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DREAM EATER 1
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そこは昨日も行った大学病院の待合室のような感じだった。
「杉元磐音さん」
呼び出しも似ている。呼びかけている人は看護師服ではなくリクルートスーツの女性だった。研究チームの女子大生だろうか。割とかわいい感じの人だったのでちょっとウキウキした。女子大生は少し慌てているように見えた。
「中へ」
中へ通されるとそこは会議室のようだった。複数の長机とパイプ椅子があり机の上に書類がおかれているだけでなにか特別な機械はなかった。少しがっかりした。
女子大生は僕を座らせるとすぐ隣りに座った。シャンプーのいい香りに呆けていると顔を覗きこまれて恥ずかしくなった。
「晴海美春です。よろしく」
「あ、はい」
「いくつか質問していくので、嘘は言わないで答えてね」
「はい」
ドキドキしながら質問に答えていく。家族構成とか学校での友達の数、ネットゲームの経験年数、ジャンルなど。そういう質問だった。最後に診断書を渡した。
「じゃあ、地下に行きましょう」
そう言われるがまま、案内されるがままに迷路のような薄暗い構内を歩きまわり結構な時間をかけて地下へと降りていく。空気の止まった廊下を通って行く間に現実社会から隔離されていくようなそんな恐怖を感じた。
女子大生の晴海さんは大きな扉の前で立ち止まり、真剣な表情でこちらを見た。
「いいわね?」
「はい」
としか応えるしかなかった。
扉が開かれるとそこには体育館のような広い空間が広がっていて、ケーブルの沢山ついた箱が並んでいた。まるで大きな棺桶を起こして並べたようなそんな感じだった。天井から吊るされたハロゲンランプがどこか現実味を奪う。
「彼が最後か?」
一番奥の棺桶が口を開けていた。その前に立っている白衣姿の眼鏡の男がこちらを向いていた。晴海さんが応える。
「はい。若い子なのでたぶんリンクできると思います」
眼鏡の男は「ふん」と鼻で笑ったような気がした。「連れて来い」というような仕草で手を振った。
ちょっとカチンと来たがすぐにそんなことを忘れてしまうようなことが起こった。
棺桶の中もケーブルだらけで上部には古い写真で見たことがあるパーマを当てるような大きな機械が前後2つあって、床には覆いの付いた座席がこれもまた上のパーマの機械の直下に2つ前後に並んでいた。バイクのシートをもう少し細くしたようなそんなようなものだった。プシュッと炭酸のペットボロルを開けるような音がして入口が閉まった。棺桶の中は目を凝らしてやっと見えるくらいの暗さになった。が、すぐにオレンジ色の明かりに灯される。
「じゃあ、全部脱いで」
晴海さんの声にドキッとした。
「え、でも」
まごまごしながら振り返ると晴海さんが僕の頭を殴る。
「振り向かない。私だって恥ずかしいんだから」
「な、なんで」
「事務局の勘違いで、あなたが女の子だと思われていたみたいなのよ。全部脱いだら目をつむってね。席まで案内するから」
言われるがままに服を脱いでいく。思った以上に手が震えて時間がかかった。
「まだ?」
「はい、大丈夫です」
そう答えた瞬間、手を握られて心臓が飛び出そうになった。
「緊張しなくて大丈夫よ。リラックスしてね」
引かれるままに移動し、席にまたがる。機械が動く音がして下半身が固定される。
「腕を上げて」
背中側から晴海さんの声がする。すぐ真後ろだ。息が耳にかかるくらいの。
腕に何かが装着されてチクっと痛みが走った。
「じゃあ、固定に入るからね」
晴海さんの声の後、背中に人間の感触を感じ始める。なんかこういろいろと大変なことになりつつあった。晴海さんは着痩せするんだとか、心臓がバクバクして飛び出そうだとか、身動きできないとか。
「頭も。当たったら言ってね」
「当たってます!」
「頭よ。まだ降りてる最中。落ち着いて」
不意に静かになった。
「目を開けていいわよ。位置を確認して」
「な、なんのでしょう?」
「目の位置と頭の位置。少しずれるならずれないところを探して」
「はい」
頭を少し動かしてみる。目を開けたと言ってもほとんど何も見えずどこか圧迫を感じる。
「たぶん大丈夫です」
「私も。じゃあ、リンクを開始するわよ」
晴海さんはその後何か呪文のような単語を言って機械に命令を出すのだった。
