしいのかはわからないけれど、おかしいのだ。そう。いなくなった祖母のことが忘れ去られているのだ。
「家族のことだ。後で話そう」
 でも、話はそれっきりだった。父と叔母が話をしてこの件は決着をし、叔母の望んだ通りになった。
 老婆は一度病院で検査をした後、病院からそのまま施設に入ることになった。
 叔父の葬儀は家族と葬儀会社の人間だけでとり行われ、滞り無く終わった。父と母はこれから手にする30億もの金に心を奪われ、叔母とその夫は恐怖に身を縮めていた。

 父は都内にマンションを購入し、仕事を辞めてマンション経営などを始めた。と同時に僕も都内の高校に転校した。しかし、時期が悪かったのもあるがクラスに上手く馴染めずに休むことが多くなり、そのうち行かなくなった。両親はそれを咎めることもなく、それぞれの仕事を忙しそうにしていた。その内、母は飲食店の経営を始めて家にいることが徐々に少なくなった。僕は静かになった家の中でずっとパソコンに向かい合いネットゲームに明け暮れた。お小遣いが通帳に振り込まれるようになった。
 友達は誰一人訪ねてくることもなく、ゲームのチャットだけで人間と繋がるような生活がしばらく続いたが、誰も困らなかった。僕ら家族は祖母のこともあの老婆のことも忘れ去っていた。
「おかえり」
 久しぶりに父を見た。目がくぼんで肌の色が悪い。外に出ていない僕だって青白い肌をして気持ち悪くなっていたかもしれない。父は少し驚いたような顔をしていた。
「あ、おお、カズキか。小遣いはまだあるのか?」
「うん」
「そうか、でも、使うとなくなるからな。臨時ボーナスでもやろう」
 そう言って父はパンパンに膨れた財布をセカンドバッグから取り出して、札束を掴むと数えもせずに出してきた。50万は超えてると思う。受け取らずにそれをじっと見ていると父は僕の手をつかみ札束を押し付けてきた。
「溜めすぎるなよ。こんな金、どんと使ったほうがいい。友達でも誘って遊んでこい」
「ありがとう」
 喉から出た感謝の言葉がどこか乾いていて気持ちが悪かった。父は笑った。優しいとかそういう雰囲気ではなく、何か人の悪そうな笑みだった。そうして、また仕事だと言って家を出て行った。
 手に握った札束の使いみちに途方に暮れ始めて時、電話が鳴った。家の電話が鳴るのは本当に久しぶりだった。父も母も僕もスマホだし、迷惑電話はかかってこない設定になっているから。そのせいで電話の音にドキッとした。
 鳴り続ける電話をボーッと見ながら、鳴り止むのを待った。なぜかはわからない。でも、何故かすぐ取る気にはなれなかった。
 切れた。
 そして、すぐに鳴り始める。そのまま見ていてもしかたがないので、ゆっくりと受話器を取り上げる。
「橋木さんのお宅ですか? 増竹キヨさんをお預かりしている涼やか苑ですが、お父様かお母様はいらっしゃいますか? そうですか。実はですね、入所さているキヨさんが今朝亡くなりまして……、はい。そうなんです。今朝、朝食前のお散歩の時に倒れられて」
 お祖母ちゃんが死んだ。いや、お祖母ちゃんの代わりに施設に入っていた謎の老婆が亡くなったのだ。正直、死ぬとは思っていなかった。なにか妖怪のようなそんなイメージがあったから、ずっと側にいないことを願っていた。あまりにも突然なことだったので、頭がついていかない。わかりました。両親に伝えます。と言って電話を切った。
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