幸せの青い本

大秦頼太

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幸せの青い本 14

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14

 青い本を開く。
「大島マコ、死んだ両親が見えるようになる」
 マコの願いは書き換えられていた。
「どうして……」
 うなだれて本を落とす。本は、師島アカリの願いの書かれたページを開いた。
「師島アカリ、不老不死になり本と共に生きる」
 その文字が、マコに訴えかけるように揺らいで見えた。
「アカリ? アカリなの?」
 青い本から返事はなかった。マコはペンを取り最終ページを開く。背中から男女の腕が現れマコを引き止める。振り返ると、両親が物言わずにマコを見下ろしている。
 マコは両親を振り払うように自らの書き換えられた願いの下に、文字を書き込む。
「アカリと話がしたい」
と書かれた文字はページに吸い込まれていく。代わりに文字が浮かんでくる。
「筆談を選択してたら、本の中に来れたのに、残念ね」
「アカリなの?」
 両親が再びページに文字を書こうとするマコの手を強く握った。青い本との間に割って入るようにマコを本から遠ざける。
「そうよ」
 本に文字が浮かぶ。マコが叫ぶ。
「この本は何なの?」
「願いを叶える幸せの本よ」
「幸せの本? 人が死んでるのに?」
「人の幸せは人それぞれだもの。それに……」
「それに?」
「欲が深い人間は、愛されないのよ」
「え?」
「叶えられる願いは、三つまで。三回ではないの」
「三つ叶えたらどうなるの?」
「それについては答えられないわ。私は一つ目の願いでここに来たんだもの」
「ここってどこよ」
「本の中。ここは本当に素晴らしいわ。マコも来ればいいのに。今からでも遅くないわ。こっちに居らっしゃいよ」
 マコは本から離れる。
「アカリじゃない」
「師島アカリよ。授業中に手紙を回したでしょ? 私の字でしょ?」
 マコは前に立つ両親を見つめる。両親は首を横に振る。
「アカリは、私のことをマコなんて呼ばないし、書かない!」
 青い本はマコの言葉を受けて文字を消す。小さく震えだし、ページが切り裂かれるように文字を浮き出した。
「あとひとつ」
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