「磐音くん。心拍数が少し高いわ。深呼吸して」
「はい」
深呼吸を繰り返していくたびに目の前が真っ白になっていった。
「杉元磐音さん」
呼び出しも似ている。呼びかけている人は看護師服ではなくリクルートスーツの女性だった。研究チームの女子大生だろうか。割とかわいい感じの人だったのでちょっとウキウキした。女子大生は少し慌てているように見えた。
「中へ」
中へ通されるとそこは会議室のようだった。複数の長机とパイプ椅子があり机の上に書類がおかれているだけでなにか特別な機械はなかった。少しがっかりした。
女子大生は僕を座らせるとすぐ隣りに座った。シャンプーのいい香りに呆けていると顔を覗きこまれて恥ずかしくなった。
「晴海美春です。よろしく」
「あ、はい」
「いくつか質問していくので、嘘は言わないで答えてね」
「はい」
ドキドキしながら質問に答えていく。家族構成とか学校での友達の数、ネットゲームの経験年数、ジャンルなど。そういう質問だった。最後に診断書を渡した。
「じゃあ、地下に行きましょう」
そう言われるがまま、案内されるがままに迷路のような薄暗い構内を歩きまわり結構な時間をかけて地下へと降りていく。空気の止まった廊下を通って行く間に現実社会から隔離されていくようなそんな恐怖を感じた。
女子大生の晴海さんは大きな扉の前で立ち止まり、真剣な表情でこちらを見た。
「いいわね?」
「はい」
としか応えるしかなかった。
扉が開かれるとそこには体育館のような広い空間が広がっていて、ケーブルの沢山ついた箱が並んでいた。まるで大きな棺桶を起こして並べたようなそんな感じだった。天井から吊るされたハロゲンランプがどこか現実味を奪う。
「彼が最後か?」
一番奥の棺桶が口を開けていた。その前に立っている白衣姿の眼鏡の男がこちらを向いていた。晴海さんが応える。
「はい。若い子なのでたぶんリンクできると思います」
眼鏡の男は「ふん」と鼻で笑ったような気がした。「連れて来い」というような仕草で手を振った。
ちょっとカチンと来たがすぐにそんなことを忘れてしまうようなことが起こった。
棺桶の中もケーブルだらけで上部には古い写真で見たことがあるパーマを当てるような大きな機械が前後2つあって、床には覆いの付いた座席がこれもまた上のパーマの機械の直下に2つ前後に並んでいた。バイクのシートをもう少し細くしたようなそんなようなものだった。プシュッと炭酸のペットボロルを開けるような音がして入口が閉まった。棺桶の中は目を凝らしてやっと見えるくらいの暗さになった。が、すぐにオレンジ色の明かりに灯される。
「じゃあ、全部脱いで」
晴海さんの声にドキッとした。
「え、でも」
まごまごしながら振り返ると晴海さんが僕の頭を殴る。
「振り向かない。私だって恥ずかしいんだから」
「な、なんで」
「事務局の勘違いで、あなたが女の子だと思われていたみたいなのよ。全部脱いだら目をつむってね。席まで案内するから」
言われるがままに服を脱いでいく。思った以上に手が震えて時間がかかった。
「まだ?」
「はい、大丈夫です」
そう答えた瞬間、手を握られて心臓が飛び出そうになった。
「緊張しなくて大丈夫よ。リラックスしてね」
引かれるままに移動し、席にまたがる。機械が動く音がして下半身が固定される。
「腕を上げて」
背中側から晴海さんの声がする。すぐ真後ろだ。息が耳にかかるくらいの。
腕に何かが装着されてチクっと痛みが走った。
「じゃあ、固定に入るからね」
晴海さんの声の後、背中に人間の感触を感じ始める。なんかこういろいろと大変なことになりつつあった。晴海さんは着痩せするんだとか、心臓がバクバクして飛び出そうだとか、身動きできないとか。
「頭も。当たったら言ってね」
「当たってます!」
「頭よ。まだ降りてる最中。落ち着いて」
不意に静かになった。
「目を開けていいわよ。位置を確認して」
「な、なんのでしょう?」
「目の位置と頭の位置。少しずれるならずれないところを探して」
「はい」
頭を少し動かしてみる。目を開けたと言ってもほとんど何も見えずどこか圧迫を感じる。
「たぶん大丈夫です」
「私も。じゃあ、リンクを開始するわよ」
晴海さんはその後何か呪文のような単語を言って機械に命令を出すのだった。
「磐音くん。心拍数が少し高いわ。深呼吸して」
「はい」
深呼吸を繰り返していくたびに目の前が真っ白になっていった。
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